紛争のため故郷を追われた“惑星難民X”があふれる世界で記者がスクープを追う『隣人X -疑惑の彼女-』がいよいよ劇場公開!
©2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 ©パリュスあや子/講談社
惑星Xの難民を受け入れた日本で、スクープを狙う記者がXの正体を追う『隣人X -疑惑の彼女-』が12月1日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『隣人X -疑惑の彼女-』…
故郷の惑星の紛争によって宇宙から難民として地球にやってきた「X」と呼ばれる生命体が世界中に溢れ、各国がその対処に苦慮する中、日本はアメリカに追随するように彼らの受け入れを決める。Xは人間にそっくりな姿で日常に紛れ込み、人々はXを見つけ出そうと躍起になって社会に不安や動揺が広がっていく。そんな中、週刊誌記者の笹憲太郎はX疑惑のある柏木良子の追跡を開始。自身の正体を隠しながら良子に接近し、ふたりは徐々に距離を縮めていく。やがて良子に対して本当の恋心を抱くようになった笹は、彼女への思いと罪悪感、記者としての矜持に引き裂かれそうになりながらも、ある真実にたどり着く。
本作は、第14回小説現代長編新人賞を受賞したパリュスあや子さんの小説「隣人X」を、上野樹里さんと林遣都さんの共演で映画化。監督・脚本・編集は『ユリゴコロ』の熊澤尚人さん。良子とともにX疑惑をかけられる留学生リン・イレン役で台湾の女優ファン・ペイチャさんが出演するほか、野村周平さん、嶋田久作さん、バカリズム、川瀬陽太さん、原日出子さん、酒向芳さんらが共演する。
©2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 ©パリュスあや子/講談社
映画『隣人X -疑惑の彼女-』は、12月1日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマやなんばパークスシネマ、京都・三条のMOVIX京都、神戸・三宮のkino cinéma神戸国際等で公開。
故郷を追われた“惑星難民X”を追う物語、と聞くと、『遊星からの物体X』のようなSFホラー作品かと思われてしまうかもしれない。本作の場合、SFホラーの要素もあるが、どちらかといえば、サスペンスフルな恋愛・ヒューマンドラマといった方が良いだろうか。パリュスあや子さんの原作小説「隣人X」では、境遇の異なる3人がリンクしていく物語ではあるが、映画では、コンビニと宝くじ売り場のかけもちバイトで暮らす柏木良子と、大学進学を目指す台湾人留学生の2人に絞って、週刊誌の契約社員記者の笹憲太郎が追いかけていく。
本作が示すXは、いくつもの意味を持たせていると自然と考えてしまう。少し前なら移民問題を象徴していただろうか。だが、コロナ禍を迎えた今なら、得体の知れないウィルスのようにも捉えてしまう。だが、難民として迎えるならば、互いの存在を認め尊重すべきであり、多様性を描いているようにも考えられる。部数を叩き出し完売を目指す週刊誌へのメディア批判も含まれているか。現代社会の中で守られるべきものが何であるか考えさせてくれる作品だ。とはいえ、結局のところ、誰がXであるか作品は提示されていくことにはなるが、観る者の捉え方にも異なってくるようにも感じた。実に多層的な作品である。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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