任侠の家に生まれ、上方の歌舞伎役者の家に引き取られた男の50年に及ぶ一代記がつづられる『国宝』がいよいよ劇場公開!

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025 映画「国宝」製作委員会
抗争で父親を失った任侠一門の息子が、上方歌舞伎の名門当主に引き取られ、歌舞伎の世界で出会ったライバルの御曹司と成長していく『国宝』が6月6日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『国宝』は、任侠の家に生まれながら、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた男の激動の人生を描いた人間ドラマ。任侠の一門に生まれた喜久雄は15歳の時に抗争で父を亡くし、天涯孤独となってしまう。喜久雄の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主である花井半二郎は彼を引き取り、喜久雄は思いがけず歌舞伎の世界へ飛び込むことに。喜久雄は半二郎の跡取り息子である俊介と兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていく。そんなある日、事故で入院した半二郎が自身の代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、2人の運命は大きく揺るがされる。
本作では、李相日監督が『悪人』『怒り』に続いて吉田修一さんの小説を映画化。主人公の喜久雄を吉沢亮さん、喜久雄の生涯のライバルとなる俊介を横浜流星さん、喜久雄を引き取る歌舞伎役者の半二郎を渡辺謙さん、半二郎の妻である幸子を寺島しのぶさん、喜久雄の恋人である春江を高畑充希さんが演じた。脚本を『サマー・ウォーズ』の奥寺佐渡子さん、撮影をカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『アデル、ブルーは熱い色』を手がけたソフィアン・エル・ファニ、美術を『キル・ビル』の種田陽平さんが担当した。2025年の第78回カンヌ国際映画祭の監督週間部門に出品された。
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025 映画「国宝」製作委員会
映画『国宝』は、6月6日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や大阪ステーションシティシネマや難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や三条のMOVIX京都や九条のT・ジョイ京都、神戸・三宮のOSシネマズミント神戸等で公開。

今年公開される日本映画で、本作以上に素晴らしい作品はないかもしれない…と思わされてしまった。それほどに、とてつもない力を伴った作品が、この『国宝』である。壮絶なる人生を送った歌舞伎役者を描いた一世一代の物語である今作、畏れ多くも歌舞伎をしっかりと鑑賞したことはないのだが、それでも、歌舞伎という日本の伝統が持つ力を見せつけられてしまったように感じた。本作をきっかけにして、歌舞伎について本格的に鑑賞してみよう、と思う方もちらほらいるのではないか。私自身がそう思ってしまった。だが、冷静に考えてみれば、歌舞伎役者を演じているのは、俳優であり、その俳優の演技に魅了されてしまったのだ。1年半も書けて歌舞伎の修行をして、さらには、演じる役になり切った上で歌舞伎を演じている、と云うことを考えると、尋常じゃない演技力の賜物だとしか言いようがない。そして、この原作小説を執筆した吉田修一さんが3年もかけて歌舞伎の世界を研究した上で書き上げたというのだから、映像化された本作の凄まじさに畏れ入る次第だ。175分にも及ぶ大作である本作の魅力を語り出すとキリがないのだが、観客それぞれに印象に残るシーンがあることだろう。私自身、クライマックスの或るシーンに込められた意味や劇伴の音楽が相まったことによる凄まじさに震えて涙してしまった。その後、原摩利彦さんが手掛け、坂本美雨さんが作詞し、King Gnuの井口理さんが歌う主題歌「Luminance」が寄り添うように流れたことが救いのようにさえ感じられる。何度でも劇場で観たくなる作品だ。そして、今こそ歌舞伎を鑑賞したい。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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