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ボーイミーツガール的なストーリーだと感じさせてフェイントをかけたい…女性による復讐と新世界創造を描く『Cosmetic DNA』大久保健也監督に聞く!

2022年3月25日

男性優位の社会で傷ついた美大生の女の子が、ふたりの仲間に出会い、心を取り戻していくとともに、社会に立ち向かうさまを、ポップな音楽と鮮やかな色彩で描く『Cosmetic DNA』が関西の劇場でも3月25日(金)より公開。今回、大久保健也監督にインタビューを行った。

 

映画『Cosmetic DNA』は、男尊女卑の暴力に傷つけられた美大生が、自分たちの未来を創造するため革命を起こそうとする姿を、スタイリッシュでポップな映像で描いたスプラッターミュージカル。コスメを愛する美大生の東条アヤカは、自称映画監督の柴島恵介に騙されて薬物を盛られ、性的暴行を受ける。泣き寝入りせざるを得ない状況に追い込まれた彼女は精神的に病んでいくが、大学院生サトミやアパレル店員ユミとの出会いにより、少しずつ心を取り戻していく。そんな折、柴島の次の標的がユミだと知ったアヤカは、突発的に柴島を殺害。死体処理を進める中で、人間の血液が理想の化粧品の材料となることに気づく。主演は『血を吸う粘土 派生』の藤井愛稀さん。大久保健也監督の長編デビュー作で、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020で北海道知事賞を受賞した。

 

女性の復讐劇を映画化するにあたり、大久保監督は「女性と組んで脚本を執筆したほうがいいのか」と検討。だが「プライベートでは、女っぽい、と云われる。人との絡み方や甘え方が男っぽくない」と気づき、「自分の中でどこまで女性性を出せるか」と挑戦した。フェミニズムに多少なりとも関わっている映画も参考に観ており「アメリカ映画では女性が男性を殴っている。日本映画の場合、抑圧されて悲しいところにフォーカスが当てられるが、反逆まで辿り着かない。女性監督が、女性が男性を殺す映画を撮ることはタブーがあるような気がする。男性監督が書くなら差し障りがない」と受けとめ、男性だから描けることを意識していく。また、物議を醸すことも意識しており、様々なディスカッションが行われることも期待した。

 

当初、孤独な人間をダークヒーローにして戦っていくことをストーリーの大筋として考えたが、監督自身がおもしろいと感じず。「シスターフッドとして女性3人で頑張るストーリーにしよう」と模索し「対になる男性をストーリーを進ませるためだけの存在にはしたくなかった。登場するからには生身の人間だと思ってほしい。ボーイミーツガール的なストーリーだと感じさせて、フェイントをかけたい」と構想。ストーリーの要約が書かれたプロットをメインである3人の女優に渡した際、京都造形芸術大学での学生時代に監督の経験がある藤井愛稀さんは、構想中の作品に似ていた部分もあり、運命を感じ「やりたかった企画にようやく出会えた」とお気に入り。仲野瑠花さんは、想定より過激な作品に出演することに怖がってしまう。川崎瑠奈さんは、ファッションや化粧について取り上げていることにテンションが挙がったと同時に、幼い頃から芸能活動で嫌な思いもしたことがあり問題意識を持ち「この映画で訴えたい」と意欲的になっていた。

 

長編映画の制作は今作が初めてであり、脚本執筆に4ヶ月、撮影は、飛び飛びのスケジュールとなり8ヶ月、編集作業に半年程度を要してしまう。スタッフが多くおらず、プロデューサーの西面辰孝さんと2人で仕上げている。撮影終了後、撮影素材も膨大となり、まずは整理だけでも1ヶ月を要し、完成図を想定できなかった。編集作業を進めていく中で、追加撮影が必要となり西面さんにも協力してもらったことがあったが「完成間近の時には、データのあるハードディスクが壊れてしまい、修理しないといけなかった。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の応募締切3日前で徹夜を続けて間に合った」とまで告白。なお、映像の色彩を補正するカラーグレーディングについては拘っており「大好きな中島哲也監督の作品を意識している。周りより目立たないといけない、と認識し、この映画は他と違うと思わせたい。自分の美意識から外れてもいいので思い切った」と説く。

 

既に各地の劇場で公開されており「若い女性の方から、熱い感想を頂き、救われた」と手応えがある。「作って良かった。この映画を必要としている10〜20代の女の子が1人ぐらいはいると思って、ギリギリのところで完成させた」と納得しており、今後も「カーチェイスがやりたい。身分不相応なスケール感のある脚本を書いてしまったら、撮るしかない。深作欣二監督のような作品をあたためています」と更に意欲的だ。

 

映画『Cosmetic DNA』は、関西では、3月26日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、4月1日(金)より京都・九条の京都みなみ会館で公開。シネ・ヌーヴォでは、3月26日(土)の上映後に、藤井愛稀さん、吉岡諒さん、西面辰孝さん、大久保健也監督、3月27日(日)の上映後に、熊田佳奈子さん、西面辰孝さん、大久保健也監督を迎え、舞台挨拶を開催。京都みなみ会館では、4月2日(土)の上映後に、藤井愛稀さん、川崎瑠奈さん、西面辰孝さん、大久保健也監督、4月3日(日)の上映後に、川崎瑠奈さん、西面辰孝さん、大久保健也監督を迎え舞台挨拶が開催される。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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