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劇場を出た後、世界に良い影響を与えてくれる…『37セカンズ』、佳山明さん、大東駿介さん、HIKARI監督を迎え舞台挨拶先行特別上映会開催!

2020年2月2日

ハンディキャップを持つ女性が、自らの力で新しい世界を切り拓いていく姿を描く『37セカンズ』が2月7日(金)より全国の劇場で公開。2月2日(日)には、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマに、佳山明さん、大東駿介さん、HIKARI監督を迎え、舞台挨拶先行特別上映会が開催された。

 

映画『37セカンズ』は、出生時に37秒間呼吸ができなかったために、手足が自由に動かない身体になってしまった女性の自己発見と成長を描いた人間ドラマ。脳性麻痺の貴田夢馬(ユマ)は、異常なほどに過保護な母親のもとで車椅子生活を送りながら、漫画家のゴーストライターとして空想の世界を描き続けていた。自立するためアダルト漫画の執筆を望むユマだったが、リアルな性体験がないと良い漫画は描けないと言われてしまう。ユマの新しい友人で障がい者専門の娼婦である舞は、ユマに外の世界を見せる。しかし、それを知ったユマの母親が激怒してしまい…
主人公のユマと同じく出生時に数秒間呼吸が止まったことによる脳性麻痺を抱えながらも社会福祉士として活動していた佳山明さんが、オーディションで見いだされ主演に抜擢。母親役を神野三鈴さん、主人公の挑戦を支えるヘルパー・俊哉役を大東駿介さん、友人・舞役を渡辺真起子さんがそれぞれ演じる。ロサンゼルスを拠点に活動するHIKARI監督の長編デビュー作となった。

 

上映後、佳山明さん、大東駿介さん、HIKARI監督が登壇。あたたかい雰囲気に包まれた舞台挨拶となった。

 

撮影は、2018年7月にクランクインし、翌8月末まで順撮りで敢行。HIKARI監督は、当時の暑さを思い出し「夏に体力を維持できるかなと心配しながら、初長編映画がどうなるか手探り状態でやっていた」と振り返る。とはいえ「素敵な俳優と撮影出来ることが楽しくて仕方がなかった」と素敵な思い出となった。佳山さんからも「天気は物凄く暑く、皆さんも熱くて温かかった」と聞き、HIKARI監督は「45日かけて撮りました。最初から明ちゃんは頑張ってくれて、皆さんの愛に包まれていました」と懐かしむ。大東さんにとっても撮影の日々は感慨深く「明ちゃんを抱き抱えて衣装がビショビショになっていくんですが、そんな記録が残っていけばいいな。僕達は本当の状態を残せるか、現場で意識していました。そこを見られていたし、求められていた」と述べ、興味深い現場になった。

 

求めている映像がHIKARI監督にはあり、撮りたい画が明確になっている。分かりやすく真っ直ぐな方だと大東さんは理解し、撮影現場は迷いのない健康的に成立しているとだと感じた。また「シーンをどのように切り取りたいか見えているから、プロフェッショナルなカメラマンが構成したアングルを監督は平気で変える」と明かすと、HIKARI監督は「今作の主人公は車椅子に乗った女子。知り合いにいない方達にとっては、障碍者に対して壁がある。彼女の目線で映像を進めながら、最初は第三者の視点でカメラの位置がある」と説き「次第に気が付くと彼女に寄り添っている。彼女の傍にいて彼女の気持ちや経験を分かるようにカメラには拘りたかった。編集した時にアングルを変更して良かった」と満足している。

 

15年間も映画に出演し続けてきた大東さんだが、HIKARI監督からOKが出ない時もあった。「気持ちを作っていることは理解してもらっても『俊哉の人生を背負った体になっていない』と指摘された」と打ち明け「強烈なダメージを受けた。2日はなかなか寝られなくなるほど直球を喰らった」と告白。これを受け、HIKARI監督は「彼は柔軟性がある。ラッシュの状態では3時間45分もあり、編集しながら短くしていきましたが、俊哉が抱えているものがカットされている。そのなかで、大東君は1つ1つのシーンを丁寧に演じていたが、最終的には今回はユマちゃんのストーリーにフォーカスして編集しました」と本編の成り立ちを説明しながら、フォローしていく。

 

初めての演技経験となった佳山さんにとっては、分からないことだらけからのスタートだったが「HIKARI監督を筆頭にして、皆さんに大いに支えて頂いて映画があります」と実感している。HIKARI監督は「明ちゃんの素敵なところは、最初のオーディションで、ピュアなところが魅力的。彼女は演技経験がなかったことに新鮮さを感じた。計算がない演技が楽しかった」と感じ「そのままの彼女を映像に活かしたい。明ちゃんをユマちゃんの深みに持っていきたい」と本作に挑んでいった。また、大東さんとは、本作のオーディションより1年前に出会っており「当時、日本人の役者をほとんど知らず、園子温さんによる会に招待されて伺った時、様々な方と話していく中で彼と出会った。人生の話をしながら、彼自身の魅力を感じたことを覚えていた」と明かす。オーディションでは、役者が持っている力に惹かれるたら引き出すようにしており「駿介君のことが印象に残っており、連絡し来てもらった。彼がもっているものが輝いていたので、即決めでした。神野さんや渡辺真起子さんの場合も様々な方にお会いしながら直感でイメージ出来た」と自らの感覚に正直に選んでいった。

 

佳山さんと共演した大東さんは「撮影現場は慣れているので技術的に力になりたい」と心がけていたが「結果的に救われた」と印象に残っている。初日に一緒に演じた時に気が引き締まり「映画は人の心の奥が映っちゃうんですよね。台本に書かれた通りに演じようとすると違和感がある」と自覚していった。撮影前には介助士や重度障碍者の方と話す機会を設けたが、実際に佳山さんと話し「本物の魂が飛んでくる」と感じていく。撮影後、別の現場でも「本物に敵うものはなく、本物を作る過程は手を抜いてはいけない」と常に意識して演じるようになった。これを受け、佳山さんは「身に余る思いです。私は沢山教えて頂いて、支えて頂いた。俊哉さんは素敵です」と感謝の気持ちを伝える。

 

最後に、佳山さんは「HIKARI監督を筆頭に役者の皆さんやスタッフさんお一人お一人に支えて頂いて、この作品があります。様々な思いを抱いてきましたが、温かく愛して頂けたら嬉しいな」と感謝の気持ちと共に伝えていく。大東さんは「この作品は、劇場を出た後の世界に少しでも良い影響を与えてくれるじゃないかな」と提案しながら「参加できて良かったし、やりがいを感じています。様々な方にこの作品を巡り合わせて頂ければ。より良い希望に満ちたポジティブな明日に向かっていけれるようになればいいな」と願っている。HIKARI監督は、様々な脚本を書き始めてから4年が経ち「アイデアを様々なところから拾って試行錯誤して作っています。この作品は外に出さないといけない、と自分の腹を括りました」と決心しており「障碍者ではなく、一人の人間の成長記を作りたかった。明ちゃんに出会い、駿介に出会って沢山のスタッフによる愛情によって作品が生まれました。私達は命を懸けて作ったので、皆さんの愛を頂けたら」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『37セカンズ』は、2月7日(金)より全国の劇場で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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