多様な作品を好むお客さんが観に来るアクション映画を作っていこう…かつてない方針転換を実施!『ベイビーわるきゅーれ』阪元裕吾監督に聞く!
人殺し以外何もしてこなかった女子高校生ふたり組の殺し屋が、卒業目前にして社会に適応しようともがく姿を描く『ベイビーわるきゅーれ』が8月20日(金)より関西の劇場でも公開。今回、阪元裕吾監督にインタビューを行った。
映画『ベイビーわるきゅーれ』は、社会不適合者な殺し屋の少女たちが、社会になじむため奮闘する姿を描いた異色青春映画。高校卒業を目前に控えた女子高生殺し屋2人組のちさととまひろ。組織に委託された人殺し以外、何もしてこなかった彼女たちは、高校を卒業したらオモテの顔として社会人をしなければならない現実を前に、途方に暮れていた。2人は組織からルームシェアを命じられ、コミュ障のまひろは、バイトもそつなくこなすちさとに嫉妬し、2人の仲も徐々に険悪となっていった。殺し屋の仕事は相変わらず忙しく、ヤクザから恨みを買ったことから面倒なことに巻き込まれてしまい…
ちさと役を高石あかりさん、まひろ役を伊澤彩織さんがそれぞれ演じる。
前作『ある用務員』の編集時、高石あかりさんと伊澤彩織さんの芝居を見たプロデューサーから「おもろいなこの2人。2人の作品が出来るんじゃないか」とGOサインを受け取った坂元監督。編集作業をしながら脚本を執筆し、『ある用務員』完成2週間後には製作会社が決まりキャスティングも進行していった。そもそも、伊澤さんをTwitterから認識し、刀でアクションするPVを拝見し「こんな素敵でアクションも出来る女性がいるんだ」と驚き「凄いですね」とオファーのDMを送付。以降、2、3年ずっと追い続け、『ある用務員』の脚本執筆時には充て書きしていた。高石さんは、キャスティングプロデューサーからの勧めだったが「『ある用務員』の時はほぼアドリブだったが、キャラクターや台詞、2人の関係性を作って頂いた。100点の出来でしたね」と太鼓判を押す。なお、『ある用務員』を監督するまでは学生時代の友人からの繋がりから撮ることが多かったが「知らない人ともっとやってみたい」と意識し出し「配信ドラマ『すじほり』を撮らせてもらい、全然知らない人とやっていかないといけない、と分かった。友達に出演してもらえる利点はある。気軽に役について話せる。たが、これが当たり前のことではない」とプロ意識が芽生えていった。
『ある用務員』の脚本執筆時、ブルース・ウィリス主演作『デス・ウィッシュ』を観て「日本でもこんな作品が撮れる監督になろう」と決意。それまではスプラッター作品をずっと手掛けてきたので「間口が広く、誰でも楽しめるアクション映画を撮るのが仕事かな」と自覚していた。「邦画=バイオレンスではない。『デス・ウィッシュ』や『Mr.ノーバディ』のような作品が日本にはない。バイオレンスは日本にもあるので、ないところにいこう」と舵を取り「手堅くおもしろく楽しい映画を撮ろう」と『ある用務員』を制作。だが「男らしい映画を撮ったが、ジャンル映画好きか出演者のファンにしか広がらない」と編集段階から感じており「ある一点では男の美学を描き、アクションを磨き良い映画になったとは思ったが、完成が近づくにつれ、この一本だけでは映画業界を席巻しないな」と痛感。『ベイビーわるきゅーれ』を撮ることになり「今泉力哉監督や山下敦弘監督の作品を観る観客層が来るアクション映画を考えよう」とがらっと方針転換。故に青春映画でダラダラ喋っているシーンもたっぷりとある作品になっている。
とはいえ、本作でもアクションシーンには拘っていく。事前に殺陣の稽古もして必要に応じてスタントマンを用いて準備は欠かさない。ユーデンフレームワークスの園村健介さんがアクション監督を担っている。坂元監督とスタントマンである伊澤さんの2人で殺陣を作り上げられるが「園村さんが作ると一番凄いアクションになるはずです」と伊澤さんも一任。「日本で一番のアクション監督は園村さん。アクションのステージが1つ上がる」と坂元監督と確信し、自身が撮ったアクションシーンを見せながら打ち合わせをして全てお任せした。出来上がったアクションシーンについて「筋肉や関節の一つ一つをどう動かすか考えている」と受けとめ「アクション監督を据えるからには、私が手を出せない未知の領域を作らないと依頼する意味がない」と自負する。
今回、95分の作品を6.5日程度で撮影しており「1日に15分の映像量を撮らないといけない。とても大変な工程であり、上手くいかないと撮りたいカットが撮れなくなる。格好良いカットをじっくりと撮れず、やり取りを中心とした長めのシーンになってくる」と告白。寄りのカットが沢山撮れず、アドリブな会話でロングショットを繋いだが「結果的に作品の個性にはなったのかな」と納得。だが、本作冒頭シーンの撮影時には、スタントマンであるにも関わらず伊澤さんの台詞ありきの演技が完全に出来上がっており「このまま進めばおもしろい作品になるな」と確信できた。なお、『ベイビーわるきゅーれ』の続編についての構想は沢山あり「本作は誰かが成長する話ではない。これからの生き方を再認識するだけ。続編を作るなら、全く異なるテイストにしたい」と考えており「大きなうねりがあるドラマで2人の人間性や関係性が試される物語をしっかり作りたい。殺し屋ランキング上位の大先輩のカリスマイケメン殺し屋との初恋といった想像できないような作品を描きたい」とアイデアは膨らむばかりだ。
映画『ベイビーわるきゅーれ』は、関西では、8月20日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や難波のなんばパークスシネマ、神戸・三宮の神戸国際松竹、8月27日(金)より京都・九条の京都みなみ会館で公開。
気鋭の若手監督、阪本裕吾氏の新作を一言で表すならば、萌え ✕ バイオレンスアクション!高校を卒業したばかりの女子2人が本業である殺し屋を続けつつ、社会に馴染もうと奮闘する様子を描いた異色のストーリー。コミュ障のまひろと天真爛漫なちさと。「社会不適合者な殺し屋コンビ」というパンチのある肩書とは裏腹に、初めての共同生活やアルバイトに挑戦する姿には「今どきの女の子」が垣間見え、そのギャップに見事やられてしまう。会話の端々に仕込まれた小ネタやどこか居そうな人々、妙にリアルな裏稼業の設定など、阪本ワールド全開の世界観にも注目。永遠に浸っていられそうな居心地の良さと中毒性があり、2回3回と鑑賞したくなる。
一方、ファイトシーンも手加減なし!特に現役のスタントウーマンである、まひろ役の伊澤彩織さんの立ち回りは思わず息をのむほどの迫力。冒頭からアクセル全開でぶちかましてくれるので期待してほしい。ベビーフェイスに銃が似合うちさと役の髙石あかりさんは、豪快なガンアクションを披露。とにかく2人のキャラが立ったアクションで、最後には息がピッタリ合った大乱闘を見せてくれる。早くもシリーズ化を待望してしまう本作。劇場を後にする頃にはすっかり2人の虜になっているだろう。
fromマエダミアン
ちょっと!!!なんですかこれ!!監督!!続編を下さい!!10-FEETによる主題歌が流れるエンドロールの中、ずっとこう思っていた…
いわゆる”Z世代”特有の空気感が妙にリアル。ガチアクションのスパイスが加わり生まれる緩急がとても心地良い。キレッキレなアクション、観客の視線を引き込むカメラワーク、映画/アニメの小ネタ、コレは映画好きが間違いなく”好きなヤツ”!そして今作は本当に主人公達と同年代の人達には特に観て頂きたい!随所に挟まる、コミカルな要素も含め、『映画って、やるやん!おもしれーやん!スゲーやん!』って、思ってもらえる作品やと思います!こんなに面白い映画、映画館で観なくちゃもったいないですよ!!
from関西キネマ倶楽部
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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