結果的に演じると言う意味では一緒なのですが、すごく新鮮な作業でした。……『怪盗クイーンはサーカスがお好き』クイーン役大和悠河さんに聞く!
2022年で発売から20周年を迎える、児童文学『怪盗クイーン』シリーズが、アニバーサリーイヤーの節目に合わせて、初めてアニメーション化を果たし、6月17日(金)より『怪盗クイーンはサーカスがお好き』が劇場公開される。今回は主人公であるクイーン役を務める大和悠河(やまと ゆうが)さんにインタビューを行なった。
映画『怪盗クイーンはサーカスがお好き』は、ねらった獲物を手に入れるため、予告状を送り、どんな状況でも華麗に盗み出してしまうという神出鬼没の大怪盗であるクイーンが、獲物を横取りしてきた謎のサーカス団との勝負に挑む内容となっている。大和悠河さんが演じるクイーンというキャラクターは、“怪盗の美学”を満足させる獲物だけを狙う大怪盗。“蜃気楼(ミラージュ)”の異名をとる変装の名人で、性別・年齢・国籍などが不明という点が珍しい、中性的なキャラクターとなっている。
大和さんといえば、元宝塚歌劇団宙組のトップスターとして男性役を務めていた経験からもクイーンはハマり役とも言える一方で、アニメーションの声優として演じるのは今回が初めてとなっている。今回のクイーン役は自身にとってはやりやすかったのだろうか。
『やりやすかったですね。クイーンはいろんな面を持っていて、技もある、かっこよく男らしいところもあれば、飛行船トルパドゥール号の中ではお茶目なところも見せてくれます。男役と女役を演じてきた自分にとっては演じやすく感じました。』
もちろん、声優自体は初挑戦であるがゆえに、これまでの演技との違いは感じたそうだ。
『結果的に演じると言う意味では一緒なのですが、すごく新鮮な作業でした。舞台では自分で身体を動かして台詞を言っていくことになるのですが、アフレコの場合は動く絵があり、その絵がすでに演じてくれている。「ここで瞬きした」「ここで振り向いた」とか一つ一つの動作を分析しながら声を入れていく作業が、新鮮で楽しかったですね。
初めは口の動きに合わせた尺で台詞を言わなければいけないので、慣れるまでは時間がかかったのですが、コツを掴んでくると楽しめました。』
収録は約1年前に行われており、収録はジョーカー役の加藤和樹(かとう かずき)さんとRD役の内田雄馬(うちだ ゆうま)さんの三人で行われたそうだ。掛け合いなどもやりやすく感じたそうで、現場での雰囲気も語ってくれた。『初めての声優だったので初めは緊張しながらだったのですが、三人の会話のシーンではクイーンもくだけた雰囲気で語るシーンが多く、やり始めるとテンポや呼吸がぴったり合っていき、楽しくなっていきましたね。』
これまではアニメーションを観ることもあまりなかったという大和さんは、今回の起用をきっかけにアニメーションを観始めたそう。「こんなにいろんなアニメがあるんだ。」と昨今のアニメブームに触れるきっかけにもなったようだ。
一方で、今回の『怪盗クイーンはサーカスがお好き』はもともと『怪盗クイーン』シリーズと呼ばれる児童文学作品が原作となっていることもあり、児童文学作品との関わりを聞いてみたところ、児童文学作品には子供の頃から馴染みがあったことを語ってくれた。
『子供の頃に「怪盗クイーン」はなかったのですが、“児童書的なもの”を読むのは大好きで、必ず放課後は図書室に行って本を読んでいました。当時は、読書をするとシールを貼っていくという仕組みがあって、クラスで一番になりたくて一生懸命図書室にこもって本を読んでいました。初めは絵本とかを読んでいたのですが、そのうち児童書のアルセーヌ・ルパンやシャーロック・ホームズを読むようになっていきましたね。それから自分でも買ってもらうようになり、アガサ・クリスティ作品など一式揃っていました。』
今回の起用にあたって、原作の怪盗クイーンシリーズも一通り読んだそう。
『子供の頃にあったら、ずっと読んでいると思います。大人になった今読んでも、読み終わった後にまた別のエピソードをもう一回読もうとなるほど、それぐらい大好きです。舞台も一緒かもしれないですが、読んでいる時だけ楽しい夢の世界に入れる時間がものすごく幸せなんですよね』
そんな原作の世界が、今回はアニメーションという映像となるわけだが、原作を読んでいるときとアニメーションという映像になったものを観てみて、違いは感じられたのだろうか。『いや、それがね、そういうことがないんです。逆に自分の中で曖昧だったイメージに、「これだ」というものが見えてきた感じがします。自分の脳の中だけで動いていたものが、リアルに動き出した感じでした。』原作に馴染みのあるファンほど、映像化された時の違和感を心配に思うのはよくある話だが、大和さんのこの感想には、安堵するのではないだろうか。
最後にこれから映画を観る人に、ここに注目して観て欲しいところを聞いてみた。
『今回クイーンが盗もうとしていた宝石をサーカス団に横取りされてしまうのですが、サーカス団がなぜそういう行動をしたのかというところが、深いストーリーになっているんですね。怪盗物のスリルはあるのですが、それと共にサーカス団の団長のホワイトフェイスを知れば知るほど、考えさせられる部分に到達する心に来るものが最後にあります。一言で言うと、全ての感情が詰まっているんですね。ワクワクとドキドキと、あとキュンとする部分もあるし、ホッコリする部分もあるし、最後にズドーンと深いところを感じる部分もある。ぜひ、ご家族の皆さん、お友達や恋人、一人でも、何度でも観てもらって、この時間を共有できたらいいな、と思っています。』
映画『怪盗クイーンはサーカスがお好き』は、6月17日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の梅田ブルク7や難波のTOHOシネマズなんば、京都・七条のT・ジョイ京都、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OS等で公開。
Interview & edit by ネジムラ89
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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