生家を映すロケーションができたらいいな…『こんにちは、母さん』山田洋次監督と北山雅康さん迎え、豊中市選考上映会舞台挨拶開催!
家族問題に頭を悩ませる男が活き活きと暮らす母に感化され、見失っていたものに気づいていく姿が描かれる『こんにちは、母さん』が9月1日(金)より全国の劇場で公開される。8月24日(木)には、大阪・豊中の豊中市立文化芸術センター大ホールに山田洋次監督と北山雅康さん迎え、豊中市選考上映会舞台挨拶が開催された。
映画『こんにちは、母さん』は、山田洋次監督が吉永小百合さんを主演に迎え、現代の東京・下町に生きる家族が織りなす人間模様を描いた人情ドラマ。同じく山田監督と吉永さん主演の『母べえ』『母と暮らせば』に続く「母」3部作の3作目にあたり、劇作家の永井愛さんによる戯曲「こんにちは、母さん」を映画化した。大会社の人事部長である神崎昭夫は、職場では常に神経をすり減らし、家では妻との離婚問題や大学生の娘との関係に頭を抱える日々を送っていた。そんなある日、母・福江が暮らす下町の実家を久々に訪れた彼は、母の様子が変化していることに気づく。いつも割烹着を着ていた母は艶やかなファッションに身を包み、恋愛までしている様子。実家にも自分の居場所がなく戸惑う昭夫だったが、下町の住民たちの温かさや今までとは違う母との出会いを通し、自分が見失っていたものに気づいていく。
母の福江を吉永さん、息子の昭夫を大泉洋さんが演じ、永野芽郁さん、寺尾聰さん、宮藤官九郎さん、田中泯さん、YOUさんが共演した。
舞台挨拶の冒頭、満員の会場に向かって「テレビでは、今日は危険な暑さと言われている中で、大勢の方がこの映画を見に来てくださいました。どうもありがとうございます」と山田監督がご挨拶。本作で山田組に初参加となった大泉洋さん、宮藤官九郎さん、YOUさんの印象を聞かれ「(大泉さんは)テレビ等で演技を見ていたが、力のある数少ないスターの一人。彼が出てくるだけで映画自体が明るくなる大事な存在だ」と頼もしかった。また「母親と息子の物語なので、吉永さんの息子役が誰か決まらなければ、この企画は成り立たない中で早い段階から大泉洋さんが良いなと思っていた」と応えた。宮藤官九郎さんの印象は「監督としても役者としても一流の方ですが、そんな方が脇役での出演だったので、出演していただけるか不安だったが、快く受け入れてくれて参加してもらい、現場でも真面目で誠実に監督の注文を聞いて演じてくれ、とても好感を持ちました」と印象深い。YOUさんについては「以前から変幻自在な方だと思っていたが、実際一緒に仕事をしてみると、楽しいし、様々な注文にこなしてくれる、とても素敵な役者でした」とお話し、北山さんからは「YOUさんはムードメーカーで、現場にいらっしゃるだけで笑顔になり、監督も笑ってNGになることもあったり・・(笑)」と現場での裏話も飛び出した。
また、撮影中のエピソードについて、本作で巡査役を演じた北山さんは「橋での撮影などでは交通量が多い中で、夕陽を狙った撮影などで通行を止めることもあり、自分が巡査の格好をしているので、注意してくださいと怒られることもあった」と打ち明け、会場も笑いに包まれた。本作で、共演者の印象を聞かれ「吉永小百合さんはあこがれの素敵な方で、初めてゆっくりとご一緒させて頂いた」と思い返し「皆さんと和やかにコミュニケーションを取られていた。いろんな人にお会いしてきたけれど、吉永さんは違いますね。」と憧れの吉永さんとの共演を振り返った。吉永さんの魅力ついて聞かれ、山田監督は、しばらく沈黙した後に「常識的な言い方になるけど、とにかく品が良い。あの人の人間性そのもの。非常にまじめだし、よく勉強しているしね。とても知的で、人間としてしっかりした感じがありますよね。女性として立派。」と絶賛。本作の「お母さんが恋をする」という設定について聞かれた山田監督は「お母さんが恋をしたらどう思うかを、40代50代の男に聞くと、だいたい顔しかめますよ」と冷静に話す。「お母さんだって一人の女性だから、誰を好きになってもいいじゃないか。理屈ではわかるんだけど嫌だねって言うね。男にとってお母さんは神聖な存在なんですよね。お母さんが女になるっていうことは、どうも男にとって、いまいち納得しがたいんだよね。これはしょうがない。こうやって人間って生きていくんだから。男のほうが諦めるしかない」と断言すると、会場の女性客から笑いが漏れた。
次回作について問われ「終わったばかりですからね。あまりすぐには考えませんが。監督になってから50年になりますけど、いつも様々な映画作りたいな、こんなことをしたいなっていうのが2つも3つも持ってるものですよ。それが漬物みたいなもので、これはそろそろおいしくなった、これはまだだなみたいな。そういう意味では今でもいくつも映画を作りたいと思っています。できたら作りたい気持ちもないわけではないですが、いつか僕も限界が来るでしょうから、今ここで作りたいとは言いません」と明かさず。最後に「次回作は是非豊中でロケを」と求められ「僕は生まれも育ちも豊中。僕の生まれた家もまだ残っている。あの家を映すロケーションができたらいいな」と豊中への想いを垣間見せた。
映画『こんにちは、母さん』は、9月1日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや心斎橋のイオンシネマシアタス心斎橋や難波のなんばパークスシネマ、京都・二条のTOHOシネマズ二条や三条のMOVIX京都や七条のT・ジョイ京都、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OSや神戸・三宮のkino cinema 神戸国際等で公開。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
- 最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!