見合い結婚させられた貧しい農民夫婦の愛を描く『小さき麦の花』がいよいよ関西の劇場でも公開!
(C)2022 Qizi Films Limited, Beijing J.Q. Spring Pictures Company Limited. All Rights Reserved.
中国西北地方の農村を舞台に、見合い結婚をした夫婦が互いに慈しみ、働く慎ましやかな日々を描く『小さき麦の花』が2月24日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『小さき麦の花』…
中国北西部の貧しい農民のヨウティエと内気なクイインは、互いに家族から厄介払いされお見合い結婚させられる。貧しいながらも懸命に働くふたりは、畑の作物を育てる日々を送り、やがて家を作る。慎ましい農村生活の中で、ふたりは徐々に固い絆で結ばれていく。
本作は、第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品された夫婦の絆の物語。『僕たちの家に帰ろう』のリー・ルイジュンが監督を務め、ウー・レンリン、『オペレーション:レッド・シー』のハイ・チン、ヤン・クアンルイ、チャオ・トンピンらが出演した。
(C)2022 Qizi Films Limited, Beijing J.Q. Spring Pictures Company Limited. All Rights Reserved.
映画『小さき麦の花』は、関西では、2月24日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や京都・烏丸の京都シネマ、3月3日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
ロバと共に畑を耕し、種を巻き、苗を育て、収穫したものを売りに出す。大地と共に生きるライフスタイル、というと美しいが、労働は過酷で休みは無く、延々と繰り返す毎日。都市部の生活とはかけ離れている、地道で文字通り泥臭い生き方を映した作品が、中国の若者たちの間で大ヒットしたという報道に驚いた。冷静に観始めたが、この雰囲気には次第に引き込まれていく。厳しくも美しい自然の情景と夫婦の寄り添う姿の暖かさといじましさがあった。
労働に苦労する姿の生命力の描き方は、スタインベックのようなプロレタリア文学を読んでいるようでもあり、農民と畑の素朴でノスタルジックな画は、ミレーなどのバルビゾン派の絵画を見るようでもある。中盤の「自分たちの家を建てる」エピソードでは、途方に暮れるようなDIYの様子が丁寧に描かれていた。土を四角い型に詰め込み、重いその箱を持ち上げては乾かすために並べ、一つ一つレンガを作っていく。それを積み上げ終わったら、次は天井を作るために木材を…という流れだけでもハウスメイキング動画のようにおもしろい。
農村に生きる過酷さを描いた中国映画は過去にも多数存在する。閉鎖的なムラ社会で古い因習にとらわれて、ままならない苦しい生活をしている人々の姿は今までにも見てきた。しかし、本作では為政者によるあからさまな搾取や、村人による集団的ないじめなどはほぼ登場しない。むしろ、もっと大きな社会システムの矛盾に翻弄される姿が一層もどかしく、だからこそリアルでつらい。観ている側も「誰を憎めばよいのかわからない」のだから。
原題は「隠入塵煙」。粉塵へと消えゆく、とでも訳すところか。英語題も「RETURN TO DUST」だ。当初に構想されていた結末から加筆修正された後の形だという話もある。エンディングまで鑑賞し終えた今、是非観た方と感想を語り合いたい。
fromNZ2.0@エヌゼット
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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