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どうか諦めないで人と関わっていこう…『52ヘルツのクジラたち』杉咲花さんを迎え舞台挨拶開催!

2024年3月2日

家族から搾取されて傷ついた辛い記憶を持つ女性が、虐待を受けている少年を助け、自らを救った人物を思い出す様子を描き出す『52ヘルツのクジラたち』が3月1日(金)より全国の劇場で公開。3月2日(土)には大阪・難波のTOHOシネマズなんばに杉咲花さんを迎え舞台挨拶が開催された。

 

映画『52ヘルツのクジラたち』は、本作は、2021年本屋大賞を受賞した町田そのこさんのベストセラー小説を、杉咲花さん主演で映画化したヒューマンドラマ。自分の人生を家族に搾取されて生きてきた女性である三島貴瑚。ある痛みを抱えて東京から海辺の街の一軒家へ引っ越してきた彼女は、そこで母親から「ムシ」と呼ばれて虐待される、声を発することのできない少年と出会う。貴瑚は少年との交流を通し、かつて自分の声なきSOSに気づいて救い出してくれたアンさんとの日々を思い起こしていく。杉咲さんが演じる貴瑚を救おうとするアンさんこと岡田安吾を志尊淳さん、貴瑚の初めての恋人となる上司の新名主税を宮沢氷魚さん、貴瑚の親友である牧岡美晴を小野花梨さん、「ムシ」と呼ばれる少年を映画初出演の桑名桃李さんが演じる。『八日目の蝉』『銀河鉄道の父』の成島出監督がメガホンをとり、『四月は君の嘘』『ロストケア』の龍居由佳里さんが脚本を担当。タイトルの「52ヘルツのクジラ」とは、他のクジラが聞き取れないほど高い周波数で鳴く、世界で1頭だけの孤独なクジラのことを指す。

 

今回、上映後に杉咲花さんが登壇。満席の観客から大きな拍手で迎えられた杉咲さんは「大切な時間をこの映画に割いていただいてありがとうございます」と感無量の面持ちで挨拶し、舞台挨拶は始まった。

 

大阪が舞台だったNHK連続テレビ小説「おちょやん」で約1年大阪に住んでいた杉咲さん。MCから「おかえりなさい」と声をかけられると「大好きな街なので嬉しいです。私も『ただいま』と言いたくなる。大阪に来ると特別な感情が沸いてきます」と語る。「朝ドラの撮影中はコロナ禍だったのであまり外出できなかった」と振り返り、今一番行きたいところは「鶴橋」だと言うと、場内からは笑い声が。「キムチを買いに行きたい」と理由を明かし、さらに「さっき、いか焼きとたこ焼きも食べました。いつ食べても美味しいですよね」と笑顔を見せた。

 

昨日に公開初日を迎えた本作。今の率直な思いを聞かれると「1人なので緊張しますね」とはにかみ「映画どうだったかな?と聞いてみたい」と言うと場内からは大きな拍手が。本作の中でも特に印象的な貴瑚が大分で暮らすテラスのある家は「監督と脚本家の方がシナリオハンティングの時に偶然見つけた場所」だったそうだ。「しかも、7年ほど前に迷いクジラが見えたそうで、ご縁を感じています」とのこと。「景色が本当に美しくて、天気にも恵まれて」と振り返り、東京での撮影後に大分で撮影したこともあり「心が開けていく感覚があった。大分の土地の力もあったと思います」と思い返していた。

 

 

 

また、成島出監督と初めて会った時に「飛び込んできてください」と言われたと語る。「作品の主役は主人公や監督ではなく、作品そのものだから、キャリアや役割といった垣根を超えたところでものづくりをしていきましょう」という言葉をかけて頂いたこともあり「撮影でも常に価値観のすり合わせが行われていて、こんなにも真摯に取り組める環境を用意してくださったことに感謝しています」と話しました。

 

続けて、貴瑚にとって特別な存在であるアンさんを演じた志尊淳さんについて、杉咲さんは「全てのシーンが強烈に私の中に残っている」と思いを語る。「貴瑚が母親に別れを告げに行くシーンの撮影では、本番の直前に必ず志尊くんが私の顔をじっと見つめてくれる。向けられる眼差しだけで心に届いてくるものがあった」と振り返り「カメラに映らない時間こそ、すごく大切に愛情深く常に傍にいてくださった」と感謝の気持ちを述べていました。さらに「志尊くんから言われた言葉」として「僕はアンさんのことをすごく尊敬しているけれど、自分はアンさんみたいな選択はできないんじゃないかと思う。だからこそ、現場で過ごす以外の時間もアンさんのように寄り添っていたいと思った」と仰っており「本当に素晴らしい共演者の方に恵まれたと思っています」と深い感謝の思いを語っていた。

 

 

そして、上映後の舞台挨拶だから話せる裏話として「エンドロールに、夕陽を見つめる2人の背中が映っていると思うんですが、当初は撮る予定ではなかったんです」と語り「別のシーンを3回に分けて撮影している時に、ものすごく美しい夕陽が差し込んできて。何が起きているかわからないまま撮影しました」と明かした。また、裏話として「あの堤防にはフナムシが大量発生していて」と明かすと場内からは驚きの声があがる。「綺麗な夕陽を見つめて3分間ぐらい立ち続けていないといけなかったんですが、人間がじっとしているとフナ虫が迫ってくるので、私たちは怯えながら立っていました」と笑いながら話した。

 

最後に、杉咲さんは「人の痛みを全てわかることはとても難しいことだと思いますが、わからないことは決して無力ではないと思っています。わからないからこそ、相手のことを知ろうと思えたり、優しくしたい、隣にいたいと思ったり。どうか諦めないで人と関わっていこうというメッセージを感じられるこの作品を大切に思っています」と力強く語った。続けて「私たちは1人でも多くの方がこの作品に居場所を感じてもらえるよう願いをこめて作りました。とても繊細な領域に踏み込んで描いた映画なので、いろんな意見があると思いますし、それを受け止めながら、この先も物語に関わっていきたいと思っています。また、出来上がった作品をここに届けにこられるように頑張りますので、良ければまた会いに来てください」と作品をPRし、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『52ヘルツのクジラたち』は、3月1日(金)より全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や三条のMOVIX京都や七条のT・ジョイ京都、神戸・三宮のOSシネマズミント神戸等で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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