耳が聞こえない母とその息子の物語を描く『ぼくが生きてる、ふたつの世界』がいよいよ劇場公開!
©五十嵐大/幻冬舎 ©2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会
耳の不自由な両親のもとで育った、コーダの青年の成長に伴う葛藤と親子の絆を描く『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が9月20日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』…
宮城県の小さな港町。耳のきこえない両親のもとで愛情を受けて育った五十嵐大にとって、幼い頃は母の“通訳”をすることもふつうの日常だった。しかし成長するとともに、周囲から特別視されることに戸惑いやいら立ちを感じるようになり、母の明るさすら疎ましくなっていく。複雑な心情を持て余したまま20歳になった大は逃げるように上京し、誰も自分の生い立ちを知らない大都会でアルバイト生活を始めるが…
本作では、『そこのみにて光輝く』『きみはいい子』等で国内外から高く評価されてきた呉美保監督が9年ぶりに長編映画のメガホンをとり、作家・エッセイストの五十嵐大さんによる自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」を映画化。「キングダム」シリーズの吉沢亮さんが主演を務め、きこえない母ときこえる息子が織りなす物語を繊細なタッチで描く。母役の忍足亜希子さんや父役の今井彰人さんをはじめ、ろう者の登場人物にはすべてろう者の俳優を起用。『正欲』の港岳彦さんが脚本を手がけた。
©五十嵐大/幻冬舎 ©2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会
映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は、9月20日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや難波のなんばパークスシネマ、京都・三条のMOVIX京都、神戸・三宮のkino cinema 神戸国際等で公開。
日本でも『Coda コーダ あいのうた』によって、耳が聞こえない、または聞こえにくい親のもとで育つきこえる子どものことをコーダ(CODA:Children of Deaf Adults)と云うことが知られてきた。とはいえ、日本国内だけでも、約22,000人もいるという推計がある。だが、それはCODAの当事者にとっては、周囲には同じような境遇の子どもを簡単には見つけられず、ひとりぼっちのような気分になってしまう。本作の主人公である五十嵐大さんも、幼き頃から両親と会話するためにも、たどたどしくも手話を覚えていった。周りの子どもとは違うことに気づきながらも、両親の通訳を担うためにも、素直な子どもとして成長していく姿は微笑ましかった。だが、思春期を迎える共に反抗心を少なからず抱いてしまうのは仕方がないのだろうか。そこからは、思うようにいかない人生を送ることになり、両親のせいにしたくなる気持ちもあった。故郷を離れ東京で自分の力で生活していく中で、様々な出会いがあり、両親に育てられた恩恵に気づかされていく。本作は、『Coda コーダ あいのうた』のような優れた才能を持った主人公の物語ではなく、あくまでCODAとして育っただけの普通の主人公の姿を描いた作品だ。吉沢亮さんが五十嵐さんを等身大の姿で演じているようにも感じられ、だからこそ親近感を抱くこともでき、最終的にはCODAとして生まれたことが誇りにも思えるんだな、と気づかされた。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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