「おおきに」の言い方が色々あって、すごくおもしろい…『ぶぶ漬けどうどす』京都里帰り上映会で深川麻衣さんと冨永昌敬監督を迎え舞台挨拶開催!

京都の老舗扇子店の息子との結婚を機に、東京からやって来たフリーライターが、エッセイ執筆の取材中に京都の本音と建前の文化に翻弄される『ぶぶ漬けどうどす』が6月6日(金)より全国の劇場で公開される。5月13日(火)には、京都・九条のT・ジョイ京都で『ぶぶ漬けどうどす』京都里帰り上映会が開催され、深川麻衣さんと冨永昌敬監督を迎え舞台挨拶が行われた。
映画『ぶぶ漬けどうどす』は、古都・京都を舞台に、京都愛の強すぎる女性が引き起こす大騒動を描いたシニカルコメディ。京都の老舗扇子店の長男と結婚し、東京から引っ越してきたフリーライターの澁澤まどか。450年の歴史を誇る老舗の暮らしぶりをコミックエッセイにしようと、義実家や街の女将さんたちの取材を始めるが、”本音と建前”を使い分ける京都の文化を知らず、女将さんたちを怒らせてしまう。京都の正しき伝道師になるべく奮闘するまどかだったが、事態は街中を巻き込んで思わぬ騒動へと発展していく。『愛がなんだ』『嗤う蟲』の深川麻衣さんが京都を愛するあまり暴走してしまう主人公まどかを魅力たっぷりに演じ、義母役で室井滋さん、まどかの仕事仲間の漫画家役で小野寺ずるさん、老舗料亭の女将役で片岡礼子さん、まどかの夫役で大友律さんが共演。『そばかす』の脚本家であるアサダアツシさんが構想に7年をかけて完成させたオリジナル脚本を基に、『白鍵と黒鍵の間に』の冨永昌敬監督がメガホンをとった。タイトルの「ぶぶ漬けどうどす」は、京都の人が早く帰ってほしい客に対して遠回しに言う言葉として知られる。
今回、上映前に深川麻衣さんと冨永昌敬監督が登壇。450年続く老舗扇子店の長男と結婚したフリーライターのまどかを演じた深川さんは「今日は平日の夜にも関わらず、皆さまお越しくださり本当にありがとうございます。短い時間ですが、よろしくお願いします。」と挨拶。続いて冨永監督は「1年半前に京都で撮影した映画で初めての上映会場が京都になってとても嬉しい想いでここに来ました。今日は楽しんでいってください」と挨拶し、舞台挨拶がスタートした。
撮影から1年半、企画の動き出しから6年という月日に対し、冨永監督は「コロナ禍の直前くらいから取材を始め、何回か京都に訪れ、結構時間がかかりましたね」と苦笑いしつつも「京都の方に怒られるのは嫌だし、怒られてもしょうがないと思いながらも、そのあたりをしっかり勉強したくて京都に取材に行って、お話しを聞いたり、アドバイスをもらった」と作品への想いを語っていく。出来上がった作品に対し、深川さんからは「冨永監督ワールドがぎゅっと詰まった作品になっていて、シニカルコメディというクスッと笑えるシュールな所もあり、一方でまどかが怖い(笑)という変化もある作品です。楽しんでいただければ嬉しい」と期待を込めた。
京都での初めての撮影に事前にスタッフから「すぐに京都で映画を撮らせてもらえるなんて甘すぎる」と聞かされていた冨永監督は「怒られるような事は何もしないから」と言いつつも、撮ってみると「やっぱり怖かったですよ」と会場の笑いを誘う。そんな京都に滞在した中で印象に残った事を聞かれた深川さんは「京都の電車は雰囲気が違った。東京ではスマホを触っていたり、俯いている人が多い印象だけど、京都の電車に乗っている方はふんわりお話され、品があった」と語り、会場は大きく頷いていた。
“ヨソさん”として感じた京都へのギャップについて、深川さんは「グルメの幅が広く、どんなお店も美味しい」と感激を覚えたそうだ。一方、冨永監督は「京都の人は発想の独創性のレベルが違う」と気づき「実際に暮らす自分たちの京都と、記号としての京都を使い分けている」と取材している中での発見を語る。好きな京言葉について聞かれ、深川さんは「おおきに」が気に入っており「言い方によって色々あって、人によって元気に言う人もいれば、はんなり言う方もいて、すごくおもしろい」と言葉の深さに感心する次第。
共演の室井滋さんや松尾貴史さんについて、深川さんは「役柄もそうだが、ご本人自身にユーモアがあり、多才でお話もおもしろい」と伝え、冨永監督からは「松尾さんは自身の前作(『白鍵と黒鍵の間に』)でご一緒した時からオファーを決めていた。何にでも変身できる人。室井さんは僕たち自主映画を撮っていた人間にとっては伝説の人、本当に出てくれることに嬉しかった」と喜んでいる。深川さんと3度目の共演となり、冨永監督作品への出演も3度目となる若葉竜也さんが演じた個性的な役柄について、監督からは実は外見・話し方共にモデルとして「関西の文化人男性に対し、こんなイメージと偏見があった(笑)。実際にいる気もするし、若葉君に説明した時も“わかります”と言ってくれた」と共感しあった秘密を暴露した。
最後に深川さんからは「撮影から1年半を迎え、まず最初に京都の皆さまに見ていただけて、すごく嬉しく思う。どう受け取っていただくかドキドキしているけれど、偏見を描いているわけじゃなく、偏見を持っていたと気づく映画であり、色んな目線から見た面白さをクスッと笑ってほしい。今日は本当にありがとうございました」とご挨拶。冨永監督から「一番の見所は深川さん。深川さんがやってくれたからこそ、この映画はおもしろい、と自信を持って言える。親しみをもって接してもらえる主人公にしたかった。確信を持ってお願いし、思っていた通りのまどかを作ってくれて嬉しく思っています。楽しみにしてください」と伝え、会場はあたたかい拍手に包まれ、舞台挨拶は幕を閉じた。
映画『ぶぶ漬けどうどす』は、6月6日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田や難波のTOHOシネマズなんば、京都・三条のMOVIX京都や九条のT・ジョイ京都や烏丸御池のアップリンク京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸等で公開。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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