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記憶に翻弄される不器用な2人が出会い、過去や人生と向き合う『あの歌を憶えている』がいよいよ劇場公開!

2025年2月18日

©DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

 

NYを舞台に、高校の同窓会で出会ったソーシャルワーカーと若年性認知症の男性が人生の希望を見つけていく『あの歌を憶えている』が2月21日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『あの歌を憶えている』は、忘れたい記憶を抱える女と忘れたくない記憶を失っていく男が出会い、互いに支えあいながら希望を見いだしていく姿を優しいまなざしでつづったヒューマンドラマ。ニューヨークで13歳の娘と暮らすソーシャルワーカーのシルヴィアは、若年性認知症で記憶障害を抱えるソールと出会う。家族に頼まれてソールの面倒を見るようになったシルヴィアは、ソールの穏やかで優しい人柄と、彼が抱える抗えない運命への哀しみに触れ、次第にひかれていく。しかしシルヴィアもまた、ある過去のせいで心に傷を抱えていた。それぞれ自分の殻に閉じこもって生きてきた2人は、互いに寄り添いながら自身の過去や人生と向きあっていく。

 

本作では、ジェシカ・チャステインがシルヴィア、ピーター・サースガードがソールを演じ、2023年の第80回ベネチア国際映画祭にてサースガードがボルピ杯(最優秀男優賞)を受賞。テレビドラマ「ゴッドレス 神の消えた町」のメリット・ウェバー、『サスペリア』のジェシカ・ハーパーが共演。『或る終焉』『ニューオーダー』等で知られるメキシコの俊英ミシェル・フランコが監督・脚本を手がけた。

 

©DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

 

映画『あの歌を憶えている』は、2月21日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田や難波のなんばパークスシネマ、京都・三条のMOVIX京都や烏丸御池のアップリンク京都、神戸・三宮のkino cinema 神戸国際等で公開。

ミシェル・フランコ監督の作品はいつも残酷な真理と隣り合わせだ。喪失感によってすべてが狂わされたり、人間の暴力性を容赦なく突きつけられたり、母性や父性がおぞましい姿となって襲いかかってきたり。はっきり言ってしまうが、見ていて心地よい気持ちになるような作品は一本もない。『あの歌を憶えている』もきっと不愉快な気持ちにさせられる作品だろうと思い込んでいた。しかし、その予想はいい意味で裏切られる。

 

過去のトラウマと共に生きるシルヴィアと認知症によって記憶を留めておくことができないソール。忘れることができない人と忘れていってしまう人という真逆のふたりがお互いの重荷を分かち合う過程を静かなタッチで描き出す。これまでのフィルモグラフィーからは考えられないほど優しさと愛に満ちた作品になっていて驚かされる。

 

しかし、ただ優しいばかりでは終わらせてはくれない。彼らを取り巻く環境や背景はとても過酷で辛い現実ばかり。これまでミシェル・フランコ監督が描いてきた残酷で耐えがたい出来事とほぼ変わらないような状況がしつこいぐらい付きまとう。だからこそ、シルヴィアとソールの関係性が胸を打つものとなる。たとえ、プロコル・ハルムの「青い影」のように呆気なく終わってしまう儚い関係だったとしても、ふたりが寄り添う時間はかけがえのないものであるはずだ。世界の厳しさや複雑怪奇な人間の内面を見つめるミシェル・フランコ監督だからこそ描ける人間ドラマがそこにあった。

 

そして、ジェシカ・チャステインとピーター・サースガードの演技も素晴らしい。言葉で語らずとも、彼らの表情から辛さや切なさが滲み出てくる。特に、本作でヴェネツィア国際映画祭男優賞を受賞したピーター・サースガードの佇まいは必見だ。

 

fromマリオン

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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