日本では２０２１年５月に公開されたフランス映画『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』を、日本人向けのエンターテインメント作品として脚色しリメイクした本作。高校ではなく大学での出会いに変更し、SF作家志望の主人公であることは変わらず、ピアニスト志望ではなくシンガー志望となったヒロインが出会い、結婚して生活を営んでいくまでのたたみかけるような冒頭の流れはそのままに、しがない中学の国語教師ではなく出版社社員になってしまった主人公と、人気ピアニストではなく天才シンガーになったヒロインがどのようにして再び出会い恋に落ちていくか…国が変わるだけで、このようなアレンジにしてストーリーテリングが出来ていることは実に興味深い。

これまでに歩んできた人生が一夜にして一変、帳消しにされた世界に対峙した時、向き合うことが出来るだろうか。絶望してしまうか、或いは、再起できると思えるか、簡単には受け入れられない。苦労を重ねながらも順風満帆な人生を歩んでいた中で、ある日目覚めると、妻と立場が真逆になった世界に遭遇してしまったら、どれだけのショックがあるだろうか。どうすれば、元々過ごしていた世界に戻ることができるか。いや、今ある状況を受け入れ順応すればいいだろうか。これは、俳優がどのように演じるか、によっても大きく印象が変わってくる作品である。中島健人さんが演じることで伝わる若々しさもさることながら、シンガーソングライターのmiletさんが映画初主演にて違和感なく演じていることにも驚かされる。そして、脇に構える桐谷健太さんや眞島秀和さんらの演技も万全の状態だ。立場が入れ替わった２人が最終的にどのようなエンディングを迎えるのか、フランス版との違いを楽しみながら鑑賞してはいかがでしょうか。