金子勇さんのプログラミングに対する純真無垢な思いや愛情や情熱を抱いて演じました…『Winny』東出昌大さん、三浦貴大さん、松本優作監督迎え舞台挨拶開催!
2002年に実際に起きた事件を基に、革新的なソフトを開発し、罪に問われた技術者が、無罪を勝ち取るまでを描く『Winny』が3月10日(金)より全国の劇場で公開される。2月28日(火)には、大阪弁護士会館に東出昌大さん、三浦貴大さん、松本優作監督を迎え、大阪弁護士会会員である弁護士の方々に向けた大阪舞台挨拶付き上映会が開催された。
映画『Winny』…
2002年、開発者・金子勇(東出昌大)は、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発、試用版を「2ちゃんねる」に公開をする。彗星のごとく現れた「Winny」は、本人同士が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを伸ばしていく。しかし、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出、次第に社会問題へ発展していく。次々に違法アップロードした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまう。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦貴大)は、「開発者が逮捕されたら弁護します」と話していた矢先、開発者金子氏逮捕の報道を受けて、急遽弁護を引き受けることになり、弁護団を結成。金子と共に裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第一審では有罪判決を下されてしまう…。そして、運命の糸が交差し、世界をも揺るがす事件へと発展する――。[配給:KDDI/ナカチカ]
上映前、壇俊光弁護士による司会にて、東出昌大さん、三浦貴大さん、松本優作監督が登壇し、大阪弁護士会会員である弁護士の方々を前にして舞台挨拶が繰り広げられた。
Winnyを開発した金子勇さんについて、東出さんは「天才的なプログラマーを光栄にも演じることが出来ました。生前の金子さんの映像が映画の中で極一部紹介されます」と紹介し「その映像と合わせて、この作品をお楽しみ頂ければ」とメッセージ。壇弁護士を演じた三浦さんは「法廷シーンでの壇弁護士の動きを注目してもらえたら」とピックアップ。裁判シーンに拘った松本監督は「裁判シーンのどこかに壇弁護士も出演しているので、気づいて頂ければ」と紹介した。
壇弁護士を演じるにあたり、三浦さんは、撮影前に、壇弁護士が裁判記録に則って実施した模擬裁判の映像を拝見し「檀さんが右手に書類を持ち、左手をついて喋っている姿を見た。目線の動きを大事にしていらっしゃると聞き、しっかりと演じていった。完コピしたら文句言われないだろう、と思い頑張りました」と振り返る。なお、劇中でかけている眼鏡について「当時、壇さんがかけていた眼鏡をお借りして着用していました。レンズだけは僕の視力に代えさせて頂きました」と明かす。法廷シーンについて、松本監督は「檀さんをはじめ弁護士の方々に取材させて頂く中で、日本の映画では裁判シーンがリアルな作品がない、と仰られていまして…今までの日本映画にないようなリアルな裁判を再現したく、監修してもらい撮影させて頂きました。今までにないリアルな裁判シーンが撮れたのではないかな」と解説。東出さんはWinny事件や金子さんについて存じ上げず、最初に「逮捕、有罪、有罪、最高裁で無罪」という情報だけを汲み取ってしまい「いかがわしい人なのかな」と先入観を抱いてしまう。だが、生前の金子さんを知る人達から話を聞き「皆さんが金子さんのことを嬉々として喋っていらっしゃる。皆が金子さんが好きで『あの人は人の悪口を言わない』『不平不満を言わない』と金子さんの人間性を評価して、親しみを込めて思い出話をされる方が多い」と受けとめ「彼の純粋性、プログラミングに対する純真無垢な思いや愛情、熱情が、このWinnyという問題になってしまった技術を作り出した発起点になったのかな。そのプログラミングに対する情熱を胸の中に抱いて演じました」と力説する。
弁護活動について、松本監督は、当時の裁判資料7年分を全て拝読し「秋田弁護士による裁判の尋問は凄いな。映画の台本を読んでいるような素晴らしい緊迫感を感じました。映画の中では短く要約していますが、当時の秋田弁護士による裁判をほぼそのまま映画の中で描いております」と語った。反対尋問のシーンは踏み込んで描いており「弁護士や詳しい方じゃないと分からないところもありますが、説明的になるより、分かる方には分かって頂けるといいかな」と受けとめている。
ここで、壇弁護士より登壇者の皆さんにメッセージが送られていく。東出さんに向けて「東さんが金子役をやりたいと聞いた時、東出さんが女性に奥手な金子さんの役をやるとは…」と言いながらも「実際に会った東出さんは世間で云われるような人物ではなかった。凄く誠実で。一緒にお墓参りさせてもらった時、誰も見ているわけではないのに、金子さんの墓石を丁寧に洗っていました。感謝しています。東出さんが、自分の興味あることになったら突然饒舌になったり、報道での姿を見たりする度に、金子さんの姿を思い浮かべます。金子さんがプログラムを書いている時のように、東出さんも演技でしか自分を証明することが出来ないんだと思います。これから多くの役をやると思いますが、その中で自分自身を証明して頂ければ」と思いを伝えた。三浦さんに向けて「最初に三浦さんが私の役を聞いた時、私にはイケメン過ぎるなぁ」と漏らしながらも「三浦さんと東出さんと3人で食事をした時、私の役の立場に立って、明日世界が終わるとしたら最後に何を食べますか、と質問したら、三浦さんは『ラーメンですかね』と答えましたが、私は『明日世界が終わるのに食べることは考えられない』でした。三浦さんのおかげで、壇弁護士は格好良かった、と聞いており、恥ずかしいです」と苦笑い。松本監督に向けて「初めてお会いした時、『是枝監督と抜きましょう』『パルムドールを超えましょう』と言い出す弁護士を見て、どう感じたでしょうか。この人、頭おかしいんじゃないかな、と思ったかもしれません」と言い出しながらも「映画が世に出る前にコロナ禍や様々な苦労があったと思います。映画を完成させたのは、松本監督の情熱がありました。最終的に皆に観て頂いて後に評価されて、観た人の勇気に変わるような作品になって頂けたら」と思いを込めていった。
最後に、三浦さんは「檀さんが金子さんのことをを語る時、様々な気持ちを未だに持ち続けているんだな、と感じています。僕は、金子さんへの思いを映画の中でしっかりと表現出来ればいいな、と思っていました。大切に演じた役ですし、大切に作り上げた映画だと思っています」と思いを伝えていく。松本監督は「この映画には、当時にWinny事件で戦った弁護士の方々や金子さんが生きた時間が焼き付いている作品になっています。この映画をきっかけに今の社会や自分達が生きている世界を考えるきっかけになればいいな」と願っており「僕自身、Winny事件のことは映画に携わるまでは全く知らず、裁判や弁護士の方々の仕事についても全く知りませんでした。取材を重ねていく中で、どういう風に活動されていて、どうやって裁判に臨まれているのか、改めて知ることが出来ました。僕も含め、世の中を知らない人は沢山いると思うので、そういう方々にも届くような作品になると嬉しいな」と楽しみにしている。東出さんは「7年の裁判、逮捕、起訴、勾留、有罪、無罪、判決…は容易く人の人生を決めてしまう、とこの作品に携わって考えさせられました。しかし、僕が演じた金子さんという人は、世間で何と言われようと、時々によって有罪だろうが無罪だろうが、彼自身は人としては変わらない。彼自身が彼自身の人生を全うし、輝きの中で日々素晴らしい経験をしたり、人のことを思ったり、彼にも人生があったことを、この役を演じて知れたのが一番大きな喜びでした」と伝え、舞台挨拶は締め括られた。
©2023映画「Winny」製作委員会
映画『Winny』は、3月10日(金)よりTOHOシネマズ梅田ほか全国ロードショー。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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