追い詰められた中で作ったのが『時をかける少女』だった…「細田守の原点/展」メディア内覧会イベントで細田守監督を招いたトークショー開催!
Ⓒ細田守の原点/展 撮影:浅野優香(Elenish)
アニメーション映画『時をかける少女』の公開20周年を記念し、アニメーション映画監督の細田守さんの映像世界を体感する展覧会「細田守の原点/展」が、10月28日(水)より大阪・梅田のグランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボで開催される。10月27日(火)には、メディア内覧会イベントが開催され、細田守監督を招いたトークショーが開催された。
展覧会「細田守の原点/展」では、『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』を中心に、絵コンテ、レイアウト、原画、美術ボードなどの制作資料を過去最大規模で展示。細田監督の原点とも言える作品群を新たな視点で振り返り、その映像表現や作家性に迫る内容となっている。また、アニメーションや映画、絵画などから受けた影響にも目を向け、細田監督独自の映像演出や作家性を紐解き、最新作『果てしなきスカーレット』へとつながる創作の軌跡にも迫る展示だ。

今回、メディア内覧会イベントが開催され、細田守監督を招いたトークショーを実施した。すでに東京での開催を終えている本展覧会だが、『時をかける少女』劇場公開当時に鑑賞した世代だけでなく、若い世代の来場者も多く「大学生や20代の方、高校生の方もいらっしゃいましたが、そういった方がほとんど」と監督自身も驚くばかり。展覧会に来たお客さんを見ながら「私たちの作品を支持して、楽しんで見てくださってることが直に分かりました。その出来事に僕自身が影響を受けるんですよね。 こういう人たちが僕らの作品も好きでいてくれるんだ、と思うと、そこにいらっしゃった方をイメージして映画ができないかな」と想像は膨らむばかりだ。また、『サマーウォーズ』のヒロインである篠原夏希を演じた桜庭ななみさん(現在は、宮内ひとみさん)や吉岡里帆さんも来場しており、俳優やモデルの方も沢山来場したことにも驚いていた。また、現在30~40代の来場者からは「学生の頃に作品を観て影響を受けて、今の活動をしているんですよ」と聞くことも多く「小さい頃に影響を受けた人が今すごい大きな存在になっているのを見ると、親戚の子の成長を見るような喜びがあって楽しいですね」と喜んでいる。

作品の制作工程を見られる展示内容について「タイトルが”原点”というぐらいなので、自分自身の若い時、学生時代の作品を見せなきゃいけない羽目になった。特に、15歳の時に1人で紙に描いた1分間のアニメーションをカメラで撮っているのを今回展示しなければならない。 めちゃくちゃ恥ずかしい」と照れ笑いを見せながらも「若い人も、自分でやってみようかな、と思うのなら、皆さんに見ていただこう」と気持ちを切り替え、展覧会では『one side war』という作品を上映している。
会場には、画面の構図やキャラクターの動き、カメラワーク、セリフ、効果音、時間などをイラストと文字でまとめた絵コンテが数多く展示されており、1つ1つを丁寧に見ているお客さんの様子を見ながら「こうやって映画ができているのか、こうやってスタッフの方とコミュニケーションを取りながら作っているのか、ということを若い方に見てもらうことが、大きな刺激だったみたいですね。中間の素材ですから流し見しちゃうのかな、と思ったら、かなりじっくりとゆっくり見てくださった。デジタルでの制作が主流となる中で、スタッフの皆と協力しながらやっていく姿が新鮮に映ったんじゃないかな」と受けとめていた。なお、スタッフへの指示には”何卒”という言葉もよく用いられており「”何卒”を用いる時は、最上級の言葉遣い。皆それぞれの仕事に活かせるようなことがあるのかもしれない」と提案する。

近年の作品の原点ともいえる内容を展示しているが、監督自身は、自らが手掛けたものを振り返らないタイプで「作り終えたら直ぐにその作品のことを忘れて、新しい作品を作ろう、という風にして、特にこの20年ぐらいずっとやってきたんです」と打ち明けながら「だけど、こういう”原点”という機会を得て、自分でも振り返ってみると、20年前に作った『時かけ』、17年前に作った『サマーウォーズ』、14年前に作った『おおかみこども』は、それぞれの段階で出来ることを一生懸命やっていたんだな、と垣間見ると、よくやっているな、と思いますね。振り返ることによって、意外と昔から今まで変わっていないな。変えようとしても変えられない。 自分の好きなものも含めて残っている。こういうものを自分自身が大事にしているんだな、と振り返ってみる不思議な体験でした」と思い返していた。
メインビジュアルに描かれた入道雲について、細田監督は「レイアウトが簡単だから」と冗談交じりに語りつつ「次第に象徴的な存在になっていった。何度も出すので、皆さんからも聞かれて、自分でも、なんで出しているんだろう、と思った」と告白。「僕は、夏の映画が多いんですけど、主人公が夏の間に成長することと、入道雲が大きく成長していき、青空の高いところまで伸びていく清々しさを描いている」と表現し、気恥ずかしそうになりながらも「自分自身が子供の頃、富山は日本海側なので、入道雲が発生しやすいんですよね。雲が立派なんです。例えば、舞台が東京なのに、雲だけは日本海側の雲になっている。それは、そちらの方が立派だし、見上げるぐらいの雲を、若い人が見上げて、遠くに行きたい気持ちを表現できたらいいな、と思って描いている。そういう意味では象徴的ではありますよね」と話す。

小学校卒業前の文集も展示され、その中では「アニメーション監督になりたい」と書いており「その前年(1979年)に『銀河鉄道999』というワクワクする映画、その冬に、『ルパン三世 カリオストロの城』という非常にワクワクする映画があり、その2本を短い期間で観ると、アニメを作りたくてしょうがない。そういった作り手に憧れたことをそのまま文集に書いちゃったんです。だけど、本当に自分自身で出来る、というところまで辿り着くと思わなかった」と打ち明ける。なお、大阪会場から展示しているものとして『おおかみこどもの雨と雪』のプロットを挙げ「僕が書いた、最初に物語を思いついた時のプロットが展示されました。吉祥寺の井の頭公園のスターバックスで3時間ぐらいで書いたものなんですね。 A4で7枚ぐらいの短いストーリーなんですけど、それを振り返ると、ほとんど映画の内容そのまんまになっている。3時間で書いた、というと簡単に書いたな、と思うんですが、 その前にすごく長く苦労して、沢山考えてもできない、と言っていたんですけど、ある瞬間にバッと思いついて、短時間で勢いをつけて書いたものが映画になった」というエピソードを明かし「そういったことが新しく展示されています。映画はこういう風にして出来る、ということの一端を感じていただけると思うので、ぜひ楽しんでもらえたら」とオススメしていく。
原点を辿りながら、苦労したことも振り返っており「今でこそ、うまくいった作品ですね、と言われるんですけど、それを作るまでは、もう映画ができないんじゃないか、という時期だったんですよね。 それまで準備していた映画が、途中で中止になり、できなくなった。それで、自分には、この映画を作るチャンスはないんじゃないか、と思ってもがいている時、それでも一緒にやろうか、と言ってくれるスタジオの方がいて、作ることができた。 だから、追い詰められた中で作ったのが『時をかける少女』だったんです」と改めて話した。当初は6館での公開だったが、その後14館に増え、最終的には100館以上にもなり「自分の人生の中で、映画が出来て良かった」と当時の心境を振り返っていく。この出来事は不思議でもあり「ダメだと思っても、観てくださった方の後押しや、応援してくださる方がいて広げてくれて、面白がってくれるんだな、と思うと、皆が1本の映画を共有していく時の広がりの不思議さを同時に感じて、やりがいがあるんだな、と思った」と当時を思い出していた。また、自らの人生を思い返しながら「色々と失敗も多い人生です。色々なことがある。 でも、そういう中で、自分の人生や、制作を一緒にしている仲間から学んだこと、先輩から学んだことが映画として表現するものを待っている、という点では、人生とリンクしているかもしれない。僕は経験に影響されやすいタイプなので、様々な人との出会い等が作品に繋がっていくことがあるな」と顧みていた。最後に、今回の大阪会場について「駅から歩いて10分もかからない賑やかな場所で展覧会ができるのは凄い光栄です。来やすいところですし、興味を持たれたら、是非お気軽に遊びに来ていただければいいな」と期待を込め、トークショーを締め括った。
展覧会「細田守の原点/展」は、10月28日(水)より大阪・梅田のグランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボで開催。
- キネ坊主
- 映画ライター
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