松本卓也監督が生き死について描く『あっちこっち じゃあにー』『ラフラフダイ』がシアターセブンで公開!
©シネマ健康会
ピン芸人と、彼の動画配信を手伝う6歳の女の子による奇妙な2人旅をつづるロードムービー『あっちこっち じゃあにー』と笑いながら突然死してしまう奇病が流行し、人々が感情を殺す薬を飲むようになった世界を描く『ラフラフダイ』が1月13日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開される。
映画『あっちこっち じゃあにー』…
お笑いコンビを解散してピン芸人となった末松。後輩芸人からも面白くないといじられ、売れる気配は一向にない。 ヘッドフォンで音楽を聴きながら、孤独に生きる日々。そんな時に6歳の女の子 加奈と出会い、動画配信の手伝いをしてもらう事になる。 やがて末松は、遠方に住む加奈の父に会いに行くことを交換条件に、加奈に旅の動画撮影の同行をお願いする。 大人と子ども、奇妙な二人の旅が始まる…
東京、群馬、新潟、山形と実際にキャンピングカーと共に移動してロードムービーとして撮影された。主人公の女の子には6歳の新人であるゆず を起用。その年齢にしか出せない雰囲気と自然な演技が目を引く。またネパール人のディネス・サプコタ、韓国人のハン・ギュヒなど国際色豊かなキャスティングも魅力。演技未経験ながら、独特の存在感を残す。もう一人の主人公である末松は、松本卓也監督自らが演じている。劇中キーとなる曲はザ・クロマニヨンズを使用し、物語を盛り上げていく。劇伴にはアーティストのハマノヒロチカが参加し、映画の為に作り上げた音楽は感動を生む。
映画『ラフラフダイ』…
笑いながら突然死してしまう奇病「笑い死に」が全世界で拡大。人々は感染を恐れ、笑う事を禁止する。感情を殺す薬を飲み、心を失った世界で、自由に生きることを選んだ人々がいた。感情を失ってまで生きたいか、感情を持ったまま死ぬか。「笑い死に」で家族を失った人、笑いを諦められないコンビ芸人など、感情を捨てられなかった人々が寄り添い暮らす山奥の施設で、不安と葛藤が交差するオリジナルストーリーを制作。企画構想から約10年。新型コロナウイルス感染拡大で不安渦巻く現代に放つ問題作。全編が長野県飯田市で撮影された。
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映画『あっちこっち じゃあにー』は、1月13日(土)より1月19日(金)まで大阪・十三のシアターセブンで公開。映画『ラフラフダイ』は、1月13日(土)と1月14日(日)の2日間限定で大阪・十三のシアターセブンで公開。なお、、1月13日(土)には、『ラフラフダイ』の上映後に古沢優子 さん(サルパラダイス)と松本卓也監督、『あっちこっち じゃあにー』の回上映後に松本卓也監督、1月14日(日)には、『ラフラフダイ』の回 上映後に松本卓也監督、『あっちこっち じゃあにー』の回上映後に榎本桜さんと白石望莱さんと松本卓也監督が登壇し舞台挨拶を開催予定。
世の中は大変なことが起きている真只中ではあるけれども、あえてこのテーマを扱った作品をこのタイミングで大阪で上映する松本卓也監督。
『あっちこっち じゃあにー』は、シュール過ぎて笑えるかギリギリの路線を突き進み孤高の存在として活動する主人公を松本卓也監督自らが演じる。監督自身は、かつては約10年間もお笑いコンビとして活動していたが、相方にふられ解散し、その後は独学で映像制作の道を歩んできた方なので、自身をかなり投影して作っているのではないか、と察する次第。そんな主人公は、寡黙な少女が父親に会いに行きたい、という願いを聞き入れ、或る種の同じような境遇だと察しながらも、不思議なロードムービーとして展開していく。基本的には松本監督流のエンターテインメント作品ではあるのだが、時折見せる情勢描写にはノスタルジーを感じさせるものがいくつもあると同時に、過去を振り返るだけでなく未来に向かっていくポジティブな描写もある。冒頭は危うくも、最終的にはスッキリとした心地で観終えられる作品だ。
『ラフラフダイ』は、現在のコロナ禍を監督なりの視点で描いたように感じられたが、実は、約10年前から企画して構想していた作品だと知り、驚かされる。とはいえ、いつの時代もディストピアな世界を描いた作品は多くあり、お笑い芸人だった監督ならでは視点がユニークだ。笑うと、もしかしたら死んでしまう世界が存在したとしたら、思考できない人間は感情を殺す薬に手を伸ばさせるのか。それは、『ドラゴンヘッド』で描かれたような世界でもある。感情が殺され心を失った世界、それは何とも息苦しい世界だろうか。ん?それは、コロナ禍で感じていた息苦しさを見事に表現している。そんな世界が本当に存在したら、感情を自由に表現できる世界、まさにユートピアを欲するのは自然な流れ。本作では、とある場所に集まり、自由に暮らす人々をシュールさを伴いながら描いていく。時折、外部からの侵入者に対し警戒するような描写もあるが、結局は同じ世界を生きる人間であり、息苦しい世界を生きる人々を真摯に向き合い描いているようでもある。人はいつかは死ぬ、という前提の中で描かれる不思議な寓話のような作品だ。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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