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ジェットコースターのように、お客さんが想像しない方向に転換していく…『いつくしみふかき』渡辺いっけいさんと大山晃一郎監督に聞く!

2020年7月23日

問題ばかり起こす父と父を知らずに育った息子が、ひょんなことから再会するも互いに実の親子だと知らぬまま共同生活を始める様を描く『いつくしみふかき』が7月17日(金)より関西の劇場でも公開中。今回、渡辺いっけいさんと大山晃一郎監督にインタビューを行った。

 

映画『いつくしみふかき』は、ベテラン俳優の渡辺いっけいさんが映画初主演を務め、引きこもりの青年と父親の関係を描いた人間ドラマ。「劇団チキンハート」主宰の俳優・遠山雄が、自身の知人をモデルに、実話をもとに生み出した物語で、遠山自身がモデルとなった知人にあたる引きこもりの青年・進一役で出演。渡辺はその父親である広志を演じる。30年前、進一の父・広志は妻の加代子が出産中に、加代子の実家に盗みに入り、進一の叔父にあたる牧師の源一郎にとがめられ、悪魔として村を追い出された。そして30年が過ぎた現在、母に甘やかされて育った進一は、どんな仕事も長続きせず、ひとりでは何もできない男になっていた。そんなある日、村で連続空き巣事件が起こり、村の人々から悪魔の子である進一が犯人だと決めつけられてしまうが…

 

遠山雄さんが参列した知人の父親の告別式での出来事がベースになっている本作。大山監督は、映画では業に関する部分に重点を置いており「広志がやった悪行は現実の方がもっと酷い。わりと忠実であり若干減らしている」と明かす。さらに「””が流れて、喪主である息子さんが弔辞を読みながら感極まって泣いたシーンはリアルに残し、映画にしたいと思ったんだよね」と渡辺さんが添えていく。大山監督は取材し描かなかったエピソードが沢山あり「ヤクザのお父さんと引きこもりの息子の2人は接点がなかった。大人になって再会し、不動産屋を起こすと盛り上がった矢先に病気で亡くなった。登場人物のモデルとなった方は一通り実在し、その方々に可能な限り取材していった」と振り返る。多くのエピソードを聞き、渡辺さんは「本当にこんなことがあるのか」と驚きながら「この映画は何処に向かっているんだろうと思えた瞬間があった。不安感もありつつ、最終的な落としどころに不思議な状態でもっていかれる。様々な感想を持ってしまう」と感慨深い。

 

「憎んでいる男に対して”お父さん”と呼ぶまでの物語」だと表現する大山監督。ストーリーを作るにあたり「お客さんが想像しない方向に転換していくことを意識した。だからこそ、心情が繋がっていないところを調整していくことが大変。ジェットコースターを作っていく感覚で展開させました」と解説。仕掛けがある作品を好み「初めて観た時には気づかないことをリピーター向けに仕込んでおくことが好き」と話しながら、映画が拡がっていくきっかけを意識して作っていった。

 

渡辺いっけいさんと遠山雄さんのW主演となっている本作。大山監督は、遠山さん演じる進一の視点に重点を置いて描いている。渡辺さん演じる広志は、謎を帯びている人にする狙いがあり「広志の目線はメインになり得なかった。進一は主人公らしい露出をしている。2人それぞれの成長物語を描きたかったのでW主演にしている」と説く。渡辺さん自身は主役だと思って演じておらず「出来上がった台本を読んでも、進一の物語だと思った」と告白。1シーン毎に監督に疑問点を挙げて話し合いながら演じており「分かったふりをして理論武装も出来るが、一緒に考えることが正しかった。その瞬間に正解だと思ったことをOKにしている」と述べ「TVドラマでは自分で計算して演じているが、本作では計算していない。初めて作品を観た時には思いもしない出来上がりだった」と新鮮に演じられた。

 

本作が初長編作品となった大山監督の作品に対し、オファーを受けた渡辺さんは「インディーズ映画の人達と一緒にやってみたかった。自分にとってもチャレンジングな現場になるだろう」と思いながら出演を快諾し、一人の役者として真摯に演じている。大山監督は、ベテラン俳優と仕事する意識でいたが「変な意識が全くなかった」と思い返す。とはいえ、最初は「金田さんといっけいさんにいじめられると思っていた」と打ち明けていく。渡辺さんにとってはチャレンジするタイミングだと認識しており「これまでTVの世界で十分に楽しく遊ばせてもらっていた。ちょうど閉塞感を感じていた時期にオファーして頂いた。当時は所属していた事務所を辞めて、次に向かう時期だった。事務所に所属していた時期は自分の意思だけでは決められなかった。その時、自分で決めて良いタイミングだった。決定権が自分にあった」と顧みる。大山監督はオファーした当時を思い出し「いっけいさんに10日間もスケジュールを確保してもらえるなんて思っていなかった。タイミングが合い、映画にすることが現実味を帯びてきた」と改めて喜びを噛み締めた。

 

構想から6年、撮影を3年前に行えたが、様々な困難に直面した本作。クランクイン前の時点で地元の了承がなかなか一つにまとまらず、信頼を得るまでに時間を要し、渡辺さんにも協力して頂いている。ようやく人に観てもらえることに喜びを感じている大山監督は「長い時間をかけて様々な方を巻き込んでいるので、ボリュームのあるエンドロールになっています」と述べ、現在の状況にも負けられない。これまでの経験を踏まえ「iPhone等、身近な機器で映画を撮れるようになったけど、僕は現場で助監督を16年もやってきた叩き上げ」と認識しており「スタッフやキャストと長い付き合いになり、あったかく接して頂いている。修行時間があったから制作できた。また自分のオリジナル作品を撮って映画祭をまわりたい」と未来に目を輝かせていた。

 

映画『いつくしみふかき』は、関西では、大阪・泉南のイオンシネマりんくう泉南で公開中。また、7月24日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田、8月8日(土)より神戸・新開地の神戸アートビレッジセンター、8月21日(金)より京都・九条の京都みなみ会館で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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