83歳のスパイが老人ホーム潜入調査を行う過程を捉えたドキュメンタリー『83歳のやさしいスパイ』が関西の劇場でもいよいよ公開!
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80~90歳のスパイを募集する謎の求人に応募した男性が、潜入した老人ホームの利用者たちと触れ合いながら、現代の介護施設の存在理由を探っていく姿をユーモラスに描く『83歳のやさしいスパイ』が7月16日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『83歳のやさしいスパイ』は、老人ホームの内定のため入居者として潜入した83歳の男性セルヒオの調査活動を通して、ホームの入居者たちのさまざまな人生模様が浮かび上がる様子を描いたドキュメンタリー。妻を亡くして新たな生きがいを探していた83歳の男性セルヒオは、80~90歳の男性が条件という探偵事務所の求人に応募する。その業務内容はある老人ホームの内定調査で、依頼人はホームに入居している母が虐待されているのではないかという疑念を抱いていた。セルヒオはスパイとして老人ホームに入居し、ホームでの生活の様子を毎日ひそかに報告することなるが、誰からも好まれる心優しい彼は、調査を行うかたわら、いつしか悩み多き入居者たちの良き相談相手となっていく。舞台となった老人ホームの許可を得て、スパイとは明かさずに3カ月間撮影された。第17回ラテンビート映画祭や第33回東京国際映画祭では「老人スパイ」のタイトルで上映。第93回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞にノミネート。
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映画『83歳のやさしいスパイ』は、関西では、7月16日(金)より京都・烏丸の京都シネマ、7月23日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田、8月6日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
80~90歳の男性が条件という探偵事務所の求人…冷静に考えてみると、なんだか怪しそうな業務内容かと疑ってしまう。同時に、そんな条件なんて滅多にないので、まだまだ元気だと思えるなら、即応募したい求人である。だからといって、誰しもが採用されるわけではない。”勤務先”である老人ホームに馴染んで、本来の業務である内定調査を最後までやり遂げられる人物であるか見極める必要がある。不安がありながらも、セルヒオなら業務を遂行できると判断した探偵事務所のロムロにもインタビューしてみたくなった。
そして、採用されたセルヒオ、電子機器の使い方等は不慣れであっても、老人ホームで暮らす同世代とのコミュニケーションや振る舞いは申し分ない出来栄え。周囲の人物に近づき過ぎず遠過ぎず、適度な距離を保っていた。勿論、スパイとしての本分を意識して、調査対象の人物等にもしっかりと近づいていく。一歩間違えれば不審者扱いとなり老人ホームから追い出されかねない。だが、83歳であるが故、これまで様々な人生権を積んだことから表れる素の表情からセルヒオの優しさが感じられ、観客も親しみをもって観ていられる。
本作は、ドキュメンタリーでありながら、ふと気づけば良く出来た劇映画を観ているような感覚になってしまう。ユルいテンポのスパイ映画を観ているようであり、老人介護をテーマにしたヒューマンドラマの様相を成している。通常、老人ホームにカメラが入ることは日本でも難しいこと。本作では、施設の全面協力を得て、撮影2週間前から現地に入り、まずは仲間として過ごしたうえで入居者さんらにカメラを意識させない状況を作り出し、自然な表情を映し出している。だからこそ、彼らの本音や施設の実情を伝えることが出来た。最終的に、探偵事務所が望んだ結果を得られなかったとしても、老人ホーム等における介護の問題もやわらかく挙げながら、セルヒオが下した判断について大いに考えさせられる。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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