俳優の織本順吉さんの晩年に娘のカメラが迫るドキュメンタリー『うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生』がいよいよ関西の劇場でも公開!

©かわうそ商会
役者として生涯を貫き、92歳で亡くなった織本順吉さんの最晩年の4年間を、娘である中村結美監督が記録したドキュメンタリー『うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生』が5月16日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生』は、2019年に92歳で他界した名脇役である織本順吉さんの最晩年の姿を、娘である中村結美監督がとらえたドキュメンタリー。日本映画に欠かせない存在として、約70年にわたり2000本以上ものテレビドラマや映画に出演し、地味ながら情感あふれる脇役を演じ続けた織本順吉さん。しかしその一方で、家族とともに生きられない一面もあった。そんな父への復讐心からカメラを向けはじめた中村監督は、老いて身体の自由が利かなくなり、セリフ覚えが悪くなり、感情を抑えられず家族相手に子どものように泣きわめく晩年の父の姿を、4年間にわたり撮り続ける。それはカメラを間に挟むことでようやく向きあえた父と娘の記録でもあった。ひとりの俳優がどのように人生の最期を迎えるのか、家族とどう向きあってきたのか、娘の視点から赤裸々に映しだす。
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映画『うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生』は、関西では、5月16日(金)より京都・烏丸御池のアップリンク京都、5月23日(金)より兵庫・宝塚のシネ・ピピア、5月31日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場や神戸・元町の元町映画館で公開。

セリフ覚えの良さからオファーが続き、薄幸な父から教師役、小悪党、ヤクザの親分まで幅広い役柄を演じた織本順吉さん。名脇役と云われながらも、老いに抗えないのは、なんとも切ない。御本人は、生涯現役を貫いており、いつの間にか認知症を患っているのも気づけないまま、セリフ間違いにより10回もNGを出してしまうまでに至ってしまうと、どれほど辛かっただろうか。ふとしたことで癇癪を起こしてしまう姿を見てしまえば、どこかで共感せざるを得ない方もいらっしゃるのでは?と思わずにはいられない。だが、家族にとっては本当に大変であることがそこかしこから伝わってくる。認知症を患っていることに気づいた時から、織本さんの娘である監督がカメラを向けていく中で、ちょっとしたことで激高する姿を見せつけられ、どのような気持ちだっただろうか。ずっと傍にいた妻にとっても限界が来たことが伝わってきて、やるせない気持ちにもなってしまう。生涯現役を貫いてきたとしても、いつかは仕事がなくなってしまうのが現実。そんな仕事がなくなってしまうと、これほどまでに老化が進んでしまうのか、改めて認識させられてしまう。自身の祖父母が最後にどのような状態であったか、を思い出しながらも、自身はどのように老いてしまうのだろうか、と自分事として考えずにはいられない。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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