3000年にわたり幽閉されていた孤独な魔人と、見果てぬ夢を追い求める学者が織りなす時空を超えた魂の旅の物語『アラビアンナイト 三千年の願い』がいよいよ劇場公開!
(C)2022 KENNEDY MILLER MITCHELL TTYOL PTY LTD.
イスタンブールを訪れた学者が瓶に閉じこめられていた魔人と出会い、やがて恋に落ちていく奇想天外な物語を描く『アラビアンナイト 三千年の願い』が2月23日(木)より全国の劇場で公開される。
映画『アラビアンナイト 三千年の願い』は、3000年もの間幽閉されていた孤独な魔人と現代の女性学者の「願い」をめぐる寓話を描く。古今東西の物語や神話を研究する学者アリシアは、講演先のイスタンブールで美しいガラスの小瓶を買う。ホテルの部屋に持ち帰ると、中から巨大な魔人が飛び出し、瓶から出してくれたお礼に「3つの願い」をかなえると申し出る。しかし物語の専門家であるアリシアは「願い事」を描いた物語にハッピーエンドがないことを知っており、魔人の誘いに疑念を抱く。魔人は彼女の考えを変えさせようと、3000年におよぶ自らの物語を語り出す。
本作は、『マッドマックス』シリーズの鬼才ジョージ・ミラーが、イスラムの説話集「アラビアンナイト」をモチーフに撮りあげたファンタジー映画。イギリスの作家A・S・バイアットの短編集「The Djinn in the Nightingale’s Eye」を原作に作り上げた。『パシフィック・リム』のイドリス・エルバが魔人、『サスペリア』のティルダ・スウィントンがアリシアを演じている。
(C)2022 KENNEDY MILLER MITCHELL TTYOL PTY LTD.
映画『アラビアンナイト 三千年の願い』は、2月23日(木)より全国劇場にて公開。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OSや神戸・三宮のkino cinéma 神戸国際等で公開。
監督がジョージ・ミラー、主演がティルダ・スウィントンとイドリス・エルバと聞けば、これは神々の闘いを描くアクション作品なのでは!?と予想した人も多いのではないだろうか。観終わってみると、彼はこんなにも穏やかで示唆に富む会話劇も撮れるのか、という意外な驚きだった。普通は「三つの願いを叶えてやろう」と持ち掛けられたら、お金持ちになりたい!とか、モテたい!とか、汚くて誰もが持っている欲望をさらけ出して、そこから冒険なり悲喜劇なりが始まるものだが、本作では、思わずうっとりするような清い願いが次々と語られる。
主人公アリテアを演じるティルダ・スウィントンは、神様や魔女やゾンビハンターなどの役の印象が強く、むしろこの人のほうが精霊じゃないの?という風格だ。しかし、今回は神々しいオーラは抑えに抑え、歴史や語学、そして「物語」に造詣の深い知的で物静かな学者という役である。冒頭で「自ら孤独を選び、十分に幸せな独りぼっちの女がいた」と紹介される姿はなんだか物悲しい。”There was a woman.Adequately happy and alone,alone by choice.” という文章の音色が、おとぎ話の出だしの語りのようで、「頭が良くて、好きなことをして生きているけど、本当は寂しいんでしょう?」と言われている気もしてくる。パソコンのキーボードを右手の人差し指一本でひとつずつ叩く姿にも、ちょっと不器用さがにじみ出ているアリテア。そんな彼女が、心の底では寄り添う相手を求めていて、ランプの魔人の話に聞き入るうちに彼に心を開いていく。恋愛映画としてとても上品で美しい一方で、人が誰かを求める気持ちには結局誰もが否定できないのだろうか、という気持ちにもなった。
こういったストーリーによくあるパターンとして、「本当はランプの魔人は存在せず、彼女の妄想なのでは?」というビターな真相も覚悟しながら鑑賞したのだが、観客には明確に示される構成だったので納得感のある演出だ。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』がお祭り的な映画だとしたら、本作は図書館でゆったりとお気に入りの本を読むような、とても心地の良い体験となることを約束したい。
fromNZ2.0@エヌゼット
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
- 最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!