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アーサー王の甥が奇妙な冒険を通して成長していくダークファンタジー『グリーン・ナイト』がいよいよ劇場公開!

2022年11月21日

(C)2021 Green Knight Productions LLC. All Rights Reserved

 

アーサー王の甥が奇妙な冒険を通して成長していく様を描く『グリーン・ナイト』が11月25日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『グリーン・ナイト』は、奇妙な冒険の旅を通して自身の内面と向き合う青年の成長を圧倒的映像美で描くダークファンタジー。アーサー王の甥であるサー・ガウェインは、正式な騎士になれぬまま怠惰な毎日を送っていた。クリスマスの日、円卓の騎士が集う王の宴に異様な風貌をした緑の騎士が現れ、恐ろしい首切りゲームを持ちかける。挑発に乗ったガウェインは緑の騎士の首を斬り落とすが、騎士は転がった首を自身の手で拾い上げ、ガウェインに1年後の再会を言い渡して去っていく。ガウェインはその約束を果たすべく、未知なる世界へと旅に出る。

 

本作は、「指輪物語」の著者J・R・R・トールキンが現代英語訳したことで知られる14世紀の叙事詩「サー・ガウェインと緑の騎士」を、『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』のデビッド・ロウリーが監督・脚本を手がけ、映画化した。『スラムドッグ$ミリオネア』のデブ・パテルが主演し、『リリーのすべて』のアリシア・ビカンダー、『華麗なるギャツビー』のジョエル・エドガートンが共演している。

 

(C)2021 Green Knight Productions LLC. All Rights Reserved

 

映画『グリーン・ナイト』は、11月25日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや難波のTOHOシネマズなんば、京都・烏丸の京都シネマ、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OSや神戸・三宮のシネ・リーブル神戸等で公開。

今もなお語り継がれ、様々な作品で引用されることも多い『アーサー王伝説』。物語にはランスロットやガラハッドといった有名な登場人物が数多く登場するが、ガウェインを描いた『サー・ガウェインと緑の騎士』は、『指輪物語』の作者であるトールキンも魅了されたという。そして、『グリーン・ナイト』の監督であるデヴィッド・ロウリーもまた、ガウェインの物語に魅了された一人だ。『ピートと秘密の友達』や『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』といった壮大かつミニマルなファンタジー作品を手掛けてきた彼が、ガウェインの物語に新たな解釈を加え、伝説を語り直す。

 

『サー・ガウェインと緑の騎士』におけるガウェインは、騎士としての礼節と人間的な欲望や弱さに揺れ動く高潔な人間として描かれる。しかし、今作におけるガウェインはまだ騎士として大成していない未熟な人間だ。酒に溺れ、語るべき物語を持たない彼は、緑の騎士とのゲームに挑み、約束を交わす。それでもガウェインは高潔な騎士になれない。世間は彼を勇敢な騎士と呼ぶが、実際は取るに足らない人間であることをガウェイン自身が一番よく分かっている。世間の評価と自己評価とのギャップはガウェインに暗い影を落とす。そして、彼は迫りくる約束に怖気付き、誘惑にことごとく流される。なんと情けないことか。しかし、とても人間味に溢れている。

 

デヴィッド・ロウリーはガウェインを未熟な人間として描くことで英雄譚を解体し、物語に誠実さを取り戻そうとしている。英雄譚は男らしさや勇敢さが称えられる物語だ。しかし、実際には膨れ上がった自意識や過剰に飾り立てられた見栄によって誇張されたものも多い。そして、男らしさや勇敢さが築き上げた栄光は色褪せていく。栄華を誇った建築物が長い年月をかけて植物に侵食されていくのと同じだ。だからこそありのままの物語を語ることを選ぶ。弱さを受け入れることで、真に開かれた誠実な伝説になるのだ。

fromマリオン

 

「ナイツ・オブ・ラウンド」の名称でも有名な「アーサー王と円卓の騎士」。後に主要メンバーの一人となるガウェイン卿の若かりし日を描いた物語だと聞き、人気キャラのビギニングが描かれることを予想しつつ観賞させて頂いた。しかし、目の当たりにしたのはポピュラーな英雄譚とは印象の異なった、ダークファンタジックな世界観とパラノイドな人物達による観たことのない強烈でオリジナリティあふれる幻想譚だ。正直なところ、観ていると次第に円卓の騎士は重要ではなくなり、ランスロットもトリスタンも登場しないことすら忘れてしまっていた。

 

アーサー王を題材にした映画は、人気キャラやエピソード等をどれだけ盛り込めるか、というマニアを喜ばせる要素を要求されがちだが、本作はその傾向が皆無だ。本当に全く無い。アーサー王伝説の予備知識は一切不要。むしろ歴代の映像化作品にあった引用やオマージュは期待しないほうがよい。原作を「大胆に脚色」と言われているが、完全オリジナルのビジュアルとストーリーである。さらに、円卓伝説と密接に関わるケルト神話の要素などがふんだんに盛り込まれており、デヴィット・ロウリー監督のイマジネーションには驚嘆した。なにしろ。アーサー王をなぞらえた映画化作品で、待ち望んでいたデザインの「巨人」が登場するのが初めてだから!

 

とはいえ、他のアーサー王映画と決定的に違うのは、我らが聖騎士達やアイテムが出てこないところだろう。…ということで、円卓マニア目線からの感慨を少しだけ述べさせて頂きたい。1981年の『エクスカリバー』は、ガウェイン卿をリーアム・ニーソンが演じ、アーサー王の両親であるウーサー王とイグレイン、ヘレン・ミレン演じる魔女モルガンや主な騎士たちが全員登場する完全再現のオールスター劇だった。1995年の『トゥルーナイト』では、リチャード・ギア演じるランスロットがショーン・コネリー演じるアーサー王の最後を見送る名場面を描いていた。2017年の『キング・アーサー』では聖剣エクスカリバーを金属バットのように振り回すヤンキー風なアーサー王が大活躍した。1975年の『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』はナンセンスなギャグでひたすらボケ倒しっぱなしでグダグダ珍道中の爆笑コント作品だが、騎士たちの風貌や性格は律儀にきっちりと伝説に倣って表現されていた。

 

と書き連ねたように、円卓の騎士伝説のストレートな映像化を見たければ、すでに名作が多数存在しているのだ。しかし、今作は、ステレオタイプなイメージから脱却した、独創的なファンタジー作品として比肩するものがない眼福な作品である。メチャクチャ面白いファンタジー映画を観た!という満足感が残り、むしろ本作の路線で後に登場するアーサー王と円卓の騎士達を続編として映像化して観てほしいと願ってしまう。ハズレ無しの安心感が強いA24プロデュース作品群だが、今回も満足度の高い作品だ。

fromNZ2.0@エヌゼット

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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