アイドルが仕事する上で必要な要素が主人公と共通していた…『#マンホール』中島裕翔さんと熊切和嘉監督を迎え舞台挨拶開催!
結婚式前夜の幸せの絶頂から、不運にもマンホールの底に落ちたエリートサラリーマンのピンチを描く『#マンホール』が全国の劇場で公開中。2月12日(日)には、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田に中島裕翔さんと熊切和嘉監督を迎え、舞台挨拶が開催された。
映画『#マンホール』は、マンホールに落ちてしまった男の苦闘を描いたシチュエーションスリラー。勤務先の不動産会社で営業成績ナンバーワンの川村俊介は、社長令嬢との結婚も決まって将来を約束されていた。しかし結婚式の前夜、渋谷で開かれたパーティで酩酊し、帰り道にマンホールの穴に落ちてしまう。深夜、川村は穴の底で目を覚ますが、思うように身動きが取れず、スマホのGPSは誤作動を起こし、警察に助けを求めてもまともに取り合ってもらえない。なんとか連絡が取れた元カノに助けを求めることができたが、自分のいる場所がどこかわからない川村は、「マンホール女」のアカウントをSNS上で立ち上げ、ネット民たちに場所の特定と救出を求めるが…
Hey! Say! JUMPの中島裕翔さんが6年ぶりに映画主演を務め、『ライアーゲーム」『マスカレード・ホテル』シリーズの岡田道尚さんによるオリジナル脚本で、『私の男』『海炭市叙景』の熊切和嘉監督がメガホンをとった。中島さんが主人公の川村役を演じるほか、川村の元カノ役を奈緒さん、川村の同期社員役を永山絢斗さんがそれぞれ演じる。
今回、上映前に中島裕翔さんと熊切和嘉監督が登壇。中島さんは「これだけ沢山の方に観て頂けるのは公開してまだ2日しか経っていないのが信じられないくらいなんですけど」と驚きながら「この短期間に沢山の方に観て頂いて沢山の感想や反応。そして皆さんもしっかり”共犯者”としてネタバレをしないように」とお願い。大阪芸術大学出身の熊切監督は「学生時代に憧れていた、この大きな劇場で自分の映画を公開して頂けることを本当に嬉しく思います」と感激していた。
本作の公開を迎え、中島さんはSNSをチェックしており「今まで見たことがない僕がそこにいた。映画の巧妙な仕掛けに気づいて下さるニッチでオタクな方もいらっしゃった」と様々な反応に喜んでいる。熊切監督はSNSが苦手で「友達には”どうしたの?”という感じで…」と却って心配されたようだが、友人からは「今までとは作風が違うのかな、と思いきや、途中から同じ感じになる」といった反応があったようだ。ネタバレ厳禁である今作について、中島さんは「初めて観る方は身を委ねて、マンホールの中で一緒にいるような、閉塞感に包まれながら、一緒に川村と苦しみながら観てほしいな」と楽しみにしている。
オリジナル脚本である今作。最初に、脚本家の岡田さんとプロデューサー陣で1年程度かけて練っており、脚本を読んだ熊切監督は「最初に読んだ時、今までの作風と違ったので、戸惑いもあったんですが、何度も読むうちに、話の転がし方が上手いですし、現代の風刺にもなっているので、おもしろい映画になるんじゃないかな」と期待し、監督オファーを承諾。台本を受け取った中島さんは「まず、ワンシチュエーションで見せていく。タイトルが『#マンホール』というものを渡された」と衝撃が大きかった。読み進めていくと「入ったら、ほぼほぼ一人芝居。映画の脚本など様々なことを考えないといけないことがあるんですが、ワンシチュエーションの中で自分が画をもたすことが出来るか」と撮影前は不安に。とはいえ、熊切監督としては「役については細かく塩梅を調整していこう、と話した。そもそも、この企画は中島君じゃなきゃ成立しない。助けられた」と感謝している。主人公の川村俊介は、結婚式を目前に控えた、人生の頂点にいるような幸せをつかんだハイスペックな男であり「その人がマンホールに落ちて、ドンドンもがいていって本性が見えてくる」と中島さんは受けとめ「割と普通の人であった方がいいな。人から良く見られたい意識は、僕らアイドルが仕事する上で必要な要素として持っているので、共通点として、普段の仕事をしている時の自分のまんまでいる。そこからマンホールに毒されていって変わっていく方がおもしろいな」と理解していった。
注目ポイントして、中島さんは「脚本からも様々な仕掛けがあり、SNSの文言をよく見ると、おもしろいことが書いてある。セットにも話の流れにも随所に散りばめられている。映画が好きな人にとっては、イースターエッグ的な要素もある」と楽しみ方を提案。特に頑張ったところとして泡のシーンを挙げ「撮る方もやる方も凄く大変でしたね」と苦笑い。熊切監督も「二度とやりたくないです」と同感。中島さんは「泡が怖い、って初めて思います」と告げ、熊切監督は「誰もやったことがない。正解が分からない。色々と実験はしたんですが、結局、現場でやってみるしかない。本当に、中島君は苦労された、と思います。何度も泡に浸かっています。泡の中で1分ぐらい息を止めてもらったこともありましたね」と振り返る。中島さんも「泡は服が吸収するんですよ。ドンドン作ってもらわないと、ドンドン減っていっちゃう。泡と時間の戦いがあった。特に大変なシーンでしたね」と思い返す。
今まで手掛けてきた作品とは違うテイストの作風について、熊切監督は「ジャンル映画を本格的にやるのは初めてなので、やはり90分台でまとめ上げたかった。この限定された空間で如何にスピード感のある映画を作るか」とチャレンジ。中島さんは、熊切監督について「熱のある、寡黙な方。緊張感ある方なのかな」と気になっていたが、初めて会い「物腰が柔らかかった。初めて会った気がしない。最初から受け入れて下さって、意気投合したな」と安心。現在では映画をお薦めし合う程の仲になっており「僕が見たことのないジャンルの映画を沢山教えて下さった。勉強させてもらっています」と頼りにしている。ということから、本作のようなシチュエーションスリラーについて「僕にとっては、今一番やりたかった役の作品でもあるので、楽しかったです」と大満足。中島さんについて、熊切監督は「役に向かう取り組み方が素晴らしかった。それを表現する能力やバランス感覚も高い。やっぱり身体能力の高さが抜群だったので、今回のような映画は、彼の動きのキレのおかげでカットを割れた。カットがいつもよりスピーディーになっているのは狙いでしたが、彼の動きが良かったですね」と太鼓判を押す。
大阪について聞かれ、中島さんは「ひやしあめが大好きなんですよ。毎回、楽屋の冷蔵庫に入れてもらうようにしています。東京で見たことがない。凄く新鮮。生姜と蜂蜜の甘いのが喉に良い気もします。大阪での公演後に糖分補給としてまず飲みます」と明かす。熊切監督は「カレー屋のインデアンが大好きですね。フルーティな甘さがあるんだけど、後から来る辛さがクセになるんですよね」とお気に入りだ。
なお、第73回ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・スペシャル部門正式招待作品となっており、初めてベルリンを訪れる中島さんは「今から緊張しています。どんなことが起こるんだろう。初レッドカーペットになるので、堂々とこの作品をベルリンの方に、世界の方に観てもらって、反応に期待したいな」と意気込んでおり「ドイツのマンホールがどんな感じなのか。『#マンホール』というタイトルの映画が万国共通で怖く感じるものなのか」と興味津々。熊切監督は「ブルガリアに住んでいる姉が10年ぶりに映画を観つつ会いに来る。今までヨーロッパで僕の映画が上映された時、一度も来たことがないんですよ。今回、中島君に会いたくてくるんじゃないかなぁ」と察している。なお、本作の続編について想像してみると、中島さんは「マンホールだけじゃなくて、側溝とか。『#側溝』、ココ(上半身)だけ出てる、とか」と言いながら、お客さんの反応に一安心していた。
最後に、熊切監督は「編集していて、中島君の表情が最初と最後で全然違う。本当に様々な表情を持っているなぁ。映画には様々なスペクタクルな要素があるんですが、結局、これは彼の表情を楽しむ映画だな、と思って編集しました。最後まで存分に楽しんで観て頂けたらな」とメッセージ。中島さんは「僕自身でも自分の顔に驚いた。そんな表情が沢山観られる映画になっています。僕のファンの方だけじゃなく、映画好きな人、マニアックな映画が好きな人にとっても十分に満足出来る、日本ではなかなか観たことがないタイプの映画になっております。此処にいる皆さんで僕達と共犯者になってネタバレ厳禁を続けていってほしいな」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。
映画『#マンホール』は、全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や三条のMOVIX京都や九条のT・ジョイ京都、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OSや、神戸のOSシネマズ神戸ハーバーランド等で公開中。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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