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加藤さんは次々と音楽性を変化させていき、革新的でオリジナリティがあった!『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』相原裕美監督に聞く!

2024年5月31日

1960年代から1990年代にかけて、日本の音楽史に名を刻んだ類まれな音楽家・加藤和彦の足跡に追ったドキュメンタリー『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』が5月31日(金)より全国の劇場で公開。今回、相原裕美監督にインタビューを行った。

 

映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』は、日本のポピュラー音楽史に残る数々の名曲を生んだ音楽家である加藤和彦さんの軌跡をたどったドキュメンタリー。ザ・フォーク・クルセダーズやサディスティック・ミカ・バンドなど時代を先取りした音楽性で多くの人々に影響を与え、”トノバン”の愛称で親しまれた加藤和彦さん。日本初のミリオンヒットを生んだザ・フォーク・クルセダーズの結成秘話、世界進出を果たしたサディスティック・ミカ・バンドの海外公演やレコーディング風景をとらえた貴重な映像、日本のポップスの金字塔といわれる”ヨーロッパ3部作”に隠された逸話などを紹介。さらに、名曲「あの素晴しい愛をもう一度」を新たにレコーディング、世代を超えたミュージシャンによって進化する楽曲の姿が映し出された。高橋幸宏さんがトノバン(加藤和彦の愛称)に寄せた思いから映画の企画が立ち上がり、『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』の相原裕美さんが企画・監督・プロデュースを担当した。

 

ザ・フォーク・クルセダーズのデビューシングル「帰って来たヨッパライ」を小学校低学年の頃に聴き、幼かったが世の中で流行っていることを察したという相原監督。その後、加藤さんはソロ活動を経て1971年サディスティック・ミカ・バンドを結成、その変貌ぶりに監督は「同じ人がやっているとは思わなかった」と驚愕してしまう。本作を企画するにあたり監督は、撮影前に改めて関連本を読んだり、CDを聞いたり、様々な人を取材。その中で「「帰って来たヨッパライ」や「タイムマシンにおねがい」やヨーロッパ3部作を作った頃など加藤さんを断片的にしか知らなかった。とてつもなく新しいことをやっている人だったんだな」と気づかされ「すごく革新的。楽曲の変遷を見ると、繋がらない。加藤さんにしかないオリジナリティがある」と受けとめている。

 

約1年をかけて50人にも及ぶ関係者に取材している本作。インタビュー相手については、加藤さんと深い縁がある音楽プロデューサーの牧村憲一さんや加藤さんの最後のマネージャーである内田宣政さんが監修に関わってもらい「意図や目的を伝え『こういう人に話を聞いたらいい』と選んでもらいました」と話す。既に高齢の方も多く、インタビュー出来なかった方もおり「今録らなければ、その人たちの生の声も残せない。生の声を残さないと映画は成立しない」という思いを原動力にして監督は撮影に臨んだ。インタビューは、音楽関係者以外の方も含まれている。加藤さんの妻であった作詞家の安井かずみさんと親交があったコシノジュンコさんについて「サディスティック・ミカ・バンドをやる時は、ファッション等も含めてスタイルから入っている。コシノさんは、1960年代にファッションと音楽がカオスになっている状況下で様々な新しいものを作ってきた人であり、クリエイティブな人だ」と捉えているからこそ、欠かすことのできない証言者の1人として撮影した。

 

なお、本作は、加藤さんの音楽性に対する再評価を目的として描いている。サディスティック・ミカ・バンドを共に組んだ高橋幸宏さんから「トノバンはもう少し評価されても良いのじゃないかな?」という声を受け、相原監督の中でも熟考。様々な資料から「加藤さんはやっぱり凄いんだな」と改めて認識したことが大きい。また「音楽性の変化と共に新たなことを始めている。それは洋服や食事の嗜好でも同じ。人がやらないことにとらわれているんじゃないか、と感じられる程に進んでいる」と捉えている。監督はきたやまおさむさんから「取り留めない。よく分からない。ミュータントみたい」という言葉を聞き、納得した。「どれが本当の加藤和彦なのか分からない」ともきたやまさんから伺っており「あれだけ身近にいた人が話すことには重みがある。だからこそ、加藤さんが作った音楽はどれだけ素晴らしいか、革新性があるか、といったテーマを中心に焦点を当ててやっている」と監督は語る。

 

今作の最後には、「あの素晴しい愛をもう一度~2024Ver.」が収録された。「歌は、歌い継がれるもの。その人が亡くなったらもう歌わないものでもない」という監督の思いがあり、同世代だけでなく若手のミュージシャンも参加している。なお、3番のAメロには加藤さんの歌唱が使われており、「現在のAI技術を以て、1971年のライブ音源や高橋幸宏さんによるドラムのサンプリングも盛り込まれている。亡くなった方も含め、皆で歌を歌い継ぐことができれば。さらには、最後のコーラスはクラウドファンディングで募った映画支援者の方々も参加している」と解説した。

 

本作を通じて加藤和彦さんを知った方に向け、クリエイターを志す人へのメッセージとして監督は次のように語った。「加藤さんは次々とスタイルを変え、革新的なことをしている。日本初のPA会社であるギンガムを設立した」と挙げ「現在、音楽業界を目指している人や音楽に携わっている人達の環境は大いに変化している。CDというフィジカルメディアが減少し、サブスクリプション・配信になっている。しかし、世界と繋がっている。加藤さんが活躍した時代にはインターネットやメールもない。世界と繋がることで新しい音楽に取り組むことができる。新しいことをもっと考え、自分達の音楽を発信できる」と提案。「自分のスタイルをどのように保ちながら音楽活動をするのか。音楽に限らず、様々な仕事でも同じ」と認識しており「今までの道理と違ったやり方にならないといけない時代になりつつある。それが、どういう形で自分たちに還元されるのか考えられたら」と、今後の音楽業界の行く末を楽しみにしている。

 

映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』は、5月31日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや難波のTOHOシネマズなんば、京都・烏丸の京都シネマ、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OS等で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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