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緊張感がありつつ馬鹿馬鹿しいすれ違いを安心しながら観てほしい…『札束と温泉』川上亮監督に聞く!

2023年7月5日

温泉宿を舞台に、修学旅行中の女子高校生がお金の入った鞄を見つけたことで事件に巻き込まれていく様を描く『札束と温泉』が7月7日(金)より関西の劇場でも公開。今回、川上亮監督にインタビューを行った。

 

映画『札束と温泉』は、『人狼ゲーム』シリーズの原作・脚本を手がけ、シリーズの8作目『人狼ゲーム デスゲームの運営人』では自らメガホンもとった川上亮さんの長編監督第2作。今作は、古風な温泉宿を舞台に、女子高生たちがいわくつきの札束を発見したことから起こる混乱を描いたクライムコメディだ。高校の修学旅行で訪れた温泉宿で女子高生たちが、ヤクザの愛人が持ち逃げした札束の詰まったバッグを発見する。金を取り戻すために現れた殺し屋や、ヤクザの愛人、担任の教師など、さまざまな人物の思惑が絡まり、混乱が広まっていく。主演は「ミスマガジン2018」グランプリで注目され、グラビアのほかドラマ「彼女、お借りします」や映画『グリーンバレット』などでも活躍する沢口愛華さん。そのほか小浜桃奈さん、糸瀬七葉さん、大熊杏優さん、佐藤京さん、星れいらさん、小越勇輝さんら若手俳優たちが共演した。

 

2020年のコロナ禍を迎えた当時、オンライン演劇のオファーを頂き脚本を書いていた川上さん。だが、状況が落ち着き企画自体が無くなってしまった。とはいえ、脚本を書き上げていたので「せっかくなら形にしよう」と本作の映像化に向けて動き出していく。そもそもは、とある大きなアイドルグループが劇場公演の代わりに演劇をやろうと立ち上がった企画だったので、ある程度の閉鎖空間で若い女性が沢山登場する物語を作ろうとしていた。ならば「修学旅行という設定で、ホテルよりも旅館の方が観ていて楽しいんじゃないか」と着想し、ロケーションと登場人物の設定が決定する。

 

ライトノベル作家でありゲームデザイナーでもある川上さんは、ガイ・リッチーやコーエン兄弟、『ユージュアル・サスペクツ』といった1990年代の映画からの影響を受けており、以前から本作のような群像劇で勘違いを重ねて混沌としていく物語を書いていたことがあり、今回、久方ぶりに執筆に至った。また、近年は、マーダーミステリーゲーム(ストーリー性がある人狼ゲーム)のシナリオをずっと手掛けており「5~10人の登場人物にそれぞれドラマがあり全員が容疑者。全員が探偵役で自分達の中に混ざっている真犯人を、手がかりを手に入れながら見つけていく。それぞれの動きを把握しながら組み立てていくミステリーゲームのシナリオをずっと書いていたので、今回のシナリオも作りやすかった」と話す。

 

元々はオンライン演劇の脚本だったこともあり「演劇は、お客さんにずっと舞台を見せている。オファーして頂いた会社はワンカットのオンライン演劇を作っていた。元々ワンカットで撮れて見せられる内容にしよう」と話していた。そこでワンカットで構成された映画を観るようになり「どれも面白かった。複数の場所において同時進行で複数の登場人物が様々なことをやっている物語を見せるにはワンカットが合っているんじゃないか。カットを切り換えながら見せるより、カメラの動きによってリアルタイムで見せていった方が、群像劇の良さを表現できる」と見出した。

 

キャスティングにあたり、主演の沢口愛華さんは製作プロダクションのプロデューサーが選んだ。彼女を取り巻く登場人物についてオーディションしており「若い役者を知らなかったので、オーディションで演技を見せて頂いて役に合う方を選ばせて頂いた」と明かす。全体的にゆるいキャラクター達を演じる役者が揃っており「初期のクエンティン・タランティーノ作品が大好きで、『レザボアドックス』の序盤では無駄話が永遠に続く。そのテンポで今回作っていた。本当に怖い殺し屋にする気がなく、緊張感がありつつ馬鹿馬鹿しいすれ違いを安心しながら観て頂きたいな。結果的にゆるいキャラクター達になっています」と説く。

 

撮影は、最初にロケハンし即決した大分県別府市の旅館で行われた。その旅館の構造に合わせて脚本の修正まで行っており「修正にあたり、旅館の方も協力して下さった。事前に見取り図を送って下さったり、部屋の細かい箇所をスマホ動画で直ぐに送って下さったり。旅館の協力のおかげで導線の組み方がスムーズにできました」と感謝している。クランクイン前には、東京で本読みを3日間、動きの確認を3日間実施しており「低予算映画の準備としてはかなり入念に行った。ただもっと出来たかもなぁ」と漏らす。現場では経験豊富で優秀な今井哲郎さんが撮影を担っており「彼に任せておけば大丈夫。脚本段階でキャラクターの動きを作っていますが、カメラワークは今井さんが現場で組み立てていき、スムーズにいきました」と信頼している。とはいえ、ほぼワンカットで構成された作品であるため「1度カメラを回し始めてからカットがかかるまで長いので、些細なミスはリテイクを出せないのが辛かった。やり直しするなら10分前から…となる。やってみたが、一連の演技が長いので、役者も疲労が蓄積されていく。回を重ねると悪くなってしまう。台詞の間に関する問題も生じてしまうと編集できない」とワンカットであるからこその宿命を実感した。

 

編集段階となり「どの画を使うかほぼ決まってしまっている。複数のテイクがある中で、各テイクが長いために使えるテイクは明らか」と認識し「カットとカットの間をスムーズにつなぐ編集が大変だった」と振り返る。リテイクを出せないが故に「たとえば殴られた瞬間に上手く反応できていなくても、そのテイクが一番良いので、それを使うためにどうすべきか」と判断してきた。なお、本作には敢えて早送りしている箇所が幾らかあり「廊下の移動では、台詞無しで歩くだけ。ワンカット作品なので編集で切るわけにいかず、かといってそのままでは退屈になるので、作品のテンポのために早送りしている」と解説する。

 

完成した本作は出演者に観てもらっており「みんなが内容を知っているはずなのに、要所で笑ってくれたのが、何より嬉しかった。シナリオを知っているし自分達で何度も演じたのに、笑いが起きたのは、コメディ作品として、それ以上の嬉しいことはない」と感慨深い。現在、新たな脚本を1つ書き上げており「次は、青春コメディを3本程度やってみたい」と意気込んでおり「僕自身、お笑いが好きで、芸人さんのLIVEを観にいくのが好きなんです。芸人さんについて取り上げ、作中のネタが笑えるような”お笑い映画”を作れたらおもしろいな」と創作意欲は高まっていくばかりだ。

 

映画『札束と温泉』は、関西では7月7日(金)より大阪・心斎橋のシネマート心斎橋や京都・九条の京都みなみ会館で公開。なお、7月8日(土)には、シネマート心斎橋と京都みなみ会館に小浜桃奈さんと佐藤京さんと川上亮監督を迎え舞台挨拶開催予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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