かつて児童売春や人身売買が横行していた台湾で、娼婦として働く女性の現実を描いた『娼生』がいよいよ劇場公開!

©2023 Cao Cao Entertainment Ltd., Speeding Rocket Co., Ltd., Mazoo Digital Imaging Ltd. TAICCA. All Right Reserved
祖母の反対を押し切り、夢を追って家を出るが、騙されて娼婦として売られた姉と、姉が夢を叶えたと信じる弟が再会を果たす『娼生』が5月23日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『娼生』は、台湾で児童売春や人身売買が横行していた時代を背景に、娼館で働く人々の現実を描いた人間ドラマ。夢を捨て娼婦として生きる覚悟を決めた姉と、そんな姉がどこかで夢をかなえていると信じて探していた弟の再会と、彼らに待ち受ける運命を描いた。歌手になる夢をかなえるため、祖母の反対を無視して台北へ出たフォンだったが、騙されて娼婦として日本に売り飛ばされてしまう。数年後、台湾に戻った彼女は、年老いた祖母が認知症を患っていることを知る。罪悪感に苛まれたフォンは、家に戻らず娼婦の仕事を続け、ひそかに仕送りをして贖罪に励むことにする。一方、フォンの弟ユーミンは警察官となり、台北でフォンを探していた。いつか売れっ子歌手になった姉と会えると思っていたユーミンは、娼婦になった姉と再会する。
本作では、映画『呪葬』などに出演したジーン・カオがフォン役を体当たりで演じ、製作総指揮や主題歌も担当。監督は、これが初長編作品となるブルース・チウが務めた。
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映画『娼生』は、5月23日(金)より全国の劇場で公開。関西では、6月21日(土)より大阪・十三のシアターセブンや神戸・元町の元町映画館で公開。

台湾では1956年に台湾省娼妓管理法が認可され、政府は売春宿経営者と娼婦に許可証を発行していた。その後、1987年には、売春婦を支援するために台北市で開かれた華西街パレードが行われると共に、公娼廃止に関する論争が起こっていたりすることも事実である。すなわち、女性運動における「性解放」と「性批判」の立場が食い違っていることも鮮明化された。そして、1997年9月4日に台北市政府が公娼制の廃止と売春許可証の発行の停止を発表し、6日から売春の全面禁止に至っている。本作では、その移り変わっていく台湾において、”もぐり”として営業している場所で仕事を続ける姉と、彼女を探す弟の姿を描いていく。なお、この娼婦となった主人公は、自ら望んで娼婦となったわけではない。花蓮から家を出て台北で歌手になる夢を抱いていたにも関わらず、騙されてしまい娼婦となってしまった。その後、一度は抜け出したとしても、再び夢を目指すことはできず、場所を変えても同じような仕事に戻らざるを得ないことに、如何ともし難い気持ちになってしまう。そんな姉の実態を知ってしまった弟はなんともいたたまれない心持ちであっただろうか。とはいえ、そういった場所は、台湾の社会においては、良くも悪くも持ちつ持たれつの関係にある。その均衡を破ろうとした時に一体何が起こってしまうだろうか。この狭間の時代を描いた1つの作品に何を思うだろうか、じっくりと語り合ってみたい。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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