カナダのケベックで世捨て人のもとに身寄りのない女性が現れたことで展開する『やすらぎの森』が関西の劇場でもいよいよ公開!
(C)2019 – les films insiders inc. – une filiale des films OUTSIDERS inc.
湖畔で余生を送る老人たちと、そこに現れた壮絶な過去を持つ老女による再生の物語を描く『やすらぎの森』が6月18日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『やすらぎの森』は、カナダ・ケベック州の深い森で静かに暮らす年老いた世捨て人たちの姿を描いた人間ドラマ。カナダ・ケベック州、人里離れた深い森にある湖のほとり。その場所にたたずむ小屋で、それぞれの理由で社会に背を向けて世捨て人となった年老いた3人の男性が愛犬たちと一緒に静かな暮らしを営んでいた。そんな彼らの前に、思いがけない来訪者が現れる。ジェルトルードという80歳の女性は、少女時代の不当な措置により精神科療養所に入れられ、60年以上も外界と隔絶した生活を強いられていた。世捨て人たちに受け入れられたジェルトルードはマリー・デネージュという新たな名前で第二の人生を踏み出した。日に日に活力を取り戻した彼女と彼らの穏やかな生活。しかし、そんな森の日常を揺るがす緊急事態が巻き起こり、彼らは重大な決断を迫られるようになる。
本作では、2019年11月に死去したアンドレ・ラシャペルがジェルトルード / マリー・デネージュを演じ、共演にはジルベール・スィコット、レミー・ジラールが名を連ねた。監督は本作が3本目の長編劇映画となるケベック出身のルイーズ・アルシャンポーが務めている。
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映画『やすらぎの森』は、関西では、6月18日(金)より京都・烏丸の京都シネマ、7月9日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田と神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
社会に背を向けて世捨て人となる…厳密にいえば、完全に社会との接点をなくすことは出来ない。橋渡しになる人物が存在することで成立する。世捨て人になる人はそれぞれに理由を持つ。同じ境遇になってしまうと、人生の行く末を鑑み、社会との接点を切りたくなってもおかしくない。されど、人間は1人では生きていけず。誰と生活を共に営むか重要である。そして、どのような社会に身を置くか、大切に考えたい。されど、新たな人間を迎え入れた時、望んでいなかった変化に対してどのように対応できるか。穏やかだった生活の中に、1つの波紋が生じるだけでも人間の本質的な部分が見え隠れして興味深い。
なお、本作の終盤あたりでは、トム・ウェイツによる楽曲「タイム」が歌われる。”時よ 時よ 愛する時がきたんだ”と歌われる、この歌詞は、自らの終わりを自認したようにも感じ取れた。最期を自分で決める。自殺ではなく、自らの意思を最も尊重し受け入れることは、どれほど前向きなことであるか、と教えられた。彼らが最期に穏やかな森を選んだ。最期の次があるか分かっていないが、それぞれの選択に意味があり、希望があることを願ってやまない。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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