香港ポップスのアイコンだったデニス・ホーが市民のアイデンティティと自由を守るために声を上げ、民主活動家へと変貌していくさまを映し出す『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』が関西の劇場でもいよいよ公開!
(C)Aquarian Works, LLC
2014年に“雨傘運動”と呼ばれる香港反政府デモに関わったスター歌手、デニス・ホーを追ったドキュメンタリー『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』が7月23日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』は、香港ポップス界のスーパースター、デニス・ホーが、アーティストから民主活動家へと変貌していく様を長期密着取材で追ったドキュメンタリー。2014年、警官隊の催涙弾に対抗し、雨傘を持った若者たちが街を占拠したことから「雨傘運動」と呼ばれる香港の民主化デモ運動に、香港を代表するスター、デニス・ホーの姿があった。同性愛を公表する彼女は、この雨傘運動でキャリアの岐路に立たされていた。彼女は中心街を占拠した学生たちを支持したことにより逮捕され、中国のブラックリストに入ってしまう。スポンサーが次第に離れていき、公演を開催することが出来なくなった彼女は、自らのキャリアを再構築するため、第二の故郷であるモントリオールへと向かう。
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映画『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』は、関西では、7月23日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田と京都・烏丸の京都シネマ、7月31日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。
天安門事件を受け、危険を察知し、10代の日々を家族と共にカナダ・モントリオールで過ごしたデニス・ホーさん。民主主義の原則を学び、揺るぎない信念を以て価値観を構築した。敬愛するシンガーとの出会いをきっかけに歌手を目指し、遂には自身のレーベルを起ち上げる。インディペンデントでありながらも、香港の音楽シーンにおいて中核を担う歌手としてワールドワイドに活躍していく…とまで聞くと、カッコいいシンガーソングライターが香港にいたんだ、と彼女を知らなくとも親しみを感じてしまう。
更には、慈善基金の団体を設立し、社会運動家としても活動していく。シンガーソングライターである前に一人の人間として香港で活動していくことは大いに意義がある。マスコミやSNSで揶揄されることがあったとしても、自分の信念を貫く姿は格好良い。だからこそ、熟慮の上で自身が同性愛者であることをカミングアウト出来た。普遍的な愛についても歌っていける。そして、雨傘運動を支持し、危険を顧みず、最前線で意義ある主張を友好的な対話を試みていった。雨傘運動の果ては世に知られる通りだが、彼女の活動は前途多難に。インディペンデントなアーティストとして出来得る限りの力を最大限に発揮していく。彼女の姿にはエールを送るしかない。
なお、現在の状況下において、本作は、香港で上映されることはほぼ不可能な状態となっている。だからこそ、日本では、昨年の東京フィルメックスで公開され、今回、劇場公開されることは意義深い。日本でも香港のデモに関するドキュメンタリーがいくらか劇場公開されているが、1人のシンガーソングライターの視点を以て語られる本作も届くべきところに届くことを願ってやまない。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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