男はなぜ大統領を暗殺したのか?『KCIA 南山の部長たち』がいよいよ劇場公開!
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当時独裁者といわれるほどの強権を振るった韓国のパク・チョンヒ大統領が、右腕といえる直属機関・中央情報部のトップ、キム・ジェギュに射殺された歴史的大事件を描いた政治ミステリー『KCIA 南山の部長たち』が1月22日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『KCIA 南山の部長たち』は、1979年に韓国の朴正煕大統領が中央情報部部長キム・ジェギュに暗殺された実話を基に映画化した実録サスペンス。1979年10月26日、大統領直属の諜報機関である中央情報部(通称KCIA)部長キム・ギュピョンが大統領を射殺した。事件発生の40日前、KCIA元部長パク・ヨンガクは亡命先であるアメリカの下院議会聴聞会で、韓国大統領の腐敗を告発した。激怒した大統領に事態の収拾を命じられたキム部長はアメリカへ渡り、かつての友人でもあるヨンガクに接触を図るが…
本作では、金忠植(キム・チュンシク)によるノンフィクション「実録KCIA『南山と呼ばれた男たち』」を原作に、愛国心と野心との間で揺れ動くキム部長をイ・ビョンホンが熱演。共演に『工作 黒金星と呼ばれた男』のイ・ソンミン、『哭声 コクソン』のクァク・ドウォン、『1987、ある闘いの真実』のイ・ヒジュン、『未成年』のキム・ソジンが共演に名を連ねる。『インサイダーズ/内部者たち』でイ・ビョンホンとタッグを組み、当時R指定作品として歴代最高の観客動員記録を打ち立てたウ・ミンホが監督を務めた。
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映画『KCIA 南山の部長たち』は、1月22日(金)より、大阪・心斎橋のシネマート心斎橋、梅田の梅田ブルク7とシネ・リーブル梅田、京都のT・ジョイ京都、神戸・三宮の神戸国際松竹をはじめ、全国の劇場で公開。
本作は、韓国の情報部の現役トップの金載圭(キム・ジェギュ)による、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の暗殺。実際の事件を元にフィクションを交えたこの映画は、独裁的な政権に長期間居座った大統領を引きずり降ろし民主化を成し遂げた解放の話…ではない。大統領暗殺事件は1979年の出来事。この後、全斗煥(チョン・ドゥファン)率いるクーデターによる軍事政権樹立、金大中(キム・デジュン)の逮捕や戒厳令の布告、そして光州事件から始まる抵抗運動へと激動の時代の幕が開け、民主化への歴史がようやく始まっていく。今作では、そのプレリュード的な位置の出来事が描かれる。
重く暗い題材でありつつも、なおかつエンターテイメント作品として成立させるところが流石の韓国映画だ。暴君的な大統領、暗躍する情報部、武闘派の警護団たちの緊迫した力関係と邪魔者は殺せの恐怖政治。かつては同じ理想をもって戦いを生き抜いた仲間としての束の間のノスタルジックな懐古。韓国だけでなく欧米をまたいだ諜報活動と裏切り者を追う粛清は、スパイものを思わせるミステリアスな展開。「大統領が暗殺された」という事実を前提に、その経緯をさかのぼっていく物語は次第に真相がクリアになってゆき、なぜそんな事になったのか?という動機を説得力たっぷりに演じ切るイ・ビョンホンが素晴らしい。
ところで、韓国では定番な食の組み合わせに語呂の良い呼び名がつくことが多い。チキンとメクチュ(ビール)で「チメク」等だ。劇中では「マッサ」という飲み物が出てくる(発音としては「マクサ」とも言う)。このマッサはマッコリをサイダーで割るから、マッサ。居酒屋でも安く飲める庶民おなじみの酒で、日本でいうハイボールのようなものだ。このマッサが、劇中では朴大統領と金部長の長年の昵懇の仲を思わせる小道具としてさりげなく印象を残す。映画を観終わったあと、家で余韻の後味に浸るには丁度良いので、この機会にお試しいただきたい。
fromNZ2.0@エヌゼット
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- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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