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原作小説を書き上げた上で脚本を執筆、役者に世界観が伝わり有効なコミュニケーションツールになった…『土手と夫婦と幽霊』渡邉高章監督に聞く!

2022年3月11日

葬式の帰り道に、土手沿いに住む女と出会った小説家が体験する世界を、モノクロ映像で淡々と描き出す『土手と夫婦と幽霊』が関西の劇場でも3月12日(土)から公開。今回、渡邉高章監督にインタビューを行った。

 

映画『土手と夫婦と幽霊』は、インディーズ映画ならではの自由な視点で、普遍的なテーマを描き続けてきた渡邉高章監督が、男女のひとつの最終形として夫婦の姿にスポットを当てたドラマ。葬式に足を運んだ小説家の私。その帰りに私が高橋に誘われて向かったのは、土手沿いに暮らす女の家だった。目覚めた私は、記憶が思い出せずに帰る場所もわからず、女の家に居座ることになった。不味い食事、ぬるい風呂……輝きを失った女との時間。そして、その世界にはあるルールが存在した。

 

当初、『土手と夫婦』というタイトルの短編映画を作ろうとしていた渡邉監督。「夫婦がもう一度やり直そうとすることをテーマで作ろう」と考えていたが、直ぐ撮影に入れず、作品を追求していく。小説家が主人公の作品だったため、小説家になったつもりで、原作小説を書いてみた。結果的に、まとまった小説となり、原作として扱い映画化を試みる。他ではあまり見かけない試みであり「原作を書くことで映画の世界観を膨らませた。脚本にした際には、小説の映画版なのか、或いは映画のノベライズなのか、と考えらえる二重構造にして複雑化しました」と説く。なお、あの世とこの世を描いたストーリーであり「私は多摩川沿いの川崎に住んでいる。川を映画の舞台にすることが多く、境界線のメタファーとして場所を選んでいる。あの世とこの世を隔てる境界線を描いている。今までの作品の流れの系譜にある」と話す。

 

キャスティングにあたり、以前の作品に出演頂いた方からオファーしており「今作では、自分が撮影・録音とメインスタッフで作ろうとしていた。俳優のケアまで出来ない。お互いに分かり合っている仲間からキャスティングしました」と明かす。主演者に対して「原作小説を渡されるとは思っていなかっただろう」と捉えているが「原作を役者さんに渡して、撮影前に世界観が伝わった。主演の2人は、気に入ってくれて、拠り所にして演じてくれた。現場でコミュニケーションする上で有効なツールになりました」と手ごたえを感じている。

 

撮影は5月に実施しており「土手が暑くて苦労した。土手は日陰がなく、俳優さんが大変だった」と告白。自宅でも撮影し、家と土手を行き来しており「日傘と日焼け止めクリームを持って撮影に挑んでいたんですが、今となっては良き思い出」と苦笑い。また、本作の映像はモノクロになっており「日焼けが分からなくなった」と打ち明けながら「元々は、カラーにする予定がなかった。撮影はカラーで撮っているが、世界観に合わせるように撮った時のイメージが乖離していた。最終的に編集でモノクロにしてみて良かった」と納得している。なお、撮影現場を監督自身が1人で回しており「心配事が多すぎた」と反省しており「映画制作の工程の中で開放されるのが編集。編集段階で、映像を繋げたり音楽をつけたりしていく中で、映画になる」と実感していた。映像に合わせる音楽については、過去作でもお世話になっている音楽家の押谷沙樹さんに依頼しており「映画の象徴となる主題曲をお願いした。心理的なモノローグが多いので、心情的な効果音や不穏な音を依頼した」と話す。

 

既に各地の劇場で公開しており「商業映画とスタイルが違うので、違和感を持つお客さんもいます。作品の意味に気づいてくれた方がおもしろがってくれた。食卓でのシーンに笑ってくれた」と素直な反応に喜んでいる。関西のお客さんからの反応も楽しみにしていた。現在は、20分程度の短編映画を制作中の段階にあり、独特のテイストがある作品を期待したい。

 

映画『土手と夫婦と幽霊』は、3月12日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、3月18日(金)より京都・九条の京都みなみ会館、4月23日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。なお、シネ・ヌーヴォでは、3月12日(土)に星能豊 さんとカイマミさんと押谷沙樹さん渡邉高章監督、3月13日(日)にカイマミさんと押谷沙樹さん渡邉高章監督を迎え舞台挨拶が開催される。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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