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トレイ・エドワード・シュルツ監督の実の叔母と親族との軋轢や父親とのエピソードを描いた地獄のファミリードラマ『クリシャ』がいよいよ劇場公開!

2021年4月9日

『WAVES/ウェイブス』で注目を集める俊英トレイ・エドワード・シュルツ監督の実の叔母や、薬物・アルコール中毒者だった父親との実体験を基に、実の息子にさえ疎まれる女性と家族の複雑な関係が描かれる『クリシャ』が4月17日(土)より東京・渋谷のユーロスペースにて限定公開される。

 

映画『クリシャ』は、トレイ・エドワード・シュルツ監督の実の叔母と親族との軋轢や、薬物・アルコール依存症だった父親とのエピソードなど、監督自身の体験をもとに描いた家族ドラマ。親族から疎まれているクリシャが感謝祭に参加すべく、かつて捨てた家族のもとに戻ってくる。そこには一族が顔をそろえており、過去を悔いているクリシャは自分が変わったことを証明しようとするが、息子のトレイは快く思わない。精神的に不安定なクリシャはやがてアルコールに手を出してしまい、感謝祭は醜悪なものへと変わっていく。

 

本作は、『WAVES/ ウェイブス』『イット・カムズ・アット・ナイト』で注目を集める新鋭トレイ・エドワード・シュルツ監督が、2015年に手がけた長編デビュー作。SXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)映画祭の短編コンペティション部門で撮影賞を受賞した、2014年製作の短編映画の長編化。主人公のクリシャをはじめ監督の親族が出演し、シュルツ監督自身もクリシャの息子トレイ役で出演している。

 

映画『クリシャ』は、4月17日(土)より東京・渋谷のユーロスペースにて限定公開。関西では、5月21日(金)より京都・九条の京都みなみ会館で公開。

優れた映画監督の作家性は初期作から既に確立されている、と聞いたことがあった。トレイ・エドワード・シュルツ監督の長編デビュー作である本作も彼の作家性が強く反映されている。それは、彼の作家性とは逃れられない家族の呪縛をテクニカルな演出で観客に追体験させることだ。

 

親戚一同が集まる感謝祭のパーティーにこれまで疎遠になっていた叔母のクリシャが現れる。クリシャは息子との関係を修復したいと思っているのだが。息子との距離感は全く縮まらないし、親族も当たり障りの距離感で接するしか出来ない。さらに、クライマックスに向かって目も当てられない事態になっていく。耳障りな劇伴や親族達による他愛の無い会話、目が回るようなカメラワーク等、至る所に不穏さや嫌悪感が沢山散りばめられ、観客はクリシャの不安定な精神状態に強制的にシンクロさせられることになる。結局、クリシャの瘴気に当てられた親族達のように居た堪れなくなってしまう。本当に見ているだけで苦しくてしょうがなかった。83分という短い上映時間に安堵する程だ。

 

本作は、トレイ・エドワード・シュルツ監督が経験した薬物中毒だった叔母やアルコール中毒だった父親との軋轢がベースになっている。彼はずっと自身が経験してきた家族との軋轢や赦しを繰り返し描いている。『イット・カムズ・アット・ナイト』はアルコール中毒だった父親の死が、『WAVES/ウェイブス』は思春期に感じていた親からのプレッシャーがモチーフになっている。どんなに軋轢があっても家族という最も身近で小さな集団から逃れることは簡単ではない。家族は決していいことばかりではなく、むしろ面倒くさい呪いみたいなものだ。それでも向き合っていかなければならない…故に本作は地獄のファミリードラマなのだ。

fromマリオン

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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