様々な捉え方をしながら、一つでも心に残るものがあれば…『NO CALL NO LIFE』優希美青さんと井上祐貴さんと井樫彩監督を迎え舞台挨拶開催!
親からの愛情を受けずに育った女子高校生と、同じ境遇で育った不良少年の恋愛模様を描く『NO CALL NO LIFE』が関西の劇場でも3月19日(金)より公開中。3月20日(土)には、大阪・梅田のテアトル梅田に、優希美青さんと井上祐貴さんと井樫彩監督を迎え、舞台挨拶が開催された。
映画『NO CALL NO LIFE』は、壁井ユカコさんの小説を原作に、謎の留守電メッセージに導かれて出会った少年少女の刹那的な恋の行方を描いたミステリーラブストーリー。親からの愛情を知らずに育った女子高生の佐倉有海は、携帯電話に残された過去からの留守電メッセージに引き寄せられるように、学校一の問題児である春川と出会う。それぞれ心に欠落を抱える2人は互いの傷を埋めるように惹かれ合うが、それはあまりにも拙く欠陥だらけの恋だった。やがて謎の留守電の真相とともに、有海の衝撃的な過去が浮かび上がっていく。主演は『ちはやふる 結び』の優希美青さんと、テレビドラマ「ウルトラマンタイガ」の井上祐貴さん。監督・脚本は『真っ赤な星』の井樫彩さんが務めた。
上映後、優希さんと井上さんと井樫監督が登壇。3人とも大阪には馴染みがあり、優希さんは連続テレビ小説『マッサン』を大阪で撮影しており「その時は東京と大阪を行き来して、新大阪駅でたこ焼きを食べて帰るのがルーティンになっていました」と振り返る。井上さんは学生時代によく大阪に遊びに来ており「洋服を買いに来ていました。LOFTなどこの辺りで買っていました」と挙げると、井樫監督も「修学旅行で来たり、前作で舞台挨拶で来たりして、来る度に関わる方が温かくフレンドリーに楽しくて接して下さる」とお気に入りであること伝えた。
全国で本作が公開され、井樫監督は「歳が近い方達と一緒に作り上げた作品だったので、この作品が世に出て、良い反応を聞くと、撮れて良かったな、無事に公開出来て良かったな」と感慨深い。また、ホリプロ60周年記念作品である本作のオファーを受け、優希さんは「最初は嬉しかった」と話しながらも「後々で冷静になり、プレッシャーが凄かったですね。60周年の節目で、どれだけの方に届けられるだろうか」と告白。台本を読んだ時には「作品自体が重く、役柄も精神的にキツそうになる部分が多い。短期間で最後まで突っ走れるのか」と不安だった。とはいえ、クランクインしてみて「あっという間で、毎日が楽しかった。こんなに精神的に疲れる役なのに、カットがかかった瞬間には皆に『うるさい』と言われるぐらいキャッキャしてました。5歳児だと云われました」リラックスして演じられたようだ。井上さんもオファーを受けたことが嬉しくも「ホリプロ60周年という大きな責任があります」と感じており、台本や原作を読み「この役を自分が出来るのか」と不安に。「共感出来る部分や理解出来る部分が少なかったからこそ『しっかりと準備しなきゃ』と思えたし、多くの時間をとって頂いたので、自信を持って最後までやらせて頂きました」と思い返す。2人の姿を垣間見ながら、井樫監督は「俳優によって様々なタイプの方がいる。2人は正反対だった」と捉え「美青ちゃんは、撮影が終わったら凄泣いていたのに『おつかれさまでした〜』と帰っていく。井上君は沈んでいるシーンを撮った後は沈んでいる。どちらも良い」と分析する。
役作りにあたり、優希さんは「監督に『有海の性格と私の中にある闇の部分が似ている』と云われた。自分の闇の部分を出すので、今までの人生で辛い時期や大変な時期を思い出しながら、有海と照らし合わせてやっていきました」と明かす。井上さんは「あまり役作りとしてはなかった。いつもは台本を読んで自分の中でイメージが湧いたら、似たような過去の作品での役者さんのキャラクターからヒントを得ている」と話し「今回は似たようなキャラクターが全く思い浮かばず、台本を読みまくり監督やプロデューサーとディスカッションをしまくって作り上げました」と振り返った。井樫監督は「俳優の方々の魅力は顔だ」と挙げ「格好良さや可愛さではなく、映像で捉えた時にどう映るか」と説く。「2人は普段と全く異なる表情をカメラを前にして見せるので映像に映る。存在感が増す2人だったので、撮っていて楽しかった」と気に入っており「対照的な2人だった。井上君は頭脳派、美青ちゃんは感覚型。それぞれの特性が役にも合っていた。楽しく2人を撮っていました」と満足している。
原作小説から本作の脚本へ落とし込むにあたり、井樫監督は「原作にも花火と海という2つの重要なアイテムがあったので、より象徴的な映像の軸として描いていきました」と解説。撮影現場について、優希さんは「監督は多くを語らない」と説明し「病院での撮影は納得がいかず、何が足りていないか分からず、監督に呼ばれ、病院の誰もいない場所で二人きりで話しました。私と監督で重なった有海の気持ちに気づいて、OKを頂いた。困った時に助けを求める前に助けに来てくれる。寄り添って下さる監督だな」と印象深い。井上さんはクランクインまで不安が続き「これで合っているのか。こういう風に演じていいのか」と準備し続ける日々だったが「最初の撮影は2人の関係性を表す大切なシーン。最初の演技は思っていたのと違った」とさらに困惑。しかし「監督が指示して演じた時の腑に落ちた」とスッキリして不安も消えていき「クランクインを皮切りに自分の中で春川という人間を理解していきました」と安心して撮影に挑められた。
最後に、優希さんは「皆さんにこの映画がどういった風に伝わったのか気になっています。様々な捉え方があります。一人ひとりが捉えたことは間違ってなく、皆さん一人ずつ聞きたいぐらいこの作品が大好きです。この作品に全身全霊全力でかけたので、もっと沢山の方に届いたらいいな」とメッセージを送る。井上さんは「この状況下で公開して頂けることがどれだけ嬉しく有り難いことか」と改めて感じており「この映画を観てどう感じて下さるんだろう、と気になっています。僕自身も毎回観る度に様々な発見や感じ方をしています。作品全体を通して、沢山の方に映画を作った側の思いが届いたらいいなぁ」と伝えていく。井樫監督は「この作品は複雑なところがあり、好き嫌いや共感が観た方それぞれにあります。一つでも心に残るものがあればいいな」と願いながら、舞台挨拶は締め括られた。
映画『NO CALL NO LIFE』は、大阪・梅田のテアトル梅田、心斎橋のシアタス心斎橋、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・元町の元町映画館で公開中。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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