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真理子のような人は沢山いる…『岬の兄妹』片山慎三監督に聞く!

2019年3月28日

仕事を解雇された兄と、知的障がい者の妹がさまざまな試練に見舞われながらも、必死に生き抜いていく姿を描く『岬の兄妹』が全国の劇場で公開中。今回、片山慎三監督にインタビューを行った。

 

映画『岬の兄妹』は、ポン・ジュノ監督作品や山下敦弘監督作品などで助監督を務めた片山慎三さんの初長編監督作。ある港町で自閉症の妹・真理子とふたり暮らしをしている良夫。仕事を解雇されて生活に困った良夫は真理子に売春をさせて生計を立てようとする。良夫は金銭のために男に妹の身体を斡旋する行為に罪の意識を感じながらも、これまで知ることがなかった妹の本当の喜びや悲しみに触れることで、複雑な心境にいたる。そんな中、妹の心と体には少しずつ変化が起き始め…

 

数々の助監督経験を経て、片山監督は、長編映画の予算や時間の規模が分かり、無駄なく予測して制作出来るノウハウを培ってきた。だが、プロの現場は制約があり、今作では制約のない現場での映画作りに挑戦している。とはいえ、普通の題材を選ぶと注目されないと感じており「目立つようなことをやらないと意味がない。敢えて尖った内容をどういう風に見せていくのか」と熟考していった。

(C)SHINZO KATAYAMA

 

作品の内容に合わせて、個性的な俳優もキャスティングしている。中村祐太郎さんは、主演の松浦祐也さんの知り合いとして紹介してもらった。「目で見て分かる方がいいな」と思ったが「2時間話して仲良くなり出演して頂くことになりました」と明かす。また、芹澤興人さんは、ホームレスっぽく見える人を探しているなかでオファーする。不気味なホームレスを演じてもらったが「2人の末路であり、一歩間違えると行きついてしまうが、レベルが違う人。兄妹には悲壮感があるが、行き切れていない。2人の成れの果てを見せたかった」と解説した。

(C)SHINZO KATAYAMA

 

作中には、真理子が泣きわめく印象的なシーンがある。駄々をこねる、と台本には書いてあったが「あそこまで予定していなかった。撮影しながら、アクションが足りないと思い始め、追い込んでいった」と告白。現場では、片山監督自身もらい泣きしそうになっていた。他にも、ファンタジー要素が込められたシーンがある。次のシーンでは現実に直面するので、良夫を喜ばせる意図があった。「一度喜ぶと、現実を重く受け止める。子どもの頃にやりたかったことを夢の中でさせて、起きて現実に直面する」と、落差を強調する展開にさせている。

(C)SHINZO KATAYAMA

 

デジタルで本作は撮られているが「フィルムらしい質感に見えるようにしたい」と望んだ片山監督は「意識的にノスタルジックな要素を意識的に入れました」と明かす。さらに「今はまずやらないことを敢えて普通にやると逆に格好良くなる」と強調する。また「日活ロマンポルノの雰囲気がある内容であり、意識しています」と話した。

(C)SHINZO KATAYAMA

 

兄妹が経験した貧困について「原因を作っているのは彼ら」と率直に語る。福祉に頼らずお金をどのようにして稼いで生きていくかを考えるなかで「累犯障害者」というノンフィクションを読み「真理子のような人は沢山いる。売春をして捕まって刑務所に入ることを繰り返しており、罪悪感がない。自分の承認欲求を売春によって満たしている」という事実があることを知った。そのエピソードには引っ掛かる要素があり、本作で描き、劇場公開されたことに現在は満足している。

 

映画『岬の兄妹』は、全国の劇場で公開中。

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映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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