話がまったく噛み合わない監督と2人の俳優がベストセラー小説の映画化に挑む『コンペティション』がいよいよ劇場公開!
©2021 Mediaproduccion S.L.U, Prom TV S.A.U.
そりの合わない映画監督とふたりの俳優が、映画を製作する様を描く『コンペティション』が3月17日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『コンペティション』は、華やかな映画業界の舞台裏で繰り広げられる監督と俳優2人の三つどもえの戦いを皮肉たっぷりに描いたドラマ。大富豪の起業家は自身のイメージアップを図るため、一流の映画監督と俳優を起用した傑作映画を制作しようと思いつく。そこで変わり者の天才監督ローラと世界的スターのフェリックス、老練な舞台俳優イバンという3人が集められ、ベストセラー小説の映画化に挑むことに。しかし奇想天外な演出論を振りかざす監督と独自の演技法を貫こうとする俳優たちは激しくぶつかり合い、リハーサルは思わぬ方向へ展開していく。
本作では、ペネロペ・クルスとアントニオ・バンデラスが母国スペインで共演。映画監督ローラをクルス、スター俳優フェリックスをバンデラス、ベテラン舞台俳優イバンを『笑う故郷』のオスカル・マルティネスが演じた。監督は『ル・コルビュジエの家』のガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン。2021年の第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品された。
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映画『コンペティション』は、3月17日(金)より全国劇場にて公開。関西では、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や心斎橋のイオンシネマシアタス心斎橋、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
インタビューやメイキング映像で監督や出演者の想いなどを聞くと、映画は素晴らしい意義によって製作され、才能あふれるクリエイターたちが切磋琢磨しながら作品を生み出していると感じられる。映画祭に出品されるような映画ならなおさらだ。観客や記者たちは映画に崇高さを求めている。しかし、内実は案外ちっぽけでくだらないかもしれない。『コンペティション』で描かれるドタバタなリハーサルを見ると、そんなことを思ってしまう。
そもそも、映画を製作して自分の名前を後世にまで残したいという大富豪の気まぐれから始まるところからして、華やかな映画業界を皮肉る気満々である。莫大な資金を費やしてノーベル文学賞を受賞した小説の映画化権を買ったと言うくせに、小説の内容はまったく知らないという空虚さには、思わずがっかりしてしまう。ただ、自分のことしか考えていない金持ちの道楽に付き合わされているという構図は、あながち間違っていないかもしれない。基本的に映画製作に手を出せるのは富裕層だし、どんな動機で映画製作をしているのかという本音は観客には分からないものだ。見えるのは口当たりのいい意義や熱意ばかりである。
そして、内実が見えないのは役者たちも同じだ。演技論について議論しているかと思いきや、ちっぽけなプライドをぶつけ、ののしり合っている。お互いに軽蔑し、自分が一番だと思い込む。一方で、作品のことを考え続ける監督は役者たちのプライドを打ち砕こうと、さまざまな手法でリハーサルを繰り返す。作品のためにという視点が欠けている役者たちのプライドが浮かび上がる様は、滑稽であると同時に痛いところを突いてくる。誰もが中身を見ずに外面ばかり見ているのだと…。
fromマリオン
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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