ロンドン・ナショナル・ギャラリーで1961年に起きたゴヤの『ウェリントン公爵』盗難事件を題材にしたコメディドラマ『ゴヤの名画と優しい泥棒』がいよいよ劇場公開!
(C)PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020
60歳のタクシー運転手が、BBCの受信料無料を求め起こした事件と、その裏にあったもうひとつの真相を描く『ゴヤの名画と優しい泥棒』が2月25日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』は、1961年に実際に起こったゴヤの名画盗難事件の知られざる真相を描いたドラマ。1961年、世界屈指の美術館ロンドン・ナショナル・ギャラリーからゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれた。この事件の犯人はごく普通のタクシー運転手である60歳のケンプトン・バントン。長年連れ添った妻とやさしい息子と小さなアパートで年金暮らしをするケンプトンは、テレビで孤独を紛らしている高齢者たちの生活を少しでも楽にしようと、盗んだ絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。しかし、事件にはもうひとつのある真相が隠されていた。
本作では、主人公ケンプトン役を『アイリス』のジム・ブロードベント、妻のドロシー役を『クィーン』のヘレン・ミレンが演じるほか、フィオン・ホワイトヘッド、マシュー・グードらが脇を固める。2021年9月に亡くなった『ノッティングヒルの恋人』のロジャー・ミッシェル監督がメガホンを取り、本作が長編劇映画の遺作となった。
(C)PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020
映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』は、2月25日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や難波のTOHOシネマズなんば、京都・烏丸の京都シネマ、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OS等で公開。
ゴヤの名画盗難事件なんて出来事が本当にあったの!?と驚かされる本作。名画を盗んだとされるケンプトン・バントンは、ユーモアたっぷりに話す楽観主義者である活動家。英国の国営放送BBCに徴収される受信料に対抗すべく、独自の理論を展開しても、最終的には短い期間でも刑務所に収容されてしまう。だが。社会に対してほんの少しだけ風穴を開けることが出来れば、いつかは大きな動きに展開していく可能性があることも提示する。ゴヤの名画「ウェリントン公爵」を盗み、身代金でBBCの受信料を肩代わりすることが出来るならば、自身が罪を背負うことを厭わない。どれだけ非難を受けようとも、喜ぶ人がいるなら町の英雄にもなれる。
裁判になっても、彼のスタンスは変わらなかった。人生を自分のためにではなく、皆のために社会をよくすることをモットーにして、ユーモアたっぷりに持論を展開していく。いつしか陪審員達の心も動かしてしまった。冷静になれば絵画一式を盗んだ事実に関する罪に対する罰を受けるべきだが、このような判決が実際に下されたことに驚かされる。改めて、陪審員裁判がもたらすことの意味も考えさせられてしまう。社会に対して行動を起こした彼の生き方を通して、声を上げることの大切さと共に、どこまでも弱き者の心に寄り添う優しさに胸を打たずにはいられない一作である。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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