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映画に育てられたし、恩返しをしたいし、もっと愛されたい…!『銀平町シネマブルース』小出恵介さんに聞く!

2023年2月10日

小さな名画座を舞台に、さすらいの男と映画を愛する人々が過ごす日々を描きだす『銀平町シネマブルース』が2月10日(金)より全国の劇場で公開される。今回、小出恵介さんにインタビューを行った。

 

映画『銀平町シネマブルース』は、『アルプススタンドのはしの方』『愛なのに』の城定秀夫さんが監督、『れいこいるか』『神田川のふたり』のいまおかしんじさんが脚本を手がけ、つぶれかけの映画館を舞台に繰り広げる人間模様を描いた群像悲喜劇。青春時代を過ごした街である銀平町に帰ってきた一文無しの青年である近藤は、映画好きの路上生活者の佐藤と、商店街の一角にある映画館である銀平スカラ座の支配人である梶原と知り合ったことをきっかけに、銀平スカラ座でアルバイトとして働くことに。同僚のスタッフや、老練な映写技師、売れない役者やミュージシャン、映画の世界に夢を見ている中学生など、個性豊かな常連客との出会いを通じて、近藤はかつての自分と向き合い始める。主人公の青年である近藤を小出恵介さんが演じ、”銀平スカラ座”の支配人・梶原役に吹越満さん、ホームレス・佐藤役に宇野祥平さんと実力派が脇を固める。撮影は、埼玉県川越市にある老舗ミニシアターである川越スカラ座で行われた。

 

高校生時代、頻繁にミニシアターへ通い、特集上映やオールナイト上映、2本立てや3本立て上映にもよく行っていた小出さん。大学生時代には、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで開催されたワークショップに参加し、8mmフィルムで撮影し3分間の作品を皆で作り上げる機会があり、脚本に近いものを書き、出演もしている。俳優として活動を始めて以降、演技をする上で井筒和幸監督の『パッチギ!』での経験が大きく「映画が”一番手強いメディア”という印象になりました。当時の井筒監督は元気でしたね。新人や若手を演出するのが得意な方。『岸和田少年愚連隊』『ガキ帝国』のような作品に関われたのは良かったですね」と印象深い。

 

今回、小出さんの本格的な主演復帰作となる本作は城定秀夫さんによる監督、いまおかしんじさんによる脚本となった。いまおかさんは『苦役列車』を書かれていたことを覚えていた小出さん。城定監督に関しては、今回をきっかけに知ることになり、フィルモグラフィからピンク映画作品や『アルプススタンドのはしの方』を拝見。城定監督がいまおかさんをリスペクトしている、と知り「このコラボレーションというのは、楽しみでしたね。劇中作品の『監督残酷物語』も最高でした。フル尺で観たいと思わせる魅力がありましたね。平井亜門君も素敵で、良い感じにあの世界で活き活きしていました」と作品性を気に入っている。

 

主人公の近藤猛を演じるにあたり「重なるところが非常にありました。個人的な境遇や状況が重なる役でもあったので、重ねられるところは重ねていきました。役と一緒に自分も再生し、また歩き出そう」と目標にしていく。共演者の中では、宇野祥平さんと共演したことがあったり、LIVEを観に行っていたゲスの極み乙女のドラマー<ほな・いこか>こと、さとうほなみさんを知っていた。その他、ミュージシャンやお笑い芸人、ベテラン俳優陣、監督の過去作に出ているお馴染みの役者など多彩なキャストが集まっていて、どうやって統一させるんだろうと思っていたというが、映画が完成してみると「うまくバランスが取れていた。だからといって監督が現場で目立った演出をしているわけではなく、自然とその世界の中にキャラクターを息づかせている」と驚かされた。

 

なお、近藤については、役柄等も含め説明は少なく「肉付けやバックグラウンドを作っていくことをある程度しておかないと、演じながら訳が分からなくなってしまうと良くない」と認識。とはいえ「余白が多いのは、演じやすさでもある。自分で膨らませられることが多い」と意欲的で「城定監督はまず役者に任せてくれるので、ある程度は俳優同士のケミストリー、出来上がったニュアンスで進められる。俳優はペースに乗りやすい。演じやすい現場だ」と受けとめている。映画館でバイトをしているシーンを演じていく中で「近藤になりきっている」という実感が湧いており「良い按排でしたね。30代中盤の近藤が、良い歳なのにバイトしている感じが良いな」と不思議な好感を抱いていた。

 

出来上がった作品を観た小出さんは「映画に対する愛が溢れた作品。作り手は勿論、出演者も作品に映画愛を乗せている。」と感慨深い。映画館での出来事を中心に描いた本作について「映画が好きだったけど離れちゃった人がいると思う。学生の時は観ていたけど、生活が始まって追われてしまい、観なくなってしまった人。映画館に行くのが面倒くさくなっちゃった方。一回は映画に出会ったけど、離れていっちゃった人達に『映画って良いじゃん』ってもう一回思ってもらえる作品かな」という印象があり「そういった方々が戻ってくるといいな」と願っている。現在の映画館に関する状況について「ミニシアターはあんなに流行っていたけど、どんどん減っていって、最近では渋谷TOEIも閉館し、悲しいことではある」と鑑みながらも「わざわざ出かけて大枚をはたいて携帯電話を触らずに時間を過ごす非現代的な瞑想めいた行動ですけれども、それによってしか得られないものがあったんじゃないか」と映画館への思いは熱い。自身の俳優としてのキャリアは『パッチギ!』から始まったことが大きく「映画に育てられた。もう一回、映画に戻って来られて、映画で再スタートを切って、これから、もっともっと映画に恩返しをしたいし、もっと愛されたい。僕自体も『この作品によって、映画ともう一回出会ったな』と感じている。ここから長い縁になるといいな」と未来を楽しみにしている。

 

映画『銀平町シネマブルース』は、2月10日(金)より全国の劇場で公開。関西では、2月10日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や心斎橋のイオンシネマシアタス心斎橋、京都・出町柳の出町座や烏丸御池のアップリンク京都や桂川のイオンシネマ京都桂川、神戸・三宮のkino cinema 神戸国際、2月17日(金)より和歌山のイオンシネマ和歌山で公開。なお、2月18日(土)にシネ・リーブル梅田と出町座、2月19日(日)にkino cinema神戸国際にて小出恵介さんと宇野祥平さんと城定監督を迎え舞台挨拶開催予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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