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孤独死した隣人への思いを募らせ、心の奥底で眠っていた人生への好奇心を取り戻す60歳の男性を描く『マルティネス』がいよいよ劇場公開!

2025年8月19日

©2023 Lorena Padilla Banuelos

 

コロナ禍を経て変化した若者と高齢者との関係性に着想を得て、人間嫌いの60歳の男性が、亡くなった隣人の遺品に自分への贈り物があったことを知り、故人に興味を持っていく『マルティネス』が8月22日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『マルティネス』は、孤独死した隣人女性に思いを募らせる男性の姿を通し、「老い」と「孤独」を独自のユーモアでつづった、メキシコ発のラブストーリー。メキシコで暮らす60歳のチリ人男性マルティネス。偏屈で人間嫌いな彼は、会計事務所での仕事やプールでの水泳といった日々のルーティンを決して崩さない。しかしある日、会社から退職をほのめかされ、後任のパブロがやって来たことで、彼の規律的な日常は揺らぎ始める。時を同じくして、マルティネスのアパートの隣人である同年代の女性アマリアが、部屋で孤独死していたことが判明。アマリアの私物の中に自分宛の贈り物が残されていたことを知ったマルティネスは、彼女に興味を抱くようになる。遺された日記や手紙、写真を通して彼女への思いを募らせていくうちに、マルティネスは心の奥深くに眠っていた人生への好奇心を取り戻していく。

 

本作では、メキシコ出身のロレーナ・パディージャ監督が長編初メガホンをとり、パンデミックを通してメキシコの若者と高齢者との関係性が変化したことに着想を得て制作。『ナチュラルウーマン』のフランシスコ・レジェスが主演を務め、偏屈だが愛さずにいられない主人公マルティネスを説得力ある演技と存在感で魅力的に演じた。

 

©2023 Lorena Padilla Banuelos

 

映画『マルティネス』は、8月22日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田や京都・烏丸御池のアップリンク京都で公開。また、神戸・元町の元町映画館でも順次公開。

60歳を迎え、定年退職も近づいてきた男性が主人公の本作。会計事務所でしっかりとルーティンワークをこなしているのなら、新しいものを今更受け入れる気は全くないのだろう。自身の後任者が目の前に現れたのなら、自らのやり方を押し付けるが如く引き継ぐしかないだろう。だが、自身とは違い、異物のような人間が現れてしまったのなら、否が応でも自らのペースを乱されるのは避けようがないのも事実だ。だが、そんな変化を受け入れるかどうか、によって彼の人生に大きく影響を与える可能性がある。そこで、遭遇したのが、隣に住む女性の孤独死だ。性別が違えど、将来の彼が同様の事態になりかねない。だが、自身への贈り物が残されていたことを知り、眠っていた好奇心を取り戻していくのは興味深い。とはいえ、様々な遺品を通して変化していくことについては、観る者によって如何様にも捉えることができるだろうか。されど、自身が行ってきたことを顧みたことによる変化によって、職場にも良き影響を与えていくことは喜ばしい出来事だ。しかし、負の側面が顕著になってしまったことも逃さずに描いている本作が、翻って好印象でもあろうか。最終的には、60年も生きてきた男性の人生賛歌を描いているようでもあった。彼は、この先の未来をどのように生きていくのだろうか…陰ながら見ておきたい気分にもなる一作である。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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