自分の足りない部分を補ってくれる素敵な人を大切にしてもらいたいな…『幕が下りたら会いましょう』松井玲奈さんと前田聖来監督を迎え舞台挨拶開催!
劇団員の女性が、妹の死をきっかけに、今まで逃げてきた過去と向き合おうとする姿を映しだす『幕が下りたら会いましょう』が全国の劇場で公開中。12月5日(日)には、大阪・梅田のテアトル梅田に松井玲奈さんと前田聖来監督を迎え、舞台挨拶が開催された。
映画『幕が下りたら会いましょう』は、『今日も嫌がらせ弁当』『ゾッキ』、NHK連続小説「エール」などに出演する松井玲奈さんが映画単独初主演を果たし、不器用ながらもまっすぐに生きる女性を描いた人間ドラマ。実家の美容室を手伝いながら売れない劇団を主宰する麻奈美のもとに、東京で働く妹の尚が亡くなったとの知らせが入る。麻奈美が劇団員の結婚祝いで仲間たちと馬鹿騒ぎをしていた夜、尚は資材置場で死んでいたのだという。その日、麻奈美には尚からの着信があったが、彼女は電話に出なかった。妹の突然の死に、心揺さぶられる麻奈美だったが…
主人公の妹を『犬猿』の筧美和子さん、姉妹の母を『カメラを止めるな!』のしゅはまはるみさんが演じる。
上映後、松井玲奈さんと前田聖来監督が登壇。和やかな雰囲気の中で舞台挨拶が繰り広げられた。
本作が映画単独初主演となる松井さん。大阪での舞台挨拶もかなり久しぶりで「大阪で映画を観て下さるお客様に会えたことが嬉しいな。その作品が自分が主演している作品であることも光栄なことだな」感激。前田監督にとっては商業映画初作品となり「商業映画を撮らせて頂けることがとてもビッグチャンス過ぎて。なぜ今ここにいるんだろう」と信じられない奇跡的なことだと感じ「松井さんに主演して頂いて、全国で映画が公開されて、大阪で観れる状態は嬉しいことだな」と感動している。
コロナ禍での映画制作となり、Zoomで打ち合わせすることが続き、前田監督は「松井さんと直接お会いしたのは衣装合わせの時が初めてだった。それまで1年ぐらいずっと話させて頂きました」と明かす。とはいえ「コロナ禍だったから直接会わない分、密に何度も連絡が取れたり脚本の打ち合わせをずっと出来たりしたのが、この時期ならではだったのかな」と貴重な意見として前向きに捉えていた。松井さんも「オンラインで打ち合わせしたり台本の読み合わせしたりしたのが今までにない経験だったので、初めてのことで戸惑う瞬間もあった」と打ち明けるが「撮影に入ってしまうと、感染対策はしっかりしているんですけど、あまり大変だったことはなく、いつも通り自分の役と作品に集中して参加することが出来たかな」と満足している。
前田監督に対して、松井さんは「私の10倍ぐらいのエネルギーがあるんですよ。ハツラツとしている」とパワフルな方という印象が大きく「私が質問したことに対して、シーンの意図や麻奈美という役に対しての答えを多く返して下さるんですね。その熱量を感じた時、エネルギッシュな方だし、自分の撮りたいものがハッキリしている方なんだな。生命力のエネルギーに満ち溢れている」と表現。これを受け、前田監督は「エネルギッシュに思ってもらっていたとは思えないぐらい。撮影中は必死過ぎて、その必死さがエネルギーに見えていたかなぁとは思うんですけど」と遠慮ぎみ。逆に、松井さんについて「オンラインでお会いした時から今までずっとお姉さん的存在。演出が拙くても、汲み取って下さって。ご自身で考えて消化して演技して下さるので、支えられたな」と感謝している。
松井さんは脚本づくりから関わっており「ラストシーンは早い段階で決まっていて、なぜラストにあるのか監督が思いの丈を語って下さった。そこに至るまで麻奈美がどういう行動をして、どういう気持ちになれば、私も演じる時に麻奈美がいる地点にいけるだろうかと重点的に話していました」と振り返っていく。さらに「台本を読んでいて気になったことを凄く深くお話して、脚本に書かれていない麻奈美と尚のバックボーンを教えて頂きながら、脚本づくりに参加できたので、役作りとしても描かれていない麻奈美を深く知ることが出来ました」と貴重な経験をさせてもらった。
また、感情表現を削ぎ落とす演出に前田監督は注力しており、麻奈美について「出したい感情を逆側に放出しちゃう方。自分が寂しいと思った感情をぶっきらぼうに出してしまって、さらに違う感情もぶっきらぼうに出してしまう」と見極め「表に出る瞬間と出ない瞬間を台詞で伝えず麻奈美の行動や表情で映像に載せていきたいと感情面の話をさせて頂くことが多く、台詞の言い回しより感情の伝え方について意見交換させてもらったかな」と思い返す。松井さんは、様々な部分が削ぎ落された麻奈美という役について「お酒を吞んでいる時しかふわっと砕けた感じにはならなかった。基本的には、抑えてやっていました」と冷静に話す。なお、早苗と麻奈美の関係性について「監督が『お互いを補い合っている存在』だと話していて『プーさんみたいだな』と思ったんです。プーさんは楽観的でなんでも『大丈夫だよ』と云ってしまうんです。ピグレットは心配症で『大丈夫?大丈夫?』と追っかけている。心配し過ぎちゃうピグレットに対してプーさんは『そんなに気にしなくても大丈夫だよ』と云って、ずっと2人で補い合っている。その関係性に近からず遠からず。私の中ではシンパシーを受けますね」と独自のプーさん理論を展開していった。
最後に、松井さんは「麻奈美は自分が演じていても、映像の中で孤独な存在。周りと距離をとっている部分があったんですけど、気づくと母親や早苗や尚自身も、1人で寂しいと思っていても自分がいなくなった後に自分のことを思ってくれる相手がいる。実は自分が気づいていないだけで誰かの視線を受けている」と周囲からあたたかさに改めて気づき「皆さんにとって、自分の足りない部分を補ってくれる素敵な人を大切にしてもらいたいな」とメッセージを送る。前田監督は「この作品は様々な見え方があるのかな、と思っています。家族にフォーカスにあててみれば、家族に思いを馳せる瞬間もあり、演劇にフォーカスをあてると、人生に迷う大人の葛藤にも見えます。一つでも皆様の中に共感する部分やふと思い出すような部分を心の片隅に置いて頂けたら嬉しいな」と伝え、舞台挨拶は締め括られた。
映画『幕が下りたら会いましょう』は、全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田や難波のなんばパークスシネマ、京都・七条のT・ジョイ京都や烏丸御池のアップリンク京都、兵庫・尼崎のMOVIXあまがさき等で公開中。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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