フィルムの中に1秒だけ映し出されている娘の姿を追い求める父親と、幼い弟と暮らす貧しい少女の出会いを描く『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』がいよいよ劇場公開!
(C)Huanxi Media Group Limited
文化大革命中の中国を舞台に、強制労働に送られ妻子と別れた男が娘の映ったフィルムを探そうと強制労働所を脱走する様子や、孤児の少女との出会いと不思議な絆を描く『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』が5月20日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』…
1969年、文化大革命下の激動の中国。造反派に抵抗したことで強制労働所送りになった男は、妻に愛想を尽かされ離婚となり、最愛の娘とも親子の縁を切られてしまう。数年後、「22号」という映画の本編前に流れるニュースフィルムに娘の姿が1秒だけ映っているとの手紙を受け取った男は、娘の姿をひと目見たいという思いから強制労働所を脱走し、逃亡者となりながらフィルムを探し続ける。男は「22号」が上映される小さな村の映画館を目指すが、ある子どもが映画館に運ばれるフィルムの缶を盗みだすところを目撃する。フィルムを盗んだその子どもは、孤児の少女リウだった。
本作は、北京2022冬季オリンピック・パラリンピックで開閉会式の総監督を務めたことでも注目を集めた巨匠チャン・イーモウ監督が、映画をめぐるさまざまな思いを描いた人間ドラマ。『最愛の子』『山河ノスタルジア』のチャン・イーが主人公の男を演じ、少女リウ役を本作でデビューを飾ったリウ・ハオツン、村の映画館を仕切るファン電影役を『道士下山』等で知られるファン・ウェイが演じる。
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映画『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』は、5月20日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや難波のTOHOシネマズなんば、京都・烏丸の京都シネマ等で公開。
田舎の農村にある、古くて小さな映画館の小さな映写室。映写技師がフィルムを映写機にセットし、強いライトによってスクリーンに映像が映し出されると、場内いっぱいにさんざめく観客達が一斉に歓声を上げる。この風景だけで映画を好きな観客の心はすっかり掴まれてしまう。
時は今からちょうど半世紀前の1969年、文化大革命が真っただ中の中国。タイトルや予告等で少し明かされている通り、主人公はある「1秒」を探し求めている。とても切ない内容が秘められていた。物語を見守る側は「見つけることが出来るのだろうか」と緊張が高まっていくと共に「見つけられたとしてどうなるのか」と不安も徐々に増していく。序盤では、(当事者達は必死なのは分かっていても)どうにも滑稽に見える追跡劇に笑いをこらえてしまう。中盤にある絶望的なトラブルには「これじゃぁ、もうダメなの?」と涙目になりながらハラハラする。そして、問題の「1秒」に関する件は簡単には着地しない。巨匠チャン・イーモウ監督による物語を運ぶ手腕はさすがである。
令和を迎えた現代では「町中の人と一緒に騒ぎながら、満席の映画館でフィルム上映の映画を観た」という原体験のある人は少ないだろう。それでも、いつかどこかの映画の場面で観たからなのか、それとも映画ファンには、かつての風景に呼応する遺伝子が組み込まれているのか、クライマックスで描代える映画館の場面では、たまらなく懐かしくて愛おしい感情があふれ出す。今作は、映画を愛する全ての人に、そして誰かのことを大切に思う全ての人に、深く静かに響く映画と人生への賛歌が詰まった作品だ。本作を映画館で観ないで、どこで観るのですか?と言い切らせて頂きたい。
fromNZ2.0@エヌゼット
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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