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装備の大切さが命に直結する、良いものをしっかり揃えるのが大事…『小屋番 KOYABAN~八ヶ岳に生きる~』永山由紀子さんと菊池哲男さんと笹倉孝昭さんを迎え舞台挨拶開催!

2025年3月29日

TBSテレビやTBS系列の各局の記者やディレクターたちが、歴史的事件やいま起きている出来事、市井の人々の日常を追い続け、記録し続け、熱い思いとともにドキュメンタリー映画として世の中に発信し続けるために立ち上げられたブランド「TBS DOCS」。「TBSドキュメンタリー映画祭」は、TBS DOCSが手がけた至極の作品を集めた映画祭。テレビやSNSでは伝えきれない事実や声なき心の声を発信し続ける本気のドキュメンタリー作品に出会える場として、2021年より開催し、今回で第5回を迎える。関西では、3月28日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田と京都・烏丸御池のアップリンク京都で開催。3月29日(土)には、テアトル梅田で『小屋番 KOYABAN~八ヶ岳に生きる~』が上映され、企画・プロデューサーである永山由紀子さん、山岳写真家の菊池哲男さん、山岳ガイドの笹倉孝昭さんを迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『小屋番 KOYABAN~八ヶ岳に生きる~』…

令和の日本とは思えないほど厳しく、不便な生活。
時に死にでくわす生活。だからこそ自由なのだ。
「自分にとって最後の逃げ場が山しかないなと思って…」ある小屋番の言葉だ。都会に疲れて山の仕事を選んだ。山小屋を営むもの、小屋番。このドキュメンタリーでは、「コヤガタケ」と呼ばれるほどに山小屋が多い八ヶ岳を、山岳写真家菊池哲男と巡る。コンビニもない、車もない、自然と向きあう小屋番の日常は「過酷」だ。それでもその「過酷」を選ぶ理由が山にあるという。丁寧に紡がれた美しい自然と人の姿と彼らの言葉は、忙しい現代社会に生きる私たちに優しく響く。

 

今回、上映後に本作の企画・プロデューサーである永山由紀子さん、山岳写真家の菊池哲男さん、山岳ガイドの笹倉孝昭さんが登壇。シアター内には関西中から八ヶ岳のファンが集ったかのような雰囲気で満員御礼状態の中で舞台挨拶が繰り広げられた。

 

上映前には、関西のお客さんからの注目度を気にしていた永山さんだったが、実は、関西から八ヶ岳にいらっしゃる方が多いことを知り、安堵している。本作を手掛けるきっかけとして、深澤慎也監督と永山さんは、能登で共に震災ボランティアに行っており、お互いに知り合いで山が好きで登っている、TV番組制作仲間として仲良く話していたことが大きかった。帰路の車中、深澤さんから、YouTubeで山小屋を応援するチャンネルで映像を作っていることを聞き、実際に見せてもらうと、綺麗だったが、視聴者数が少なかったことを残念に思ってしまう。そこで、TBSドキュメンタリー映画祭の企画募集を受け「一緒にやってみようか」と意気投合。ちょうど1年前に最初の取材に取り掛かり、1年をかけて作り上げた。

 

 

まずは、地上波放送の番組として制作された後に今作を公開している。TV版は44分、映画は80分として制作しており、永山さんは「小屋の数が違う。最初は3件。でも、最初から映画を作ろうと思っていた。一番違うのは、菊池先生。ストーリーテラーとして八ヶ岳を案内していただく。44分の中では中途半端なことになってしまう。先生から”これは違うんじゃないか”と聞きまして…映画ではしっかりと出演していただいた」と説明。菊池さんとしては、番組の宣伝を関係者にお願いしていた経緯があり「番組の中身は非常に良く出来ていた。僕自身はドローンで遠くから撮られていたり、カメラを構えていたので顔が良く見えなかったり…」等と漏らしながら「もう少し僕を映してもらわないと、立場がないんだけど…」と指摘。そこで、番組放送後、年末年始に冬のシーンを撮ってもらい、インタビューシーンも入れてもらっている。なお、永山さんも実際に八ヶ岳を登っており「20歳も違う深澤監督と一緒に、60歳の体に鞭打ってなるべく多くの山にほぼ登っています。大晦日、雪山が初めてだったので、冬用の装備を購入して山に向かいました」と明かす。作品を観た笹倉さんは、最後のエピソードを挙げ「赤岳鉱泉(にある行者小屋の四代目当主である)柳沢太貴さんのところには、今シーズンだけでも12月から3月までの間に10泊以上しているんですね。あとは、黒百合ヒュッテさんですね。その2つの小屋が私が仕事で使うのが一番多い。太貴さんとはよく話しているので、一番印象に残っている」と話すと共に「僕が泊まったことがない小屋も、今回は映像で見ることが出来たので、ここに行ってみたいなぁ」と改めて認識した。

 

八ヶ岳の魅力について、笹倉さんは「八ヶ岳は山が全体的にコンパクトなんですね。北と南で表情が大きく分かれています。北は苔と黒い森に象徴される優しい山です。南側はゴツゴツした岩山。物凄く極端な特徴があります」と挙げる。また、沢山ある小屋について「小屋が稜線にもあって麓にもあります。色々ありますから、様々なスタイルで体力に応じて山に登ることが出来る。実は、小屋があるおかげで、様々な人が山に行ける魅力もあるんです」と話す。そして「八ヶ岳はもっともっと多くの人にも知ってもらいたいな。どうしても、山といえば中部山岳の槍穂高、剣岳、立山という印象があるんですけど、八ヶ岳の魅力は多くの人にも知ってもらいたいな」と訴求する。お薦めについて尋ねられると「夏山ですかね。ひとまず、黒百合ヒュッテまでは、凄く良い森の中を歩くので。黒百合ヒュッテに泊まって天気の様子を見ながら天狗岳に行って、また戻ってくる」と八ヶ岳入門コースを紹介していく。そこに、菊池さんは、できたての揚げパンが名物の北八ヶ岳の山小屋である高見石小屋も挙げていった。

 

 

ドローンによって撮影された美しい映像がたっぷりと収録されている本作。深澤監督が20Kg強のリュックの中にほぼほぼ機材を詰め込んでおり、天気や風を気にしながら、ドローンを飛ばして撮影しており、永山さんは「彼のセンスの良さは勿論素晴らしい」と讃えながらも「実は、本当に大変。冬場は極寒なので、インナーとアウターの手袋をしているけれども、カメラのワークは繊細なので、アウターを外す。インナーだけでもしっかりと操縦が出来ない時がある。そうすると、素の手で操作する時に凍えているんです。私が横で見守るんだけど何もしてあげられない。-17~20度のところなので、何秒間かそのままでいると凍傷になっちゃうよ、と皆さんから言われている。この合間に撮らないといけないから、凍えながら監督は撮っておりました」と伝えた。また、菊池さんがほぼ寝ていないことを明かし「夜中にゴソゴソしていて、2時間おきに外に出て、そのまま帰ってこない。それは、私達も付き合わないといけないの?いつ寝てるのか分からない。だからこそ、山の神様があぁいう瞬間を切り取らせて下さっているんだろうなぁ」と受けとめていた。

 

編集作業について、当初、永山さんは「3つの山小屋でいこうかな」と思っていたが、最初に菊池さんに取材し「八ヶ岳は”小屋ヶ岳”と云われる。小屋が多いこと、そこに特色がある人達がいることを教えていただいたので、私の中では、これだな」と直感。「八ヶ岳を一人格として描いたらどうかな」と思い「特色があると共に、自然の問題、デジタルデトックスという生き方の問題、ヘリの問題など様々な問題をうまく並べられないかな。その合間に閑話休題的に星空を入れられないかな」と構想していった。とはいえ「自然と、北から始まって南に行って季節と共に北に戻っている」といった流れも加味しながら仕上げている。

 

 

また、登山に対して啓蒙する要素も本作には盛り込んでおり、笹倉さんは「山は綺麗だし、多くの人に訪れてもらいたい」という思いがありながらも「事故が起きているのも現実なんです。実際、20時頃に本来泊まるべき人が山に行って戻って来ないとなると、小屋の方が出動することも現実には稀にあるんです。小屋の方がリスクを背負う場面も実際にはある。事故や怪我、遭難が現実に起きている。綺麗で良い面もあるんですけども、リスクがあって山は恐いんだよ、と合わせ持っているのが山だと思う。山にも様々な面があるので、良い面綺や麗面だけじゃなく、怖い面も意識しながら取り組んで頂けるといいのかな」と提案。菊池さんも「基本的には、山は恐い、というのを忘れないでいるのが一番大事かな、と思っているので、怖いぐらいが大事。僕も長く山と付き合ってきましたから、何人も山仲間を失くしているので、やはり怖がりの人が生き残っているのかな」と感じており、自身の写真教室においても最初に「経験はお金で買いなさい。良いものを揃えなさい」と伝えており「装備が悪いと、ヒマラヤに行くような人でも耐えられない。装備の大切さが命に直結する。良いものをしっかり揃えるのは大事かな」と語る。永山さんも「エベレストに何度も行ったスキルのある人よりも、装備をちゃんとしている初心者の人の方が助かるよ、と菊池さんから教わりました。装備は凄く大事なんだな」と実感し、冬山の装備を購入したそうだ。

 

TBSドキュメンタリー映画祭2025」は、関西では、4月10日(木)まで大阪・梅田のテアトル梅田と京都・烏丸御池のアップリンク京都で開催。また、映画『小屋番 KOYABAN~八ヶ岳に生きる~』は、4月1日(火)15:55よりテアトル梅田、4月3日(木)14:10よりアップリンク京都、4月4日(金)12:15よりテアトル梅田、4月7日(月)13:55よりアップリンク京都、4月7日(月)14:00よりテアトル梅田、4月10日(木)13:45よりアップリンク京都でも公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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