ダウン症の青年と中年男性が織りなすインド発コメディ『アハーン』がいよいよ劇場公開!

©Will Finds Way Films
大都市ムンバイで両親の愛情を受けて育ち、自由を願うダウン症の青年と、潔癖な性格が原因で妻に見限られた中年男性の奇妙な協力関係を描く『アハーン』が9月5日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『アハーン』は、ヒンディー語映画として初めてダウン症当時者が主演を務め、ムンバイを舞台にダウン症の青年アハーンの日常をストレートかつコミカルに描いたドラマ。大都市ムンバイで愛情深い両親と暮らすダウン症の青年アハーン。何不自由ない生活ながらも、周囲の目を気にする両親の“配慮”により家に縛りつけられた日々を過ごす彼は、「自立したい」「仕事を見つけたい」「素敵な女性と結婚したい」という思いを募らせていた。一方、中年男性オジーは気難しい性格と潔癖症のせいで妻アヌに見限られ、家にひとり取り残されてしまう。そんな折、アヌと親交のあるアハーンがオジーの家を訪れる。オジーは妻に会うためアハーンを利用することを思いつき、自由な外出を願うアハーンとの間に奇妙な協力関係が生まれる。
本作では、ムンバイ出身のニキル・ペールワーニー監督が長編初メガホンをとり、ダウン症当事者アブリ・ママジが主人公アハーン役で俳優デビューを果たした。日本では、医療・健康領域の書籍を中心に扱う社員2人の小さな出版社「生活の医療株式会社」が配給を担当。代表の秋元麦踏さんが国際線の機内上映にて本作を鑑賞して感銘を受け、日本での配給権を取得した。
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映画『アハーン』は、9月5日(金)より全国の劇場で公開。関西では、9月5日(金)より京都・烏丸の京都シネマ、9月20日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。

インドのムンバイで両親から大切に育てられ幸せに暮らしているダウン症の青年、アハーンがタイトルになっている本作。アハーンは、お母さんが作るブラウニーを配達しており、自身の存在意義を感じることが出来ていた。そんな彼が遭遇するのが、高級マンションに住み、株のトレーダーで成功していながらも、強迫的な潔癖症で妻には煙たがられている中年男性オジー。遂には、妻に出ていかれてしまったが、妻が作ったビリヤニを食べさせてもらっていることを知り、それを契機にどうにか妻に会おうとするのがおこがましい限りではあるのだが、オジーの様子を見ていると、決して憎めない存在であることが微笑ましい。配達する人間と受け取るだけの人間の関係であったはずだが、不思議な縁によって関係性を深めていくことが実に興味深いストーリーテリングだ。インド映画と言えば、歌って踊ることが欠かせないと思われている風潮があるが、古くは、サタジット・レイ監督作品のような芸術性と映像美が際立つ傑作ドラマな作品がいくつもあるのだ。本作を観ていると、タイのGDH559が配給していてもおかしくないような趣深い作品であるようにも感じる。なお、本作を日本で配給しているのは、医科・歯科・看護・介護などの専門書を中心に出版している社員2人のちいさな出版社、生活の医療社だ。飛行機に乗っていた時に偶然にも本作を観て配給にまで至ったとのこと。たしか、以前にも同様の経緯で日本での配給に至った作品がありましたね。外国の小さな映画を小規模ながらも配給することは大変であろうし、是非とも応援したい作品です。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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