女を愛することを恐れる一方で愛されたい願望をこじらせる小説家の物語『星と月は天の穴』がいよいよ劇場公開!
©2025「星と月は天の穴」製作委員会
妻に逃げられた過去を引きずる小説家が、自身を投影した恋愛小説を書いては自問自答を繰り返していく中で、偶然出会った女子大生に心を揺さぶられる『星と月は天の穴』が12月19日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『星と月は天の穴』は、過去の恋愛経験から女を愛することを恐れながらも愛されたい願望をこじらせる40代の小説家の滑稽で切ない愛の行方を、エロティシズムとペーソスを織り交ぜながら描き出す。1969年、妻に逃げられ独身のまま40代を迎えた小説家の矢添克二は、心に空いた穴を埋めるように娼婦の千枝子と体を交え、妻に捨てられた過去を引きずりながら日々をやり過ごしていた。その一方で、誰にも知られたくない自分の秘密にコンプレックスを抱えていることも、彼が恋愛に尻込みする一因となっていた。そんな矢添は、執筆中の恋愛小説の主人公に自分自身を投影して”精神的な愛の可能性”を自問するように探求することを日課にしている。しかしある日、画廊で出会った大学生の瀬川紀子と彼女の粗相をきっかけに奇妙な情事へと至ったことで、矢添の日常と心は揺れはじめる。
本作は、『ヴァイブレータ』『共喰い』等の脚本や『火口のふたり』等の監督作で知られる荒井晴彦さんが、『花腐し』でもタッグを組んだ綾野剛さんを主演に迎え、作家の吉行淳之介さんによる小説を映画化。大学生の紀子を咲耶さん、娼婦の千枝子を田中麗奈さんが演じ、柄本佑さん、岬あかりさん、MINAMOさん、宮下順子さんが共演している。

©2025「星と月は天の穴」製作委員会
映画『星と月は天の穴』は、12月19日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田や心斎橋のkino cinema 心斎橋や堺のMOVIX堺、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
冒頭から、大学のバリケード封鎖といった学生運動に関する話題が伝えられ、本作が1969年を舞台にしていることを気づかせてくれる。当時は、妻に逃げられ独身になってしまった作家はどれ程いただろうか。何時の時代においても、後世に伝えらえていく作家のプライベートはろくでもない、というのは変わらない一節なのだろうか、と考えさせられてしまう。本作の場合、吉行淳之介さんによる小説を荒井晴彦さんが脚本化していることで、荒井さんの作品ならではの独特な口調によるストーリーテリングに惹き込まれていく。だが、描かれているのは、独身になってしまった作家が、”精神的な愛の可能性”を探求する日々だ。肉体的な愛の世界を描写しながらも、その中に秘められた精神的な愛の世界は、観る者それぞれによって受けとめ方が違うだろうか。されど、主人公の矢添克二が遭遇していく出来事は客観的に見れば滑稽でありながらも、その中に秘められた世界観は、刹那的で儚げでもある。そんな風に思わせてくれるのは、荒井晴彦さんの作品ではお馴染みの下田逸郎さんによる音楽に加え、今回はさらに松井文さんによる主題歌による影響が大きいようにも感じられる。それ故に、『星と月は天の穴』というタイトルは秀逸であり、覆すような1969年の出来事も盛り込まれていることは伝えておきたい。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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