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誰もが傷つき苦しみながら、気持ちが合わさって映画が出来上がっていく…『風の電話』モトーラ世理奈さん、西島秀俊さん、諏訪敦彦監督を迎え舞台挨拶開催!

2020年1月25日

岩手県大槌町に設置され“天国に繋がる電話“として知られるようになった“風の電話“を題材に描く人間ドラマ『風の電話』が公開中。1月25日(土)には、大阪・難波のなんばパークスシネマにモトーラ世理奈さん、西島秀俊さん、諏訪敦彦監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『風の電話』は、震災で家族を失った少女の再生の旅を描いた人間ドラマ。今は亡き大切な人と思いを繋ぐ電話として、岩手県大槌町に実在する「風の電話」をモチーフに映画化した。8年前の東日本大震災で家族を失い、広島の叔母のもとで暮らす17歳の少女ハル。ある日、叔母が突然倒れ、自分の周りの人が誰もいなくなってしまう不安にかられた彼女は、震災以来一度も帰っていなかった故郷・大槌町へ向かう。豪雨被害にあった広島で年老いた母と暮らす公平や、かつての福島の景色に思いを馳せる今田ら様々な人たちとの交流を通し、ハルは次第に光を取り戻していく。道中で出会った福島の元原発作業員・森尾とともに旅を続けるハルは、「もう一度、話したい」という強い思いに導かれ、故郷にある「風の電話」にたどり着く。『ライオンは今夜死ぬ』の諏訪敦彦さんが監督を務め、主人公ハルを『少女邂逅』のモトーラ世理奈さん、森尾を西島秀俊さんが演じる。

 

上映後、モトーラ世理奈さん、西島秀俊さん、諏訪敦彦監督が登壇。本作のような優しく温かい空気に包まれた舞台挨拶となった。

 

諏訪監督にとっては18年振りに日本で撮影した今作。本作の泉英次プロデューサーが風の電話を知り「ぜひ映画にしたい」とプロジェクトが始まった。オファーを受けた監督自身も初めて風の電話を知る。風の電話を始めた佐々木格さんを訪ね、お話を聞いた上で映画制作の許可を頂いた。

 

主演のモトーラ世里奈さんは、オーディションを通じて決定。諏訪さんは「この人を撮りたいな」と直感。撮影中も映画の全体像が浮かんでくると同時に、真摯な視線を感じていた。西島さんは、諏訪監督作品への出演は2度目。最初は25歳の頃に出演した『2/デュオ』。「取り組んだことがない撮り方でした。皆で車座になって次に何をやるか話し合い、諏訪監督が持ち帰った上で翌朝から撮る現場でしたね」と振り返っていく。今回については「狗飼恭子さんが書かれた脚本が最初にあったロードムービー。ある傷ついた少女が広島から大槌まで行くことは決まっており、諏訪監督が毎朝に詳細を渡していく」と解説。これを受け、諏訪監督は「毎朝、スタッフとキャストに、その日撮る台本を配る。台詞は細かく書いていない」と説く。諏訪監督独特の手法であるが、モトーラさんは「この撮り方が凄く好きですね。場面を凄く感じられる。シーンの中で誰といるのか、何処にいるのか、どんな風が流れているのか、沢山感じながら演じられ良かった」と満足している。さらに、諏訪監督は「場所で感じることが大事なこと。ラストシーンもリハーサルを行わない」と明かす。今作は順撮りで撮影していったが、モトーラさんは、ラストシーンについて「広島から旅していく中で、ラストシーンは最後の試練だと感じて緊張していました。不安だったので、ホテルで一人で想像して練習していましたが、違和感がありました。現場で感じるものがあるから、練習することは違う」と考え、撮影時におけるハルの感情に身を委ねていった。

 

また、西田敏行さんの演技が印象に残る本作。西島さんは「日福島のことを毎考えていらっしゃる。脚本がないからこそ、思いが溢れて言葉が発されたシーン」だと感じていた。現場では打ち合わせが行われていたが、諏訪監督は「次第に西田さんの演技が始まっている。そのままカメラを回し始めていた」と振り返っていく。西島さんも「森尾にとって大きな意味がある」と感じ「西田さんとの会話によって、森尾は後の行動が変わっている。台本になかった設定を取り入れた。西田さんが即興で言葉を発して下さったので、作中の流れになった」と感謝している。諏訪監督も興味深く感じており「自分が想像した通りのことが映画になったら、つまらない。発見があるとおもしろい」と関心。「森尾も西田さんとの食事を通過して、その後の気持ちが生まれてくる。ハルは様々な人との出会いを経験していくので、多くの出来事が印象に残り、変化していく」と感じており、ラストシーンを迎えられた意味を大事にしていた。

 

なお、本作は独特の空気感があるロードムービーである。諏訪監督は「観た人によって様々な発見や感じ方をする作品があっても良い」と断言。震災をテーマにした作品だが「皆が様々な意味で傷ついたり苦しんだりしながら生きている。それらの気持ちが合わさってこの映画が出来上がっていく」と述べた。モトーラさんと西島さんは演技に関する打ち合わせはしておらず「撮影前にご飯を食べていて、結構話しました。でも、あまり打ち合わせは必要なさそうだな。僕よりも凄く諏訪組を分かっている人だ」と察していた。さらに「撮影中は、西島さんと呼ばれたことがないですね。『森尾~』と呼ばれていました」と振り返る。モトーラさんは「最近になって西島さんにお会いした感覚です」と漏らした。

 

最後に、登壇者を代表して、モトーラさんから「この映画は、優しく温かい空気に包まれています。それを少しでも感じて頂けたら。いつかハルちゃんを思い出して頂けたら嬉しいです」と伝え、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『風の電話』は、全国の劇場で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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