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ソーシャルメディア上で起こっている、人に対する言葉の暴力を具現化したらどうなるだろうか…『インコンプリート・チェアーズ』宇賀那健一監督に聞く!

2026年1月20日

椅子職人の顔を持つ殺人鬼が、一脚の人間椅子を完成させるため、材料を求めて工具で人を殺害していく『インコンプリート・チェアーズ』が1月23日(金)より全国の劇場で公開。今回、宇賀那健一監督にインタビューを行った。

 

映画『インコンプリート・チェアーズ』は、『悪魔がはらわたでいけにえで私』『ザ・ゲスイドウズ』の宇賀那健一監督が、椅子職人が人体を素材にした人間椅子をつくるため次々と殺人を犯していく姿を、容赦ない残虐描写で描いたスラッシャー映画。才気あふれる椅子職人である九条新介のSNSに掲載されている作品はどれも洗練されており、椅子業界の人々からの問い合わせが絶えない。そんな彼には、恐ろしい裏の顔があった。彼は作品に魅せられて連絡してきた人たちを工房へと招き入れ、工具で容赦なく殺害して椅子の“素材”を集めているのだった。『ゴーストキラー』『ザ・ゲスイドウズ』の一ノ瀬竜さんが主演を務め、椅子職人とシリアルキラーという二つの顔を持つ男である九条新介を怪演。椅子バイヤーの加藤夏子を元AKB48の大島涼花さん、加藤が通うバーのオーナーである内田正樹を『静かなるドン』シリーズの藤井アキトさんが演じ、『ザ・カース』の海津雪乃、『ヤクザと家族 The Family』の二ノ宮隆太郎さん、俳優としても活躍する元テコンドー選手の大谷主水さん、「仮面ライダーガッチャード」の藤林泰也さん、シンガーソングライターで俳優のYUさんが共演。ベルギーのロックデュオであるPornographie Exclusiveが楽曲を手がけた。

 

これまでの作品は、すべて自らの企画・脚本を貫いてきた宇賀那監督。今回、深井戸睡睡さんの脚本を映画化する依頼があり、実際に読んでみると「ホントにめちゃくちゃ完成された脚本で、 凄くおもしろい」と気に入った。だが「自分なりのテイストは絶対に入れていきたい」と要望。当初、主人公はシリアルキラーのテイラー(仕立て屋)、という設定で、『アメリカン・サイコ』に近いイメージの作品であったが「これをもっと違う設定に…そして、殺した人間を使って何か作る作品にしたい」と検討すると共に「ソーシャルメディア上で起こっている、人に対する言葉の暴力を具現化したらどうなるだろうか」と実現したいことを挙げ、脚本執筆に参加し、リライトしていった。最初に「テイラーが人肉スーツを作る」と一瞬考えたが「テイラーではない方がいいんじゃないか。実際、コミカルになり過ぎるし、完成した時のビジュアルもおもしろくならないんじゃないかな」と推察。そこで、他の案について深井戸さんと話しながら15個程度を挙げてもらった中で、”椅子”をピックアップ。「椅子は、出来上がったビジュアルがおもしろそうだな。描かれる物語としても良いし、お客さんがイメージするものとしても良い」と想像する共に「劇場のお客さん達も、椅子に座って観ている状況が異常だ」と気づいた。

 

キャスティングにあたり、主役の九条新介を演じた一ノ瀬竜さんとは、以前にワークショップでお会いしており、当時から「おもしろい方だな」と感じ、まずは、『ザ・ゲスイドウズ』でワンシーンだけ出演をオファーした。そこでは、嫌な感じがする役でありながら、コミカルなパートを演じてもらっており、「良い意味で、知性がある。様々なことを考えているんだろうな、と思わせる部分がある。同時に、何を考えているのかわからない怖さもあり、両面の魅力を備えているな」と実感。「この感覚を何らかの形で表現できないだろうか」と考えていた中で、本作の依頼を受け「プロデューサーの鈴木祐介さんから、R-18で製作してもいい”と言われていたので、 これは一ノ瀬さんしかいない」と確信し、オファーした。脚本を呼んだ一ノ瀬さんには、作品の内容をおもしろがってもらっており「なかなかそういう役を演じることもないし、日常で経験することはない。役者としても、ここまでの役を演じることはない」と受けとめており「 この役へのオファーをおもしろがってくれていた。このために1年程度をかけて肉体改造してくれた。準備万端で挑んでくれた」と印象に残っている。大島涼花さんもプへ参加してもらったことがあり「彼女の演技には、ブレない強さがあるな」と察した。今作に登場するキャラクターは、ロジックが破綻している人達ばかりであり、笑わせることに注力してしまうと映画破綻してしまうことを考慮して「演出も含め、妙な邪念が入ってしまうことで、怖さや笑いを強調した演技が作品のおもしろさを半減させてしまう。大島さんの安定した演技にある地力のような強さは絶対的に必要だな」と感じ、オファーした。監督業だけでなく俳優業もしている二ノ宮隆太郎さんとは、初期の『魅力の人間』や『枝葉のこと』の頃から舞台挨拶によく登壇していた間柄。「自分が監督する作品で、役者としても一緒に仕事が出来たらな」と願っていた中で、今作で実現した。YUさんとは『みーんな、宇宙人。』への出演が接点で、今作にも出演をお願いした。本作において、九条新介が対峙する人間は一言で言い表せるキャラクターに設定しており、分かりやすさを体現でき、宇賀那監督が実現した濃いことをしてもらえる関係性がある俳優達を中心に選んだ。

 

撮影は、東京の繁華街でも行っている。これまでに『魔法少年☆ワイルドバージン』『転がるビー玉』でも撮っているが、今作では血みどろの状態であり、多少なりとも警戒したようだ。だが、東京ではあちこちで撮影が行われていることから、誰にも見向きもされず。とはいえ、ワンテイクでOKを出したかったことから、監督自身も緊張したようだ。そして、殺害シーンは、タワーマンションの一室で撮影している。ホラー映画の撮影について「どうしても田舎での撮影に逃げてしまう。結局、画が同じようになってしまいがち」と苦慮しており「血しぶきは、対象物が存在しないと映えない。都会で行われている惨劇を上手く表現できないか」と検討するなかで、他ではあまり観たことがない画作りに至った。現場では、血しぶき対策を目的とした養生をしっかり施した上で撮影し、素材を確認した後の撤収もあった中で、7日間という短期間で撮り切っている。いきなり本番に臨まず、入念なテストも含めて繰り返しながら撮影を行っており、1人の殺害シーンを撮る度に血まみれになりながらの大変な日々だった。また、“人間椅子”の制作については「実際に座れる強度にしたい」「実際に殺していた人を部品として使いたい」といったオーダーを造形部に依頼したことから大変だったようだが「本当に良い椅子を作っていただいた」と大いに感謝している。クランクアップ後、編集作業を進めていく中でも方向性に自由度があった中で、Pornographie Exclusiveによる神々しいテイストを放つ音楽が作品にしっかりとハマった瞬間に「この映画の方向性が見えたな」と確信できた。

 

完成した本作について試写を開催した際には「皆が辛そうな顔をして出てきたな」と感じ取った宇賀那監督。その後、演出部の3人と打ち上げをしていく中で、1つ1つの出来事を思い返し「脚本のココをこんな風に変えたのが良かったよね」「ココの演出をこんな風にしたのが良かったよね」と言ってもらったり、「演出部がこんな風にやってくれたから助かった」と気づいたことを伝えたりしながら「準備と撤収だけでも時間がかかっていた作品なので、皆で助け合いながら、本当に血と涙の結晶のような作品だったね」と感慨深げに語り合ったようだ。

 

映画『インコンプリート・チェアーズ』は、1月23日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のT・ジョイ梅田、京都・九条のT・ジョイ京都、神戸・岩屋の109シネマズHAT神戸で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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