血のつながらない新しい家族の不思議な共同生活がつむがれる『岬のマヨイガ』がいよいよ劇場公開!
(C)柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会
岬にある古民家で、それぞれに事情を抱えた17歳と8歳の少女たちと老婆が共に暮し、周囲と交流していくさまを、鮮やかな海を自然を背景に描く『岬のマヨイガ』が8月27日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『岬のマヨイガ』は、大きく運命が変わった女性達の不思議な共同生活を描いた物語。ある事情から家を出た17歳のユイと、両親を事故で亡くしたショックで声を失った8歳のひより。それぞれ居場所を失った2人は、不思議なおばあちゃん、キワさんと出会い、岬に建つ古民家「マヨイガ」で暮らすことに。そこは“訪れた人をもてなす”という、岩手県に伝わる伝説の家だった。マヨイガとキワさんの温もりに触れ、2人の傷ついた心は次第に解きほぐされていく。そんなある日、「ふしぎっと」と呼ばれる優しい妖怪たちがキワさんを訪ねてマヨイガにやって来る。
本作は、児童文学作家の柏葉幸子さんが東北の民話を盛り込みながらつづったファンタジー小説をアニメーション映画化。主人公ユイの声を芦田愛菜さんが演じる。アニメ『のんのんびより』シリーズの川面真也さんが監督を務め、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズの吉田玲子さんが脚本を担当。
(C)柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会
映画『岬のマヨイガ』は、8月27日(金)より全国の劇場で公開
岩手県に伝わる、「マヨイガ」と呼ばれる、訪れた人をもてなす家。人生において様々な理由によって”迷い道”を彷徨っている人達を優しく迎え入れてくれる大切な場所として描かれていく。岩手県含め東北地方を襲ったあの出来事から10年を経て、こういったアニメーションが出来上がってくることが喜ばしい。ドキュメンタリー作品や劇映画では再生に向けた日々を捉えた作品が徐々に公開されている中で、アニメーションに取り入れ大々的に公開される作品としては初めてではなかろうか。再生に向けて頑張ろうとする気持ちと、未だに存在せざるを得ない不安な感情が象徴的に怪物として描かれ、違和感なくファンタジーなアニメーションとして楽しむことが出来る。
主役のユイを演じるのは芦田愛菜さん。完全に役にハマっており、名前を明かさなければ分からないレベル。声優としてプロフェッショナルな貫録を放っている。おばあちゃんのキワさんを演じるのは大竹しのぶさん。『漁港の肉子ちゃん』でもその実力を見せつけたが、本作では本当に実在していそうなおばあちゃんである。この2人による不思議なアンサンブルがおもしろい。そこに、様々な映画音楽を手掛けてきた音響系ミュージシャンの宮内優里さんによる優しいメロディーが寄り添ってくれる。そして、最後に羊文学による主題歌「マヨイガ」がユイとひよりが幸せになるように願いを込めて紡がれていく。誰にとっても大切な居場所があることを伝えてくれる一作として仕上がっている。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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