Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

  • facebook

、ギリシャのとある家を舞台にした“支配と服従、自我の目覚め”にまつわる物語『籠の中の乙女 4Kレストア版』がいよいよ劇場公開!

2025年1月21日

©XXIV All rights reserved

 

外界から隔絶された家の中で、奇妙なルールで教育された子供たちが迎える青年期を描く『籠の中の乙女 4Kレストア版』が1月24日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『籠の中の乙女 4Kレストア版』は、妄執にとりつかれた両親と純真無垢な子どもたちを主人公に、極限の人間心理を描く。ギリシャ郊外に暮らすある裕福な一家は、外の汚らわしい世界から守るためと、子どもたちを家の中から一歩も出さずに育ててきた。厳格で奇妙なルールの下、子どもたちは何も知らずに成長していくが、ある日、年頃の長男のために父親が外の世界からクリスティーヌという女性を連れてきたことから、家庭の中に思わぬ波紋が広がっていく。

 

本作は、『哀れなるものたち』『女王陛下のお気に入り』等で知られるギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモスが、2009年に手がけた長編第3作。2009年の第62回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを受賞し、第83回アカデミー賞ではギリシャ映画として史上5本目となる外国映画賞にノミネートされた。日本では2012年に劇場公開され、ランティモス監督作の劇場初公開作品となった(長編1、2作目は日本では劇場未公開)。

 

©XXIV All rights reserved

 

映画『籠の中の乙女 4Kレストア版』は、1月24日(金)より全国の劇場で公開。関西では、1月24日(金)より京都・烏丸の京都シネマや兵庫・尼崎のMOVIXあまがさき、1月25日(土)より神戸・元町の元町映画館、2月1日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場、2月5日(水)より京都・舞鶴のCine Grullaで公開。

2024年は間違いなくヨルゴス・ランティモス監督の年だったと思う。人造人間ベラ・バクスターの驚天動地な冒険を描いた『哀れなるものたち』や3つの奇妙な物語を通して支配と束縛に依存する人々の悲喜交々を描いた『憐れみの3章』が日本で公開され、彼の世界観である不条理なシチュエーションと奇妙奇天烈な人間模様に多くの観客が魅了された。

 

そして、今度は彼の初期作である『籠の中の乙女』がリバイバル上映される。日本では2012年に劇場公開された本作。第83回アカデミー賞の外国語映画賞(現在の国際長編映画賞)にもノミネートされていたので、目の肥えた映画ファンは既に観ている人もいるかもしれないが、初めて観るという人も多いのではないだろうか。

 

まず、思ったのが昔から作家性が全然ブレてないなということ。間違った単語の意味を教えるテープ、痛々しい遊びに興じる子供たち、目隠しされてどこかに連れて行かれる女、息子に連れてきた女をあてがう父親。不可解なシチュエーションにいきなり放り込み、観る者を混乱させる。そして、この家族のおぞましさを少しずつ理解していく。

 

妄執に囚われた父親の支配は想像を絶するものだった。子供たちは社会から隔絶され、犬のように忠実で無垢な存在に洗脳されている。まさに支配と束縛に依存する者たちの奇妙な物語。しかし、決して絵空事ではなく、人間の真理をカリカチュアしたものに過ぎない。たとえ、著しく誰かの尊厳を奪うようなことであっても、人はなぜか支配されることを求め、誰かに依存してしまう。憐れみに満ちた3つの物語と同じだ。

 

一方、見た目とは不釣り合いなぐらい無垢に育った子供たちは、無邪気にバイオレンスやエロスを楽しみながら、外の世界へ興味を抱き始める。それが父親の支配を振り払ってしまうことになろうとも知らずに。無垢なる者が世界の矛盾を突いてしまう。まるで人造人間ベラ・バクスターのように。

 

他にも『ロブスター』や『聖なる鹿殺し』『女王陛下のお気に入り』などこれまでの監督作に共通するテーマやモチーフが感じられる。もし本作をまだ観たことがないという人は、彼の原点を劇場で味わうというこのチャンスを逃さないでほしい。

fromマリオン

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

Popular Posts