中村倫也さんが事故の後遺症で多重人格となった主人公を演じる風変わりなファンタジー!『水曜日が消えた』がいよいよ全国の劇場で公開!
(C)2020『水曜日が消えた』製作委員会
ひとりの男の身体に宿った7人の人格のうちのひとりが行方不明になったことで、日常のバランスが崩れていく様を描き出す『水曜日が消えた』が、新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う全国的な緊急事態宣言の解除を受け、6月19日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『水曜日が消えた』は、曜日ごとに入れ替わる7つの人格を持った男を演じた主演作。幼い頃の交通事故により、曜日ごとに性格も個性も異なる7人が入れ替わる「僕」。彼らは各曜日の名前で呼び合っているが、中でも「火曜日」は一番地味で退屈な存在で、他の曜日から家の掃除など面倒なことを押し付けられる損な役回りだった。しかし、ある時、1日を終えてベッドに入った「火曜日」が、水曜日に目を覚ます。僕の中の「水曜日」が消え、「火曜日」は水曜日を謳歌するが、その日常は徐々に恐怖へと変わっていく。
本作では、中村倫也さんが7つの人格を持つ主人公を演じ、石橋菜津美さん、深川麻衣さん、きたろうさん、中島歩さん、「ゲスの極み乙女。」の休日課長などが顔をそろえる。MVやCM、短編作などで注目される吉野耕平さんの初の長編監督作となった。
(C)2020『水曜日が消えた』製作委員会
なお、今回、本作の主題歌である須田景凪さんの「Alba」についてMVを公開。MVの監督も吉野さんが務めた。MVを観た中村さんは「どうやって作っているんだろうと最初に思いました。監督が一枚一枚書いているのかな︖って。元々、映画と歌の雰囲気と歌詞の世界観が絶妙に混じり合っていて、まさしく主題歌という印象でしたが、それを視覚的に監督が作ってくれて、映画の中に出てくる様な風景だったり、アイテムが加わったことでより結びつきが強くなった感じがしました」と感想を述べている。須田さんは「『水曜日が消えた』の公開、大変嬉しく思います。大好きな映画です。MV にも映画の要素を、吉野監督が繊細に散りばめてくれました。是非楽しんで頂けたら嬉しいです」とコメント。吉野監督は「映画に登場したものと同じ、7種類の靴や7種類のペンが出てきますが、あくまでAlbaのミュージックビデオとして楽しんでいただけるように作らせていただいたつもりです。ただ両者は全く別の話、というわけではなく、いわば一つの物語の『外側』と『内側』みたいな関係かもしれません。是非、映画を観る前、観た後と、それぞれ両方楽しんでいただければと思います」とMV に込めた想いを語っている。
映画『水曜日が消えた』は、は、6月19日(金)より大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田をはじめ、全国の劇場で公開。
※今後改めて政府・行政から劇場へ休業要請が出たり、不測の事態で再度延期や公開中止になる可能性もあります。
どうしたことか、今年一番の邦画を拝見してしまったかもしれない。「目が覚めてからずっと、他の誰かと暮らしてる。ノートの文字だけが、互いを知る手がかり。図書館はずっと休館日。そこに入る方法は無い。」冒頭の主人公である火曜日の「僕」のセリフで作品に一気に引き込まれた。
本作品は幼少期の事故により7人の人格を持つようになった「僕」個人を2時間弱の映画に落とし込んでいる。月曜日の「僕」がどうやって人を連れ込んでいるのか、日曜日の「僕」がノートに魚の絵ばかり描いているのか火曜日の「僕」には永遠にわからないはずだった。でもある日、水曜日が消えた。そこから彼の日常が少しずつ変化を遂げていく。
わずか最初の10分足らずで観る人の心を鷲掴みにすることに成功するはず。なぜなら、映画の核となるコンセプトが最近の映画の中ではずば抜けて面白いからだ。脚本の巧妙さとカット構成の丁寧さが首尾一貫して惜しみなく発揮されている。ストーリーラインから、7人の「僕」の性格、とりわけ火曜日の魅力が溢れ出ているではないか。同級生である一ノ瀬は一体「僕」に取って何なのか。先生の助手として来た新木の探るような視線。「僕」を取り巻く日常の奥行きの深さには、登場キャラクターが少ないことも貢献している。実は初めて、「僕」を演じる中村倫也という役者の演技を拝見したが、鑑賞後 余韻に浸ってしまうくらい素晴らしかった。役者歴15年となれば頷ける。
2017年の作品『セブン・シスターズ』を彷彿させるテイストを感じたが、世界の巻き込み方が異なる。本作は個人の話から離れる作品ではなく、リアルティがあり一段と好ましいと感じた。 どちらの作品も観る価値は大いにあるので、観比べて楽しむのも一考だ。「良い作品を拝見した!」と声を大にして人にお勧めしたい。
from君山
近年話題作に引っ張りだこな中村倫也さん。今回演じたのは、多重人格者。これまで数々の役柄をこなしてきた彼だからこそ演じることのできた”7人の僕”。多重人格者が登場する作品としては珍しく、各人格に曜日以外の明確な名前は存在せず、あくまでも”僕”というキャラクターの枠組みにおいて様々な性格の”僕”を中村倫也さんが演じてみせた。
普段であれば、我々が考えることすらない実生活における各曜日毎の特色を細かく描いており、1つの曜日しか知らない人間に起こりそうな「あるある」を、観ている側にも分かりやすい絶妙なバランスで見せてくれる。細部のディテールのみならず、映像や音楽まで十二分に芸術センスが光っており、日本映画では滅多に観ることのない映像体験ができた。BGMもウィンナ・ワルツを使用しており、平穏な日常からスリルな展開への切り替え方もお見事。近年の日本映画では、他とは一線を画す芸術性を持ち合わせた作品だった。
fromねむひら
特異な境遇で生きる青年とその周囲を描くヒューマンドラマ。7つの人格を持つ主人公のフィクションらしい異質な生活をリアリティある日常として軽やかに描いているのが興味深い。もし自分が火曜日だったら、と考えてしまう。週に一度しか目覚めることが出来ないなら、7分の1の自分は真に自分と言えるのか。境遇から逃れる術はない。逃れられないなら自分が正しいと思うままに向き合うのが重要だ。
鮮やかな色彩と美しい画面構成が非常に印象的で、火曜日の僕の穏やかな雰囲気と相まって心地よいテンポで物語を進めていく。多重人格の主人公は特異な自身の境遇と如何にして向き合い最後に何を選ぶのか。是非とも劇場で確かめて頂きたい。
fromため
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
- 最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!