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誰しも抱えているコンプレックスを描いている”みんなの映画”にしていってほしいな…『よだかの片想い』松井玲奈さんと中島歩さんと安川有果監督を迎え舞台挨拶開催!

2022年9月18日

顔のアザのせいで人付き合いに消極的だった女子大学生が、ルポルタージュの取材をきっかけに紹介された男性に心を惹かれていく『よだかの片想い』が全国の劇場で公開中。9月18日(日)には、大阪・梅田のテアトル梅田に松井玲奈さんと中島歩さんと安川有果監督を迎え舞台挨拶が開催された。

 

映画『よだかの片想い』…

女子大生の前田アイコは、顔の左側に大きなアザがある。幼い頃から畏怖やからかいの対象にされてきた彼女は、恋や遊びはすっかりあきらめ、大学院でも研究ひと筋の毎日を送っていた。そんなある日、「顔にアザや怪我を負った人」のルポタージュ本の取材を受けて話題となったことで、彼女を取り巻く状況は一変。本は映画化されることになり、監督の飛坂逢太と話をするうちに彼の人柄にひかれていく。飛坂への片思いを自覚したアイコは不器用に距離を縮めていく一方で、自身のコンプレックスとも正面から向き合うことになる。
本作は、直木賞作家である島本理生さんの恋愛小説を、『幕が下りたら会いましょう』『今日も嫌がらせ弁当』の松井玲奈さん主演で映画化。飛坂役には『グッド・ストライプス』の中島歩さんが演じている。『Dressing UP』で注目を集めた安川有果監督がメガホンをとり、『性の劇薬』の城定秀夫監督が脚本を手がけた。

上映後に松井玲奈さんと中島歩さんと安川有果監督が登壇。9月30日(金)に閉館を迎えるテアトル梅田の最後のロードショー公開作品となり、感慨深げな舞台挨拶となった。

 

島本理生さんによる原作小説の映画化を長年熱望していた松井さんは、今回の映画化について「長い時間をかけて制作して頂いて、そして公開まで至ったことが本当に嬉しいな」と感激しており、お客様の感想を読む度に「届いているな」と実感している。役作りにあたり「私は原作が凄く好きだったので、現場に原作を持っていって、脚本と原作にあるシーンを全部照らし合わせながら、『今日撮るシーンではアイコはこういう気持ちだ』と考えたり、アイコがこれまでどういう人生を経験してきたのか原作の中にも書かれていたりしたので、毎回確認しながら」と思い返しながら、演じる時には「飛坂を演じてる中島さんが投げかけてくれるものをキャッチしながら役を監督と一緒に作っていったな」と振り返っていく。中島さんは「まず、台詞を覚える。凄く覚えましたね」と重みを込め「特に最初の方、出会って本の感想を延々と語りますが、言葉にすればするほど嘘くさくなってしまう。ちゃんと覚えないと色々出来ないので」と物語る。松井さんとは初共演であり「クランクイン前に本読みで1回会ったきりですから、アイコの心が開いてほしいな、という思いで臨んでいた」と振り返る。

 

顔にアザのある女性が主人公であり、安川監督は当事者へのインタビューを沢山読んでおり「顔に囚われている時間が長く、他の子達が青春を送っている間に顔のことに囚われている。インタビューの内容が心に残りつつ、この映画では、気になっているけど毎日を頑張って過ごそうとしているアイコが見えればいいな」と願い「それを受け容れつつ毎日生きている人なので、意志が強く自立している女性として見えたらいいな」と思いを込め、松井さんの凛としたイメージを活かせるように演出した。飛坂については難しい役だと受けとめ「作り手側が原案者を映画化したい、という仕事の話と恋愛が同時進行しているので、昨今の状況を踏まえ危うく描かれているな」と正直に話す。脚本の城定さんと共に悩みながら作っており「原作では特化して描かれていない。イノセントな2人の恋愛模様が素敵だったので、両面を体現して下さった」と有り難かった。「飛坂は、一歩間違えれば滅茶苦茶軽い。気持ち悪いし、おかしくなってしまう。絶妙な塩梅を中島さんしか出せない味でやって下さった。中島さんじゃなければ大変なことになっていたんじゃないかな」と感謝している。中島さんについて、安川監督は「その場で思っているように飛坂の言葉を言ってくれたのが良かった」と印象に残っており、中島さんは「台詞をちゃんと覚えたので」と重ねていく。「台詞を覚えていく段階があり、思い出しながら言う段階があり、もっといくと、掃除機かけながら言えるようになってくる」と練習を重ねており「その場で自由に変化させられる。どんな芝居が松井さんから飛び出そうとも返せる」と自信となっている。

 

思い入れのあるシーンについて聞かれ、松井さんは「沢山あるんですけど、最後の飛坂に電話するところが、原作の中でも一番好きで、その場面を映像で観たいと思ったので『この作品を映像化してほしいです』とずっと言い続けていたので」と話す。中島さんは「最後がとってもびっくりしました」と明かし「こんな風になるとは…」と驚いた。「元々が文学作品なので、言葉の芸術。映画は映像的な説得力。台詞を役者が語る。役者から出る言葉も映画の表現。言葉無くして身体と映像で、この映画の落としどころを感じられた」と体感し「このシーンで映画が50点ぐらい上がった。小説からも映画が解放された。アイコは飛坂から解放された」と観終えられている。安川監督は「ボートに乗って2人が一緒に写真を撮っているシーンは、2人の素が見える。アイコが可愛らしい。アザがあって写真が苦手だったのに、笑顔全開」と個人的に好きなシーンを挙げていく。なお、このシーンは台詞がなかったが「ボートにスタッフが一緒に乗れないので、二人きりになってもらった。2人の会話が録音部さんのイヤフォンを通して聞こえてきて、渋い会話をしているのが聞こえちゃった」と明かし「スーパーの袋について、手が乾いて開かない時のことを話していることを聞いていた」と漏らした。なお、顔にアザのある女性を演じるにあたり、松井さんは原作に書いてあることを大切にして「アイコが何を感じていたか大切にしたい」と深く受けとめ「アザがある人を演じよう、とは全く考えておらず。自分の周りにも顔にアザがある方がいらっしゃるので話をしましたが、一番大事なのは原作のアイコと映画の中のアイコの気持ちなのかな」と考え、大事に演じている。

 

本作を含め「(not) HEROINE movies」シリーズでは、“へたくそだけど私らしく生きる”をテーマにしており、松井さんは「喋るのがへただなぁ」と告白。「会話のキャッチボールをしながら、喋れないんだな」と身に染みており「自己完結してしまう。相手とのキャッチボールがなんで出来ないんだろう」と困惑。中島さんは「基本的には不器用ですけどね。芝居も上手くないと思っているし」と謙遜しながら「洗濯は上手いし、掃除も上手いし。料理が全然上手くないですね」と明かした。安川監督は「監督っぽくいるのが難しいです」と打ち明け「威厳がある感じを出したいな、と思いながら、出せたことないですね。自己演出を頑張りたいな」と自身を顧みていく。また、”片想い”ということから、今大事にしているものや好きなものについて聞かれ、松井さんは「この作品は大事だなぁ。大好きで映像化したくて、本当に沢山の方の力をお借りして皆さんが見えないところで沢山の方が動いて下さったので、私の人生において『よだかの片想い』がとても大切な作品になったな」と感慨深い。中島さんは「安静でいること」を挙げ「昨日も一日舞台挨拶して、皆さんのご機嫌を伺いながら、ためになる話もしたい。撮影も疲れますよね」と同意を求めながら「静かに心を落ち着ける時間を大切にしたい」と力説する。安川監督からは「可愛いものが大好きで。家にある怪獣のぬいぐるみを大事にしています」と挙げてもらった。

 

なお、本作はテアトル梅田での最後のロードショー作品となり、松井さんは「閉館してしまうのは残念。私もここで自分が出演した作品を上映して頂き、舞台挨拶をしたことがあるので、寂しいな」という気持ちがあると同時に「『よだかの片想い』を最後にかけて頂ける機会を頂けたのがとても嬉しいな」と感激している。中島さんは「僕の出演した映画もかけて頂いたこともあります。最後になってしまうのはとても寂しいです」と感じながらも「劇場と共に映画も焼き付けていってほしい。映画館は引き続き来てください」と願っていた。安川監督は、過去に参加したオムニバス作品を上映してもらっているが「梅田ガーデンシネマでバイトしていたことがあり、チケットを預けに来たり、当たり前のようにある映画館として通って映画も見ていたりしました」と振り返り、閉館に驚き「無くなるなんてことがあるんだ」と寂しさがある。しかし、『よだかの片想い』が最後のロードショー作品となり「ぜひ作品を盛り上げたい。最後の作品として観てもらえたら良いな。映画館の最後の作品として興味持ってもらえたら嬉しいな」と思いを込めて語っていく。(別途、テアトル梅田の木幡明夫支配人からは「映画『よだかの片想い』はテアトル梅田で上映する最後のロードショー作品となります。閉館となる最後の日まで、心を込めて上映いたしますので、一人でも多くのお客様にご覧いただきたく思います」とコメントを頂いている)

 

最後に、松井さんは久しぶりの大阪での舞台挨拶が完売となり「皆さんに観て頂けたこともお会いできたことも嬉しいです。『よだかの片想い』をずっと大切に思って頂けたら嬉しいな」とメッセージ。中島さんは「アイコさんは顔にアザがある女性ですが、メタファーだと考えると、誰しも抱えているコンプレックスはあると思います」と踏まえ「抱えた人が最後に踊ることに何かを感じて頂けたと思う。つまり、これはみんなの映画だと思っています。周りの方にも薦めて頂いて、みんなの映画にして頂けたら」と願いを込めていく。安川監督は「松井さんがこの映画を企画されましたが、実現まで長引きました。やはりアザのある方を主人公にするにあたり躊躇するような会社が多かったようなんですが、もっと自然にフィクションとして映画の中でも扱っていくべきだ、と思いますし、思いを馳せれば当事者の方の苦しみが減ることもあると思います」と述べ「私も理解するきっかけとなったので、この映画を観て、引っかかるところや気に入ったところがあれば周りの方に薦めて頂ければ嬉しいな」と思いを込め、舞台挨拶が締め括られた。

 

映画『よだかの片想い』は、全国の劇場で公開中。関西の劇場では、大阪・梅田のテアトル梅田や難波のなんばパークスシネマや京都・烏丸御池のアップリンク京都等で公開中。また、9月23日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸等でも公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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