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家族と一緒にいられることがどれだけ素晴らしいのか…『銀河鉄道の父』役所広司さんと成島出監督を迎え舞台挨拶付き特別先行上映会開催!

2023年4月11日

宮沢賢治さんの生涯を、父親の視点から家族をめぐる物語として描き出す『銀河鉄道の父』が5月5日(金)より全国の劇場で公開される。4月11日(火)には、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田に役所広司さんと成島出監督を迎え、舞台挨拶付き特別先行上映会が開催された。

 

映画『銀河鉄道の父』は、小説家の門井慶喜さんが宮沢賢治の父である政次郎を主人公に究極の家族愛をつづった直木賞受賞作「銀河鉄道の父」を、『八日目の蝉』『いのちの停車場』の成島出監督のメガホンで映画化。岩手県で質屋を営む宮沢政次郎の長男である賢治は家業を継ぐ立場でありながら、適当な理由をつけてはそれを拒んでいた。学校卒業後は農業大学への進学や人工宝石の製造、宗教への傾倒と我が道を突き進む賢治に対し、政次郎は厳格な父親であろうと努めるもつい甘やかしてしまう。やがて、妹であるトシの病気をきっかけに筆を執る賢治だったが…
役所広司さんが政次郎役で主演を務め、長男の賢治を菅田将暉さん、賢治の妹であるトシを森七菜さん、母のイチを坂井真紀さん、祖父の喜助を田中泯さん、弟の清六を豊田裕大さんがそれぞれ演じる。『かぐや姫の物語』『この道』の坂口理子さんが脚本を担当した

 

今回、上映前に役所広司さんと成島出監督が登壇。大阪に縁のある2人による和やかな舞台挨拶が繰り広げられた。

 

成島監督が役所さんと最初に仕事をしたのが、実は大阪。役所さんは「30年以上前。シャブが体質に合う男の話だった」と思い返す。成島監督は、役所広司さんという俳優について「ご師匠の仲代達矢さんが名付けており、2つの役所に勤めていたこと、役どころ広しで何でも出来るように、という由来で、まさにその通り。ずっと何年もご一緒させてもらい、毎回様々な役をやってもらっています。素晴らしい」と感じている。役所さんが主演した映画『シャブ極道』『大阪極道戦争 しのいだれ』の脚本を成島さんが書かれており、役所さんは「仕事仲間です。今や監督と俳優の関係です」と述べ「沢山の映画を知っている人。日本映画に対する愛情が深い人なので、本当に信頼している監督です」と信頼していた。

 

門井慶喜さんの小説を映画化するにあたり、成島監督は「原作との出会いが最初だった。過去に映画にもなったことがあるが、政次郎さんは厳しい方であまり笑わない、最後だけ賢治を褒めた、と清六さんの記録に残っている」と説き「小説を読んで、全く目から鱗だった。イクメンのはしりのような親バカで、これで賢治という天才を育んだ。おもしろくて、
これは役所さんにやってもらおう」と決意。まずは、役所さんと菅田将暉さんに原作を送り「とにかく読んで下さい。絶対にやりますから」念押し。役所さんは、成島監督から久々のオファーを受け、まずは「やらなければ」と思い、原作を読ませてもらい「僕は、宮沢賢治をよく知らなくて…お父さんの政次郎さんのことは全く知らなかった」と告白。かつては、仲代達矢さんや渡哲也さんが演じていたが「厳格そうにしているが、どこか隙だらけで、子供達に甘い。ユーモアがあって愛嬌があり、子供達や妻が笑っている」とイメージし、興味深かった。さらに、読み進めていく中で「”厳格にしているけれど、隙だらけの父親のことが心配だ”という一文があった。子供達にもそういう風に思われながら、心配されている隙だらけの親父が、今回の政次郎の一番魅力的な部分だ」と思い、役作りをしていく。また「お父さんも文学が好きな方。賢治が作る物語に理解があったんじゃないでしょうか。おもしろい子だと思っていたんだ」と思わされた。成島監督は、役所さんに対し「意中の通りなので、修正するところがない。役になり切って下さっている。理屈ではなく、体に全部入って演じて下さる。こちらが頭で考えても通用しない」と謙遜している。

 

各地のロケで撮影していく中で役所さんは「花巻の景色の良い場所での撮影がなかった」と漏らしながらも「岐阜県恵那市に1ヶ月程度いました。そこにある古い家のつくりは一つ一つの梁を見るだけで美しかった」とお気に入り。成島監督は「撮れたものが物凄く良かった。歴史がある建物の中で宮沢家を造れたので、リアルな映画に出来た。当時のランプによる照明は古い建物の中でマッチしており映画的効果になっている」とお薦め。役所さんは「こんな暗いところで撮影したことなかった」と驚きながらも「時代と共にランプから始まった。時代毎に僕の白髪が増えると共に灯が変わっていく」と感心している。

 

上映前の舞台挨拶であるため、本作のポイントについて、成島監督は「古い電車で蝋燭の灯から始まり、最後はランプの灯で銀河鉄道に乗る。大きなスクリーンで映像を劇場で楽しんでもらえれば」と提案。役所さんは「僕は21歳から始まります。21歳になるためにメイクさんやかつら屋さんが頑張って工夫してくれています」と紹介した。

 

さらに、原作者の門井慶喜さんが登壇。2018年に成島監督は門井さんに会いに行っており「今回は、映画が前提だった。原作者は、”いじらないで。映画とはいえ原作通りにやって下さい”という方と”映画は別のもの。どうぞご自由に”という方がある。先生は”お任せします”と言って下さった」と明かす。実在の人物を描くにあたり「先生は様々なことを調べた上で書いていらっしゃる。嘘がない」と受けとめているが「嘘がないままだと、映画の感動にもっていけるか、我々の悩み」と苦労を重ねた。なお、門井さんは既に試写で二度鑑賞しており「2回とも泣いちゃって。役所さんが登場したあたりから、自分が原作を書いたことを忘れて、お客さんとして映画の中に入っちゃった」と打ち明け「原作モノとはいえ、素晴らしい映画を作って頂いた」と感謝している。役所さんは門井さんを前にして「恐いですよ。”僕はそんな風に書いていません”と言われるんじゃないか、と思って」と慄きながらも「先生から”観客として楽しめました”と仰って頂けて、試写の時には安心しました」とホッとしている。

 

最後に、成島監督は「思い出深い大阪で見て頂けることを嬉しく思います。この映画は2018年頃から始めたんですが、コロナ禍を迎え家族や大事な人が亡くなっても手を握れない。ウクライナ侵攻によって家族が引き離された。そんなな中で、家族と一緒にいられることがどれだけ素晴らしいのか。この映画を作り時間が経った中でつくづく感じました。大切なものが皆さんに届いてくれたら嬉しいな」と思いを込めてメッセージ。役所さんは「僕達、ユーモアや笑いの部分も大切に作ってきました。気楽に楽しんで観て頂けると嬉しいです。成島監督の下に集まったスタッフ・キャスト皆で頑張って作ってきましたので、沢山の人に観てもらいたい」と伝え、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『銀河鉄道の父』は、5月5日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や心斎橋のイオンシネマシアタス心斎橋や難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や三条のMOVIX京都や九条のT・ジョイ京都、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OSや神戸・三宮のkino cinema 神戸国際等で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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