CG全盛の中でアナログでやっている映画だからこそのマジック!『みーんな、宇宙人。』三原羽衣さんと宇賀那健一監督を迎え舞台挨拶開催!
人類の滅亡を企む6体のモジャモジャな生物たちが地球上で様々な人と出会う様子が描かれる『みーんな、宇宙人。』が6月7日(金)より全国の劇場で公開中。6月9日(日)には、大阪・梅田のテアトル梅田に三原羽衣さんと宇賀那健一監督を迎え、舞台挨拶付き上映が開催された。
映画『みーんな、宇宙人。』は、ファッション&カルチャー誌NYLON JAPANの創刊20周年を記念して製作されたオリジナル作品。地球の害虫である人類を駆除するために宇宙からやってきた不思議な生き物と、彼らと出会った人々が織りなす物語をオムニバス形式で描く。監督・脚本は、『転がるビー玉』『Love Will Tear Us Apart』『悪魔がはらわたでいけにえで私』など様々なジャンルの映画を手がける宇賀那健一さん。ある日、誰かの役に立とうとビルの屋上で「オレオレ詐欺」ならぬ「オレオレありがとう」の電話を繰り返していたセイヤ。そんな彼のもとに、突然何かが空から落ちてくる。セイヤが電話を切ると、エメラルドブルーの毛がモジャモジャに生えた、見たことのない生き物がそこにいた。ミントという名のその生き物と他愛もない会話をして仕事へと向かうセイヤだが、その後、体型にコンプレックスを抱くミサトのもとにオレンジ、自分に自信が持てずネガティブなショウのもとにピーチ、寂しがり屋の女子レイのもとにオリーブ、人間を強く信じるヒロトのもとにクロウ、人生に悔いを抱くミステリアスなリュウのもとにグレープと、ミントの仲間たちが各所に現れる。彼らはそれぞれが出会った人間との会話を通してお互いのことを少しずつ理解し始めるが…
セイヤ役に『18歳のおとなたち』『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の兵頭功海さん、ミサト役にグラビアで人気を集める菊地姫奈さん、ショウ役に『六人の嘘つきな大学生』の西垣匠さん、レイ役にSNSで人気のインフルエンサーでもある三原羽衣さん、ヒロト役にダンス&ボーカルグループである超特急の草川拓弥さん、リュウ役に台湾と日本でミュージシャン・俳優として活躍するYUさんが出演した。
今回、上映後に三原羽衣さんと宇賀那健一監督が登壇。完売御礼状態の中、作品の魅力が伝わってくる舞台挨拶が繰り広げられた。
脚本を読んだ際に三原さんは「宇賀那監督作品の雰囲気を分かっていたからこそビックリすることもなく…」と受け入れたが「ちゃんと演じられるかな」といった不安は無きにしも非ず。これを受け、宇賀那監督は「質問したいところはいくらでもあるような脚本じゃないですか?」と自身にツッコミを入れながらも「皆さん、聞かないでスッと入ってきてくれた」と安心。とはいえ「大丈夫かな?」と心配ではあった。ペットで犬を飼っている三原さんは「自分の愛犬に接しているかのような感覚でした。凄い愛着が湧いています」とモジャを気に入っている。宇賀那監督は「慣れていないと馴染んでいけないけど、ピッタリでした」と印象深かったが「やりにくさもある。(モジャは)人が動かしているけど、見ないといけないのはオリーブだから」と指摘。改めて、モジャはパペットであり、人がアナログに操作していることを説明し「声をやっている方がパペットを動かしている。作中では人を消さないといけないので、俳優とパペットを動かしている方の映像を撮りつつ、人がいない映像を撮って合成して人を消している。パペットを動かしている人は全身ブルータイツを着ている、というシュールなシチュエーション。それは気になりますよね!?」と三原さんに同情していく。三原さんは「気になりましたけど、なんとか、愛情をもって…」と苦笑。宇賀那監督は「ちょっと笑わそうとすると急に冷める。どれだけ真面目にやれるか重要。全キャストが真面目に最初から最後まで応じて下さったから成立している」と本作に新式に向き合ってくれたことに感謝していた。
各エピソードは昨年8月に撮影が行われ、三原さんの撮影日が一番に暑かったようで「代々木公園での撮影はしっかりと対策していた。その後、部屋での撮影がヤバかった」と宇賀那監督は思い返し「大きくない部屋の中に沢山の人がいた。照明があり、撮影中はエアコンを切らないといけない。地獄のような暑さの中、パペットを動かしている人は握力が必要。(ブルータイツの)青が汗で次第に濃くなっていく。全身ブルータイツなので息が荒くなっていく」と述べ、現場の大変さが伝わってくる。とはいえ、三原さんはなるべく見ないように心掛けたようだ。改めて、三原さんの出演したオリーブとのエピソードについて、宇賀那監督は「ある種の悲しさと優しが混在している」と気に入っていることが伝わってきた。
兵頭功海さん演じるセイヤとミントのエピソードについて、三原さんは「台本を読んだ時は、すんっとした感じで演じると思っていた。情けない感じが凄く良いな」と好印象。宇賀那監督は「セイヤが徐々に成長していく過程がしっかりと見える。それが兵頭君の上手いところ。弱いけど、”オレオレありがとう”をやり続ける。ちょっと変わった芯の強さがある。兵頭君は上手い匙加減で体現してくれたなぁ」と感心している。菊地姫奈さん演じるミサトとオレンジのエピソードについて、三原さんは「倒れないか!?と思うぐらい食べていた」と驚愕。宇賀那監督は「あれはこちら側の連携ミスというか…『お腹いっぱいになったら箸を置いて下さい』と伝えていたつもりがちゃんと伝わっていなくて…止めてもらえると思って食べ続けていた菊地さん…」と申し訳なかった。胃の中で演じるシーンもあり「何もないグリーンバックで演じている。お互いに模索しながら様々なことをやっていた」という印象が残っている。西垣匠さん演じるショウとピーチのエピソードについて、三原さんは「癒されました。ほのぼのしていた」と馴染んでいた。宇賀那監督は「公園だけの撮影で凄く暑かった。加えて直射日光がずっと当たり続けていた。日傘もない。大雨になった時もあり映ってしまったが、
大雨の設定でやってしまった。スワンは強風で流されていく。ほのぼのしたシーンでありながら、現場は大変な状況」と苦労したが「西垣君は芯がある。演技の軸が全くブレないから、撮影はスムーズに。こんな条件がありながら、巻いて終わった」と安堵している。草川拓弥さん演じるヒロトとクロウのエピソードについて、三原さんは「ラップが凄かったです。あれを覚えるのが本当に大変」と共感。宇賀那監督は「勿論フリースタイルなんてやったことない。ずっと聴いて外で練習していました。寺で外での撮影は、どのような演技を受けるか理解するため、クロウの芝居もずっと見ていた。鑑だな」と感心していた。フリースタイルをしている時、パペットを動かしている人は地面で横になり、直射日光対策としてサングラスをかけており「全身ブルータイツで、サングラスかけて、横たわっている人がフリースタイルをやっている。四重にシュールなことが重なり、見たことない現場になっていましたね。でも、草川も必死だった。リリックがフリースタイルが上手に活きていた」と振り返る。YUさん演じるリュウとグレープのエピソードについて、三原さんは「不思議だけど刺さる人は多いんじゃないかな。自分にも刺さるパープルの言葉があった」と印象深い。宇賀那監督は「皆が遠回りして何かを伝えていく。聞いてあげることによって何かを感じさせるキャラクターが多い中で、直接的なことを言ってくるキャラクター」と説くと共に「尻尾が落ちることは現場で決めた。YU君もそんなことが起こると思っていなかった。様々なことを現場で変えた。脚本を読んで、どういう風になるか想像しにくい場所。ある種の演じにくさがあったと思うけど、飄々と受け入れて演じてくれる。毎回120%で演じてくれたので、様々なことがはまっていって、言葉が響いた、と言われることが多い」と納得している。作品の全てを観た三原さんは「おもしろい!の一言では片づけられない。様々な意味での”おもしろい!”が沢山詰まっている」といった印象を受けていた。宇賀那監督としては「CG全盛期の中でアナログでやっている。映画だからこそのマジック。大人達が集まって必死に汗をかきながら、ブルータイツが青くなりながら、実現したいことをやっているのは愛おしい行為。これに役者とスタッフ全員が一丸となっているからこそ出来た作品だからこそ生まれるものがスクリーンに映っている」と受けとめている。
最後に、三原さんは「関西出身で昔から来ていた梅田で映画が公開されて、舞台挨拶にまで来れる。凄い感動しています。本当にありがたいな」と感慨深くなりながら「この映画は観る人によって感じ方が違うと思うので、感じたことをSNSなどにつぶやいてくれたら見にいきます」とメッセージ。宇賀那監督は「映画は様々な形がドンドン生まれてきています。でも、僕は、映画館で上映されるものが映画だと思っています。勿論、配信で観るから悪い、という話ではなく。それは、大きいスクリーンで知らない人達と一緒に暗闇の中で映画を体験することです。そして、今回は音も拘って作っています。5.1chで何処のスピーカーでどの音を鳴らすか、様々に考えながら作ってきました。この映画を出来るだけ多くの劇場で長く上映出来たらな」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。
映画『みーんな、宇宙人。』は、全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田や心斎橋のシネマート心斎橋、京都・烏丸御池のアップリンク京都や久御山のイオンシネマ久御山、兵庫・三田のイオンシネマ三田ウッディタウンで公開中。また、6月15日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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