俳人・小説家の瀧井孝作による私小説「俳人仲間」の一編を映画化した『初めての女』がシアターセブンでも公開!
©TRYDENT PICTURES 2024
明治末期の飛騨高山を舞台に、俳句を拠り所にする丁稚奉公の青年が、女中との出会いで成長していく姿を描く『初めての女』が12月14日(土)より大阪・十三のシアターセブンでも公開される。
映画『初めての女』は、芥川賞の選考委員を創設以来46年間務めた俳人で小説家の瀧井孝作さんが晩年に執筆した、自身の青年期を描いた私小説を映画化。飛騨高山に残る古い街並みや自然を背景に、若かりし頃の瀧井孝作さんが経験した俳句仲間との青春、2人の女性との初めての恋など、1人の青年の成長を描く。明治末期の岐阜県高山。瀧井孝作は家業が傾いたことから丁稚奉公に出された。幼い頃に兄と母を亡くし、奉公先でつらい日々を送る孝作の唯一の心のよりどころは、俳句を書くことだった。俳句仲間たちと句作に励んでいた孝作は、西洋料理店の女中である玉、三味線芸者の菊と出会う。孝作は2人の女性を前に、今まで味わったことがない感情に突き動かされる。
本作では、主人公の瀧井孝作を『君に幸あれよ』の髙橋雄祐さん、玉役を『夜明けのすべて』の芋生悠さん、菊役を『海にのせたガズの夢』の三輪晴香さんがそれぞれ演じる。監督は元漁師という経歴を持ち、本作が劇場作品デビューとなる小平哲兵さんが務めた。
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映画『初めての女』は、12月14日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。
志賀直哉を兄のように敬って文学に携わり、芥川賞の選考委員を創設以来46 年間務めた俳人・小説家である瀧井孝作氏。大正から昭和にかけて活躍した小説家は大変な人生を経験してきたことを聞くが、瀧井氏の場合、幼い頃に兄や母も亡くし、父親の事業が失敗し丁稚奉公に出されざるを得なかった。幼いながら事態を理解し、魚問屋での丁稚奉公に向かうことになった意味を自然と分かったのだろうか。だが、彼には俳句を書くことによって心に安泰をもたらしていく。そんな素朴な青年だったからこそ出会ったのが、俳句仲間と西洋料理屋の女中と三味線芸者。初めて親しくなった女性は共に年上で、どのように接していいか分からないままでありながらも、素直で純朴な文学青年である孝作さんは、真摯に接していく。とはいえ、初めて抱いた感情に振り回され、日々詠んでいた俳句からも遠ざかってしまうことも…後に大成していくことを憂慮すれば、彼にとっては欠かすことができなかった青春の頃であったろうか。大人になれば東京にも出ていくが、その前に過ごした故郷である高山の自然を映し出しながらも、多感になっていく青春時代の移ろいを瑞々しく描いた一作である。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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